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【急成長】 S&Cコーチが教えるバスケットボールチームのためのトレーニング

割引あり



はじめに

私は現在、U-18カテゴリーの女子バスケと専門学校の女子バスケのコーチをしています。両校とも大学卒業後の京都に来て2年目から関わっているチームなので、早いもので今年で3シーズン目になりました。まさか、今日に来て女子チームを2校もみているとは思いもしませんでしたが、いいチームと選手たちに出会えて楽しんで現場に立っています。
指導校のこの3年間の試合成績や結果を振り返ってみると、高校のチームはこれまでの市部予選初戦敗退から今年春のインターハイ予選ではチーム史上初となる京都府予選大会への出場を果たしました。専門学校のチームは、今年夏の全国専門学校バスケットボール選手権大会にて2連覇(コロナ禍の交流大会を含めると3連覇)を果たしました。もちろんこの結果については「私の力だ!」などとは一切思っておらず、ヘッドコーチや選手たち自身の弛まぬ努力の成果です。しかし、S&Cコーチとして普段のフィジカルトレーニングやムーブメントトレーニングなどを通じて、怪我をしない体づくりや効率的な動きの実現に少なからず貢献することはできているはずだと信じています。
もし今のチームよりも強くなりたい、勝ちたいと思うチームがあれば、私を呼んでいただくのが1番だと思いますが(すみません調子に乗りました)トレーナーやS&Cコーチ、スキルコーチを呼びたくても金銭面や場所の問題で呼べないチームも少なからずあるはずです。そこで本テキストでは、筆者が指導校で実施しているトレーニング内容を画像や動画をフルに活用してできるだけわかりやすく解説しています。門外不出のマル秘トレーニングといったようなものはないため、必要としてくださるチームへこのnoteを通じて公開します。
バスケットボールという競技にどんなトレーニングが必要かを考え、推敲し、日々現場で実践しているものです。1年継続すれば、今のチームは大きく成長しているはずです。ぜひコーチのみならず選手たちとも意図を共有して、チーム改革に役立てていただけると幸いです。

本テキストは『マインドセット』『準備運動』『ムーブメントトレーニング』『ゲーム遊び』『フィジカルトレーニング』という5つの章に分けて解説しています。
まずは良いチームを作っていくために、選手たち自身が成長していくために超絶重要な『マインドセット』からはじめます。どのような考えを持って、どのように目標を立て、練習に取り組んでいくのかという土台の部分を考えます。
次に『準備運動』についてです。都道府県大会の決勝レベルになるとウォームアップですらなんとなくすごいことをやっているような感じがしてマネしたくなったことはありませんか。誤解を恐れずにいうと、日本代表チームと全国レベルの高校のチームの間に大きな差はありません。その違いは、何を意図して、どんな狙いがあって、それを選択して実践しているかです。このセクションで紹介するいくつかの種目は、実際にBリーグの世界や世界のトップアスリート、プロリーグでも実践しているものもあります。見よう見まねではなく、まずはその意図の理解を目指しましょう。
3つ目は『ムーブメントトレーニング』です。バスケットボールはオープンスキルのスポーツなので、前後・左右・斜め・上下の全方向の広い空間の中で運動していく必要があります。加速、減速、方向転換、リアクションなどさまざまな動きを身につけてその動き質を上げていかなければいけません。このセクションでは "動き方" にフォーカスして解説していきます。
4つ目は『ゲーム遊び』です。生真面目な練習・トレーニングだけではなく、遊んでいるように見えて自然と狙った動きが身につくように仕向けられると素敵じゃないですか? キツくても楽しんでできる練習は選手たちも頑張ります。その結果、自然と能力が伸びていた…なんて博打ではなくて、そんな環境と狙って意図的に作り出してみましょう。
5つ目は『フィジカルトレーニング』です。U-18カテゴリー以上のレベルになると、バウケットボールは一気にフィジカルゲームと化します。身長が高い選手、体が強い選手に嫌でも張り合わなければいけません。必然的にプレーの強度も上がっていくため、怪我をしない体づくりは確実に確実におこなっていかなければなりません。フィジカルトレーニングを取り入れるかどうかだけでも、プレーの選択肢が増えていきます。「何をしたらイマイチいいのか分からない…」「今まで(選手時代に)やってきたことをやらせています」という方はぜひ参考にしてみてください。


<筆者プロフィール>
本田創大  -Souta Honda-
Physical Edu.代表 S&Cコーチ

京都府京都市を中心に関西圏で活動するフリーランスのS&Cコーチ。現在は高校バスケ、専門学校バスケをはじめ全国障害者スポーツ大会の陸上競技コーチなどを担当している。

<略歴>
2020年3月:長崎大学 卒業 - 学士(教育学)
2020年3月:Physical Edu. 開業
2020年4月:Improve KYOTO 契約トレーナー
2021年4月:履正社国際医療スポーツ専門学校 バスケットボールコース非常勤講師
2021年7月:​京都産業大学付属高等学校 女子バスケットボール部 S&Cコーチ2022年4月:未来アスリートプロジェクト ヘッドコーチ
2022年4月:京都府障害者スポーツ 陸上競技コーチ

<所有資格等>
- 中学校, 高等学校教諭第一種免許状(保健体育)
- NSCA-Certified Personal Trainer(NSCA-CPT)
- Certified Strength and Conditioning Specialist(CSCS,*D)
- EXOS-Performance Specialist Certification(XPS)
- 日本バスケットボール協会公認D級コーチ



1. マインドセット

本章では、アスリートが結果を出し、さらに活躍していくために1番最初に変えていくべきマインドセットについて解説していきます。本章を読んで、あなたやチームにとって有益になったこと、やってみようと思えたことがあればぜひ参考にしてみてください。決して、正解を書いているわけではありませんし、洗脳したいわけでもありませんので参考にするかしないかはご自身の意思でおこなってください。マインドセットは、自分自身でしか変えることができないので、全てはあなた自身または選手自身の選択と行動で変わっていきます。そのためにコーチができることは、選手が思考を変えるためのきっかけづくり、環境づくりです。より活躍できる選手を育てるためにも、まずはマインドセットを大事にして みてください。

マインドセット:MINDSET とは、これまでの経験や教育、先入観から作られる思考パターンや固定化された考え方のこと

高校バスケの年間スケジュール

高校バスケ界の2大大会といえば、夏のインターハイと冬のウインターカップです。例えば、京都府はそれぞれ市部予選から始まり、京都府予選、京都府本戦と進んでいきます。そこで勝ち上がるとインターハイ、ウイン ターカップの本戦に出場することができます。しかし、現状としては各都道府県には強豪校がそれぞれあり、上位大会に進出するチームは各都道府県ともに毎年ほぼ大きく変わることはないのも事実です。もし自分たちのチームが都道府県予選を勝ち抜いて、全国大会へ進みたいのであれば、並大抵な努力がなければ難しいかもしれません。
高校バスケ界は、大きく照準を合わせていく大会が大きく2つあります。1つ目は、5月1週目頃に開催されるインターハイ予選です。多くの3年生がこの大会を最後に引退します。その後、新チームに代替わりし、次に照準を合わせるのは、9月ごろに開催されるウインターカップ予選です。つまり、3〜4ヶ月に1回のペースで上位大会に進出するため のチャンスが巡ってきます(強豪校に関しては、近年U-18のトップリーグなどもあります)。しかし、その大きな大会も年に2回程度、3年間のうちに5回(3年生は冬まで残れば6回)しかありません。高校生の間にたったの5回です。少しでも多く勝ち上がって行きたければ、その大会ごとに照準を合わせて、絶対に外すわけにはいかないのです。

年間スケジュールを把握できていますか?

そのために、私たちができるのは『準備』しかありません。次の特大チャンスをしっかりものにするため に、今すぐ準備をはじめましょう! 次に目指すところはどこなのか、チーム全体で確実に共通認識をして、日々に練習に取り組んでほしいと思います。大事なポイントは、『目標を "チーム全体で共有できていること" 』です。バスケットボールはチームスポーツである以上、選手全員が同じ熱量で突き進んでいかなければいけません。


目標設定

今、あなたのチームはしっかりと目標がありますか? そして、チームの目標を理解できていますか? もし今、即答で "YES" と答えることができないのであれば、早急に時間を取ってでも考えた方がいいと思います。はっきりとした目標がない活動、何の目的のない活動からは、ほとんど何も生まれません。逆に、はっきりとした目標を持って、そこに向かって全力でに取り組ん でいる選手は日々確実に前進していきます。毎日きつい練習に取り組んでいるのに、何の目標かもないのは勿体なさ過ぎます。「何のために練習しているんだろう…。」となっても仕方ありません。どーせキツい練習をするのであれば、何か目標に向かって取り組んだ方がモチベーションは高まります。

なぜここまで口うるさく目標設定を言い続けるのか、その理由をいくつか挙げておきます。

  1.  内発的動機付け(自分から頑張ろうと思う気持ち)が増大する

  2.  活動の質を高められる

  3.  パフォーマンスが向上する “可能性が高い”

  4.  結果的に自立した学習者(選手) となる など...

特に4つ目の “自立した学習者になる” という点がポイントです。いつまでも下級生は上級生の機嫌を伺ったり、 監督やコーチ、顧問の先生からの指示待ちの状態では、自分の頭で考えるという自立した思考が生まれません。ときには監督やコーチ、顧問の先生が言うことが間違っていることもあります。そんなときでも、選手はコートの中でプレーをしているときは自分たちで判断するしかありません。自分の頭で考えられないというのは、学習者として最も致命的になりかねないポイントなのです。

<目標設定の順序>
目標設定をするときには、可能な限り ”具体的に” そして、”逆算して” 考えてみましょう。どこを目指したいのか(具体的な順位や点数、立ち位置など)、その次に目指す場所と今の自分たちの現在位置の差を知ることです。それが見えて、はじめて “どうしていくべきなのか” を考えることができるようになりま す。この過程をぶっ飛ばしてしまうと「何をしようかなー?」 「これをすればいいのかなー?」「何をすればいいのかわからない…」 といった、1m先すら見えない霧がかった不鮮明な道を歩き続けていくことになります。当たり前ですが、目的地の方向も、距離も、自分がいる位置もわからない状態でただ進んでいくのは博打です。ギャンブルと一緒なのです。稀に運良く目的地に辿り着くこともあるかもしれませんが、誤解を恐れずにいうと、たまたまです。代替わりした後の再現性は限りなく低いはずです。高校生の部活をできる2年半くらいの貴重な時間を、そんな危ない橋を渡る賭けに捧げてほしくありません。非常に勿体ない。

目標設定の順序

そうならないように、コーチ陣が自分たちの強みや弱みを分析して、どう戦っていくのか、どこを目指していくのか、その指針を立てて、引っ張って行ってほしいと願っています。コーチと選手が頭の中に目指していく場所までの地図をしっかりと描けていれば、迷わず同じ目的地を目指すことができます。そのために必要なことも分かってくるでしょう。 その結果、意識や練習強度も上がってくるはずです。お互いに信じて、目的地を目指しましょう!


優先順位をつける

『大きな石理論』 という有名な話をご存知でしょうか? ネットからそのまま引用させていただきました↓↓↓

「さあ、クイズの時間だ!」

大学教授は、そう言って大きな壺を取り出し、教壇に置いた。その壺に、彼は 一つ一つ石を詰めた。壺が一杯になるまで石を詰めて、彼は学生に聞いた。

「この壺は満杯か?」
教室中の学生が「はい」と答えた。

「本当に?」

そう言いながら教授は、教壇の下からバケツ一杯の砂利を取り出した。そして砂利を壺の中 に流し込み、壺を振りながら、石と石の間を砂利で埋めていく。そしてもう一度聞いた。

「この壺は満杯か?」
学生は答えられない。一人の生徒が「多分違うだろう」と答えた。

教授は 「そうだ」 と笑い、今度は教壇の陰から砂の入ったバケツを取り出した。それを石と砂利の隙間に流し込んだ後、三度目の質問を投げかけた。

「この壺はこれで一杯になったのか?」
学生は声を揃えて、「いいや」 と答えた。

教授は水差しを取り出し、壺の縁までなみなみと水を注いだ。 彼は学生に最後の質問を投げかける。

「僕が何を言いたいのかわかるだろうか?」

一人の学生が手を挙げた。
「どんなにスケジュールが厳しい時でも、最大限の努力をすれば、いつでも予定を詰め込む事は可能だということです。」

「それは違う。」 と教授は言った。
「重要なポイントはそこにはないんだよ。この例が私達に示してくれる真実は、大きな石を先に入れない限り、それが入る余地はその後二度とないということなんだ。」

君たちの人生にとって”大きな石”とは何だろうと教授は話し始める。

「それは、仕事であったり、志であったり、自分の夢であったり......」
「ここで言う “大きな石” とは、君たちにとって一番大事なものだ。それを最初に壺の中に入れなさい。さもないと、君たちはそれを永遠に失う事になる。もし君たちが小さな砂利や砂や、つまり自分にとって重要性の低いものから自分の壺を満たしたならば、君達の人生は重要でない何かに満たされたものになるだろう。 そして大きな石、つまり自分にとって一番大事なものに割く時間を失い、その結果、それ自体を失うだろう。」

この教えはかなり的を射ています。コーチやトレーナーがトレーニングプログラムを組み際にも同じことが言えます。やりたいことに何でもかんでも取り組むことは時間も労力もかかります。ときには良かれと思ってやっていることすら、不適切な努力になってしまっていることもあります。チームにとって重要なことから練習しなければ、結果的に得られるものは少なくなる可能性が高いのです。

練習やトレーニングは、ある目的や課題があり、それを解決するためにどんな方法・手段を用いるのか、何に時間をかけるのかを決定します。下の画像を例にすると、気に刺さったネジを引き抜きたいという目的があります。その目的を達成するために、まずは適切なツールを選択する必要があります。例えば金槌やニッパーでは長い時間をかけても引き抜くことができるかは分かりません。それよりも確実なプラスドライバーを選択することができれば、最短時間で問題となっているネジを引き抜くことができるはずです。不必要な時間をいかに少なくして、身になる時間に費やせるかはコーチたち次第かもしれません。

そのためにやることは、まず “選択肢を絞ること” です。10やりたいことがあるのなら、その中から優先順位の高いものから順にさらに少数に絞ります。やりたいことを考え出したらキリがありません。やりたいことを足し続けるのではなく、やりたいことの中から引き算をしてさらに大事なことを絞り出す必要があります。
そして、やるべきことが絞れたら ”徹底してやり続ける” この2つだけです。限られた時間の中で競技力を最大化するために、個人またはチームでやるべきことを選択して、徹底的にそれを継続しま しょう。その中で余裕を持てるようになり、余白が広がってきたら新たな選択肢と継続を追加してみるといいですね。

選手たちのポテンシャルやチーム成績を今以上に伸ばしていくのは無理難題ではありません。本テキストは1回戦突破や1つでも多く勝ち進みたいチームが対象ですので、尚更当てはまるかもしれません。条件としては、

  1.  良いコーチ

  2.  主体性のある選手たち

  3.  必要な練習やトレーニング

これくらいです。4の外的要因とは、自分たちではどうすることもできない『対戦相手の決定』や『時の運』などです。自分たちでどうこうできるのは1〜3までです。
これを呼んでくださっているあなたはすでに学ぶ意思のあるコーチだと思いますので、すでに良いコーチである可能性が高いです。コーチが変わるだけでチームが激変する事例も度々見かけますが、やはり受け止めなくてはいけない事実なのだと思います。「もしかしたらチームが勝てていないのは、コーチである自分の技量なのかも…」そう思って日々学び続け、実践に活かせるコーチはとても素敵です!というか、そうあるべきなのです。
そして、2つ目の主体性のある選手たちについては、これは選手たち自身の課題です。マインドセットをいかに高いレベルに持っていくことができるかにかかっています。「私たちは弱いから1回戦で負けるよね…」という思考から、「何がなんでも1回戦くらい勝ってやる!」そう思考が変化するだけでもチームが見違えるくらい変化するはずです。うちのチームも昔はそうだったようです。「1勝くらいできたらいいなー…」というマインドだったものが、現在では「何がなんでも勝つ!」「絶対京都府予選に出る!」そんなマインドに変化しています。それに伴って、今年は実際にその目標を達成できました!
そして3つ目に、必要な練習やトレーニングに関しては、上でも説明した通り、『選択肢を絞る』✖️『徹底してやり続ける』これにつきます。仮に良いコーチがいて、主体性のある選手たちが揃っているにも関わらず結果が出ていないのであれば、練習やトレーニングに課題がある可能性があります。簡単な結論から先に言うと、結局は何をやるかよりも、何を目的として練習しているかなのです。だからこそ、ここまでに解説してきた『マインドセット』の部分をコーチであるあなたがまずは考え、それを選手たちと共有し、さらに深め、チーム全体で目標に向かって進んでいく過程が必要なのです。

「当たり前のことすぎて、考えもしなかった…」と話してくださるコーチも多いですが、当たり前のことが意外と不十分であることが多いのです。思考が変われば、行動が変わります!まずは何よりマインドセットから見直してみてください。

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