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30年前に自分が書いた手紙を読み返しながらのタイムトラベル 〜イギリス生活事情編(その3)〜

このシリーズでは、30年前にイギリスに住んでいたときに両親に宛てた手紙たちと再会を果たし、それらを2022年の今読んで面白いと思ったこと、気づいたことなどをご紹介しています。今回はその1その2に引き続き、イギリスの住宅事情に絡めて、初めてのロンドン暮らしをしたときのこと、そしてひょんなことからハリウッド・スターの昔のお宅拝見ができてしまったときのこぼれ話、などを綴ってみます。

ロンドンの住宅事情


30年前の10ヶ月間は、ウェスト・ハムステッドというロンドン北西にある閑静な住宅街にあるリビング+3ベッドルームのフラットを同じ会社の新入社員4人でシェアしていました。先に入社した二人がすでに借りていて同居人を探していたので、住居探しをする手間が省けてラッキーでした。この地区は今では家の値段も家賃も30年前の7、8倍になっていますが、その頃は一人あたり2万円くらいで借りられていたと思います。

<・・・4人ともお互いにあまり干渉せずにうまくやっています。夜一緒に出かけたり、一人の子の部屋でお菓子を食べながらテレビを見たりと学生のようにワイワイと楽しく過ごしています。皆、家から離れて寂しいのか、なんとなく台所に集まったり、人がいる部屋を訪れたりします。・・>

同居人はアイルランド、イギリスはリバプール、そしてフランスから初めて親元を離れてロンドンにやって来た大学出たての女子3名。70年代のままの内装だったので、最初は皆で自分の部屋のペンキ塗りから始めたのも懐かしい思い出です。私はやや悪趣味でポップな花柄で覆われていた壁を白く塗り直し、会社のショールームで使って要らなくなっていた家具を運よく譲り受け、その頃まだイギリスに上陸したてのIKEAに行ってランプとギリシャの絵のポスターなどを購入し、無事に一人部屋が完成。

小さな自分のお城が完成しました

今はIKEAはあまり好きではないけれども、その頃はお財布に優しいのにデザインが可愛い!と同居の3人とキャーキャー言いながらお買い物をしたことを思い出しました。このウェンブリーのIKEAに今行くと味気なくて気が滅入るような感じがしてしまうのですが、私が変わったのか、お店が変わったのか。。

ウェスト・ハムステッドは会社がある駅と同じ地下鉄の線であるだけでなく、中心街にも近く、緑が多いハムステッドにも歩いていける好立地でした。ここを起点に退社後や週末のプライベートライフを目一杯楽しみながら仕事も頑張っていた若き日の私。すっかり出不精になってしまっている今の自分とは大違い。反省、反省。。。


<・・アパートが古いのでヒーターが壊れたり、シャワーのお湯が一時出なくなったりして大変でしたが、それも修理してもらい、一安心です。こちらのお風呂はタンクにためて温めるので、途中で水になってしまったりして不便です。>


当時は宿に泊まった時なども、「お風呂はあるけど、お湯が限られてるからシャワーにしてね」と言われることも多かったことを思い出しました。イギリスの建物は今でも古いタイプのものも多く、新しいシステムでお湯が使い放題の家と、30年前と同じでタンクにためて温めるタイプの家があります。

ボイラーその他が壊れやすいのは今も同じ。冬の前にボイラーの点検をしてもらって備えたり、それでも友人と会うとつい「真冬にボイラーが壊れたらどうしよう」とか「壊れてひどい目にあった」なんていう会話をしてしまうのは、イギリスの冬の風物詩とさえ言えるかもしれません。

ハリウッド女優のかつての邸宅


以下はこぼれ話。ハムステッドといえば、30年前ヒョンなことから往年のハリウッド女優が昔住んでいたお宅拝見できてしまった、という珍しい体験をしました。これも手紙を読むまですっかり忘れていたことです。以下、友人のそのまた友人ご夫妻とお会いした時のこと;

<・・・土曜日は珍しく一日中快晴でしたので、またハムステッド・ヒースに出かけました。大空の下で凧揚げをする人が目立ちました。・・(途中略)・・この友人夫妻はハムステッドに素敵な家を持っているご夫婦で、私たちはまずこの人たちの家で一杯飲んでおしゃべりをしました。この家は以前エリザベス・テーラーがイギリスにいた時にリチャード・バートンと住んでいた家だそうで、今では2軒に分かれて2家族が住んでいます。屋根にはガラスでできたサン・ルームもあります。目の前はハムステッド・ヒース・・・と目がお星様になってしまうような所です。・・まあ、こんな経験もたまには良いでしょう。>


「珍しく一日中快晴」と言う表現も、雨がちなイギリスならではで泣ける。。。

・・・住宅事情に話を戻します。古い家が価値を失わないどころか、ますます価値を持ったりもするイギリスですが、上記のご夫妻のお住まいのように、大きな家を売買しやすいように縦割りに2軒に分けて分譲するということがよくあります。家はくっついていて、お庭を真ん中で柵で区切る、みたいな住み方です。

こちらはハムステッドにあり、博物館にもなっている詩人キーツの家。家族に宛てた絵葉書より。


今ではハムステッド・ヒースの豪邸はおろか、ロンドンなどでは場所によっては1ベッドルームのフラットでも数億円する時代になってしまい、元々不動産を所有していた人でないとマイホーム購入は難しくなっています。30年前にメンタル・タイムトリップはできても、実際に戻ってアパートとか家を買うことができないのが残念!

住居に関しては、私は放浪癖があって今まで色々な国を転々としながらの人生だったのですが、そろそろ終の住処を見つけたいなー、という気持ちも最近強くなってきました。今後どのような環境でどのような人たちと関係を築きながら暮らしていきたいのかを模索していかなければ、と思う今日この頃です。

*   *   *

30年前の手紙を読みながらのタイムトラベルはまだまだ続きそうですが、「イギリス生活事情編」はここで一旦おしまい。手紙シリーズの「スコットランド・湖水地方一人旅編」も書いてみました。お読みいただけましたら嬉しいです。

ここまでお読みくださりありがとうございました。

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