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魂の表現者。ビジネスの舞台から教育の舞台へ。大学教授“手嶋康則さん”

ライフスタイルの研究者で、トレンドやマーケティングの分析をしている中村学園大学准教授の“手嶋康則さん”にお話をお伺いしました。

■手嶋 康則(てしま やすのり)さんプロフィール
出身地:福岡
活動地域:福岡
経歴:1957年生まれ。百貨店のマネージャー、バイヤーとして欧州での商品の買い付けなどを歴任し、その後、ファッションとスイーツの販売及び店舗を経営。2000年から専門学校や大学での非常勤講師を経て、現在に至る。
現在の職業及び活動:中村学園大学栄養科学部フードマネジメント学科所属
座右の銘:「生きるために食べよ。食べるために生きるな。」

「夢って計画したからつくりあげられるものじゃない。」

Q:どのような夢やビジョンをお持ちですか?

手嶋 康則さん(以下、手嶋 敬称略)
僕にとって重要なのは、授業を通して学生たち一人ひとりに気づきを与えること。興味を持たせて、刺激を与えて、とにかく感動させること。でも、それが人生の目標や夢だとは思ってないし、教員を定年したら、小さい頃から好きだった絵描きになろうかなと思っています。夢ってつくりあげれば人生が必ず上手くいくというものでもないと思うし、僕の周りの上手くいっている人は、計画通りに行っている人とは限りません。逆に計画通りにいかなくても、そこに救世主のような人が現れて結果的に成功している人が大勢います。夢を描いたから、その通りなるとは限らない。矛盾したことを言うようだけど、夢を描けばプラスアルファが生まれるのは確かだけどね。

記者 なるほど。夢についてのイメージが深まります。

手嶋 教え子に「先生、夢って叶わないから夢って言うんですよ。」と言われたことがある。その時はすごくショックで今も覚えています。僕は夢は持っていないといけないと思うし、その夢はできるだけ叶えて欲しいと思うんです。その時夢の大小や他人と同じような夢である必要もない。ただ、夢を持つために自分を偽る人がいる。自分を偽って夢を持ったとしても、それは何にもならない。だからこそ夢を持つことは、自分の中に普遍的な軸を発見する必要がある。それを20代で見つけるか、30代で見つかるか、恐らく本人にもわからないとは思うけど。でも探そうとしなければ見つかりません。軸を見つけることは生易しいことではないですが、自分の生き方のキーワードが出てくれば、その先に本当の夢があると僕は思っています。

記者 なるほど。それでは手嶋さんの夢のキーワードは何ですか?

最高の生き方のキーワードは、“感動・自由・挑戦”

手嶋 僕にとって、最高の生き方のキーワードは3つある。このキーワードを見つけるまでに40年もかかりました。40歳の時に会社を辞めることにしたのですが、その結果無職になって、夜布団に入ったらお金の心配ばかりが湧いてきた。そんな時、自分にとって本当に大切なことは何なのか?何のために生まれて、人生とは何なんだろう?そのことを物凄く考えました。
そして、僕の中に出てきたキーワードは、「感動」「自由」「挑戦」だった。この基準ができたことで、自分が生きる目標というか、方向が観えてきて、すごく楽な気持ちになった。その後、お店を経営している時も、現在の教師の時も、この価値判断が僕の人生を支える判断基準になっています。

記者 キーワードを発見することで、生きる基準軸が明確になったのですね。

それぞれの能力を出し切れることが本当の教育。

Q:そもそもなぜ教師になろうと思ったのですか? 

手嶋 若い頃から先生になろうとか思ったことは全くなくて、むしろ教育者とか国家権力とか大嫌いなタイプでした。肩書きでモノを喋る人を嫌ってて、敵対視していたぐらいです。
だから教師になることは僕の夢ではなかったし、むしろ嫌いな職業でした。

記者 そうなんですか(笑)。

手嶋 経営者に憧れてたわけじゃないけど、実家が商売やってたんで、小売の世界には興味があったんです。そうしたら社会人になって仕事始めると、僕の中の遺伝子が商売人なのよ(笑)。交渉力とか好奇心とか行動力とか。人よりも何をしても目立ってた。小売の仕事が性に合って10年ぐらい働く中で、売上を上げるのが得意で、何でも売らせたらめちゃくちゃ上手かった。当時はモノが売れてた時代だったしね。そのうち自分個人の売り上げは達成できても全体の売上は達成できていないという壁にぶつかった。どんどん目標数字は上乗せされていくし、そんな時自分一人での売上をつくることに限界を感じた。その時に気づいたのが、「組織をどうつくるのか?」でした。

記者 個人での限界を感じた時に、個人から組織へとアイデンティティが切り替わったのですね。

手嶋 組織をつくるとは何かというと、人と人をどう組み合わせるか?なんですね。お互いの長所が伸びるような組み合わせになれば組織は自然と上手く働きます。
しかし、モチベーションを長く維持できる人はほとんどいない。そこを続けさせなければ、到底予算は達成できない。僕は毎日部下の前で、3分間スピーチをして、部下にエネルギーを注ぎました。朝のぼーっとしている状態からキリッとした顔つきに変わっていく。それを毎日、365日本気でやっていました。
売上を達成させるコツは、人を教育し、成長させることしかないですね。一人ひとりの能力は違う。一緒のはずがありません。80点の力を持っている人が50点しか力を出していない場合もあれば、30点の力の新人が60点を取ることもある。だから売上を上げるコツは、一人一人の部下へのアプローチを変える必要がある。これは大学の教育、学生指導でも同じです。売上が伸びない会社や店舗は、経営者が自分の物差しで部下の能力を測り、経営者自身がイライラしている。能力の高い低いではなく能力を出し切れる環境づくりが経営者にできれば、組織の力は数段レベルアップします。そういう考えで、20年間商売をやってきて、一人一人が能力を出し切れることが僕のスタイルの教育になっています。

記者 それが手嶋さんの教育者としての核になったのですね。

成功していない人が、成功について話すのは、おかしい

手嶋 縁があって、教員になるお話しを頂きました。ひとつは、ビジネス界でも人を育てることにやりがいを感じていたし、教えることが大好きなんです。もうひとつは、決して知識だけで成功するものではないと確信がありました。教育の現場にも経験やビジョンや、感情など、そういう色々な組み合わせが必要だと思っていました。成功していない人が、成功について話すのは、おかしいなと単純に感じていました。僕はサラリーマン時代からずっと結果を出していたし、そういう人が少しでも夢や成功について話した方が受け入れられるのではないかと思っていました。僕は結構、谷底から這い上がってきた自負があるので、生きることを正面から学生に話せると思い、教員になる決心をしました。

記者 実は私(相良)も手嶋先生の教え子なんですが、先生の授業は他の先生とは全く視点が違っていて、いつも授業を受けながら胸の内が熱くなり、1コマの授業を終える頃には、生きる力が漲っていたのを思い出します。

手嶋 大学というのは研究者が多い。僕はあまり研究が得意じゃないので、実践を通して学ばせています。最近どの先生とも違う、自分の授業のスタイルがどうにかできるようになりました。

夢中になれる学生が大好き。

Q:これだけ熱い生き方、スタイルを持ち続けられる原点は何ですか?

手嶋 社会人の時に経験した仕事が性に合ってたからだと思います。好きなことをすることがどれほどモチベーションに繋がるか。好きなことは仮に上手くいかなくても、継続できます。例えば販売の仕事なら、このスカートを売るためにどうすればいいか?ひたすら考えて、浮かんだアイディアを試してみる。大学の授業は楽しくなかったけど、社会人の課題は面白くて仕方なかったですね。会社では周囲と自分を比べたりはしませんでした。入社してしばらく経って、同期から飲み会に誘われない自分に気づいて、ある時上司にそのことを相談したことがありました。そうしたら上司は、「お前が今やるべきことは何だ?自分がどうしたいのか、それに従えばいい。」と言われたことがその後の自分の仕事の関わり方に重要な意味を持ちました。
教員をやっている今も、ダメ学生な自分だったからこそ、成績の悪い学生が全く気になりません。何かに夢中になっている学生が大好きです。

記者 ありがとうございました。最後まで人間に対する情熱と、生きる姿勢や哲学がひしひしと伝わってくるインタビューでした。

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【編集後記】
今回記者を担当した相良と大野です。今の10代、20代は夢や生きる情熱を持てなかったりする人がとても多いと思います。手嶋さんの夢についての考えや、自分が好きな事に真っ直ぐになることの大切さなどのお話は、そんな若者に対する生き方のヒントがたくさん散りばめられたメッセージだと感じました。魂のこもった表現やメッセージで相手の心を震わせる、そんな手嶋さんの今後の活躍が心から楽しみです。

この記事は、リライズ・ニュースマガジン “美しい時代を創る人達” にも掲載されています。


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