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間違ってるよ!精神医療

長い間、看護師としてあちこちの病院で精神医療に携わってきて、
色々な医療者を見てきて、治療スタイルを見てきて、やってきて、
自分自身が精神医療ユーザーとしてサービスを受けてきて思うのは、

「違うんじゃね~!?精神医療!?」ということだ。残念だが。

そもそも政策が間違っている。
一般の人はいわゆる精神科特例といって精神科だけ看護師の人数が
少ない配置でも許可されることをご存じないと思う。
スーパー救急といわれる3ヶ月以内に患者を退院させる
(それだけが条件ではないけれど)病棟のみ、
はじめて身体科と同じ人数の看護師があてがわれる。
それ以外は少ない人数で良しとされる。

多くの患者さんのお話を伺ってきて、また自分自身も苦しんできて、
私の中に生まれた確信がある。
・人を癒やせるのは人でしかない
・孤独は万病の元
ということだ。

そうではない例も知っているし、意見も知っているので
ここはご勘弁願いたい。
孤独の定義も人それぞれのことでしょうし。

割と最近、治療方針を見直す為の入院を請け負ってくださる大学病院を
見つけて、新幹線に乗って2週間の予定で入院してきた。
もちろん精神科病棟。閉鎖病棟。
長年、必要の無い人にも「全ての入院患者さんの安全を守るため」
制限を強いてきた身である。
理由も事情もわかる。
そして昨今のコンプライアンスとか転倒防止等の医療事故防止とか、
私としてはちょっと非現実的だと思う過剰な約束は、
医療者の自己保身の為に患者の自由を奪う結果になっている。
支援側でいるときも疑問に思ったり歯がゆく思うこともあったが、
やはり患者として入院して、はっきり理解した。
残念ながら精神科病棟が患者を悪くしている側面がある。

誤解しないでいただきたいのは、0か100かの話をしているのでは無い。
入院やその環境、隔離する為の保護室が必要な時はあります。
そうで無ければ、その人の命を守れない、魂を守れない、
そういう時はあるのです。

そして、そういう時ほど、私は精神看護や精神医療に精通し訓練された人間によるcare(看護)とcure(治療)が濃厚に必要だと思うのです。

しかし私が見聞きし、経験してきた精神医療は違った。

ここからはあくまで個人の意見です。あしからず。
まず医療者。
私も含め、精神科を希望するのはよっぽど真面か、自分も病気か、
身体科で役に立たなかった人だ。
総合病院の場合、看護師は希望するしないに関わらず人事異動で
精神科に配属される。
従って精神看護に対するモチベーションはまちまちである。
看護の仕事はチームワークが大切なので、
私の経験では身体科でスタッフと人間関係を築けなかった曲者が
「精神科で面倒見て」と回されるなんてことがあった。
人間関係を使って患者さんを看護する病棟なんですけどね!

心の病の状態は目や数値で確認できない。
だから、できそこないの支援者が偉そうにのさばる。
患者さんが真っ当な苦情を言っても全部病気や症状のせいにされて、
医療者が正しいことになる。

私の中にも尊敬できる医療者はいる。ただ、数えられる人数だ。
精神医療はまだまだ解明されていないことの方が多い。
長年信じられてきたことが覆される研究結果が出てきたりもしている。
だからこそ科学的にも心理学的にも常に真摯に向上心を持って
向き合っていかなければ患者さんに申し訳ないと思うのに、
あぐらをかいている人が多すぎる。

そして人員不足。できそこないの医療者が多い上の人員不足。

加えて4床室や6床室。個人的対応ができない多床室。

その結果、患者さんは必要も無いのに持ち物も行動も制限され、
自由を奪われる。

例えば自分のお金で買っているのに自由に食べられないおやつ。
その病院では時間も量も看護師が決めて提供していた。
おやつをお渡ししたとき「ありがとう」と言われ、涙が出そうになった。
「このおやつはあなたの物だ!本来あなたが自由に食べてよい物なのに!
 ごめんなさい・・・」

政府も世の中もコスパやタイパ、目に見える物だけに価値を見いだすので
余計にそうなるのだが、
精神医療や看護は脳科学にも頑張ってもらわないといけないが、
精神療法にも同じく頑張ってもらわなければならないし、
そのためには人材育成に時間も費用もかかるものだ。
そのことを政府も医療者も了解していない。
どちらかだけでは、
精神障害者が地域で当たり前の生活を送り、
それを当たり前に維持していくことが難しく、
結局医療費は減らないということに、
どうして上に立つ者は気づかないのか。

精神障害者に対して多職種が関わるほど結果が良いことは
国内外の研究結果で明らかになっていることだし、
精神医療の歴史上初めて人とお金をかけた医療観察法でも
成果は示しているはずである。
精神障害者にこそ、マンパワーをかけるのが正解だし、
それも訓練を受けた人間をあてがうのがコスパもタイパも良い。

いつまでも無くならない精神医療の不祥事は氷山の一角であることを
知ってほしい。
日本の精神医療は非常に貧弱だ。
それが日本の現実で、弱者を守らないどころか虐げている。
不都合なことは見なかったことにする。押し込めている。閉じ込めている。

100年以上前に呉秀三が報告した「この邦に生まれたる不幸」は未だ存在する。

私はそれが悔しい。

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