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25年後のSex And The City

※ネタばれです。ご注意ください。

「25年後のセックス・アンド・ザ・シティ(キャンディス・ブシュネル著)」を読んだ。アメリカの人気ドラマ Sex And The City の主人公たちの25年後を描いたエッセイ。ドラマでは、仕事に恋にパワフルに取り組む「いけてる」30代女性の主人公たちにとても元気と刺激をもらっていたので、自分が中年の複雑な年齢に差し掛かる今、再度元気をもらおうと読み始めた。

のだけれど… 豊胸手術に瘦身手術にボトックスにフィラーに何千ドルのクリーム?私には一生縁のないお話で、アメリカのリッチな女性はこんなことに一生懸命になっているのね、若返りと見た目のメンテナンスに必死なのね、とだんだん気持ちが冷めていった。

midlife crisis(中年の危機)よりも強い midlife madness(中年の狂気)なるものがあるとこの本で初めて知ったのだが、美容整形に走る登場人物にはまさに狂気を感じた。

アメリカの女性も日本人と一緒で、衰えていく自分が受け入れられず、「若さや見た目の美しさを追求すれば幸せがやってくる」と思っちゃうんだなぁ。「歳を重ねることが美しさを増すこと」ととらえているフランス人女性のお話を最近読んだところだったので、その空しさをひときわ強く感じた。そういう不毛な辛い生き方よりも、年齢と生き様が味わいとなって表れる暮らしをしたいなとしみじみ思った。

それから、登場人物の一人が双極性障害と診断され、数ページ後にはあっさり自殺して死んでしまうというのも悲しかった。躁うつ病患者の平均寿命の低さを見せつけられた気分だった。そして、苦しんでいる彼女のことを気に掛けず、「この前は調子良さそうだったのに」で済ませてしまう他の登場人物にも、世間はの認識はそんなものなのだとがっかりした。

中年の危機を元気に乗り越えるために勇気をもらった、というよりは、「こうはなりたくない」と思わされるエッセイだった。

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