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125. きちんと着けよう, ヘルメット!

ミュージカル好き救急医の独白 vol.125
- The Monologue of a Musical-Loving Emergency Physician -

はじめに

みなさん, バイクや自転車に乗る機会はあるでしょうか. 私は車で移動することが多いのですが, 運転しながらバイクや自転車にヒヤリとする場面はあります. また, 救急外来で事故の患者さんを診ることが多いのですが, その時にヘルメットが…ってことも多いものです. 今回はそんなヘルメットのお話を.

今回のミュージカル

生きる IKIRU
ミュージカル生きるがとうとう千秋楽を迎えました. 最後の2日間はLIVE配信(大千秋楽ライブ配信)も行われ, 会場で観ることができなかった鹿賀さんver.も観劇できました. 初演のときよりもさらに熱のこもったみなさんの演技に, iPadでの観劇ではありましたがぐっと引き込まれました. カーテンコールの演者のみなさんの表情からも, この舞台にかける思いが感じ取れた気がします.
多くの劇場が再開し, 体温管理やマスク着用, 換気などが徹底され, さらには観劇者の登録・管理が行われています. 観客の方々も100%マスクを着用し安心して舞台を楽しむ新たなスタイルが確立されつつあります. 眼鏡をしている方で時々マスクをつけると眼鏡が曇って...と言う方は付け方が正しくない可能性があります(スペースがあるから漏れているのです). マスクをただただ着けるだけでなく, 正しく着けることが大切です. ってことで今回はヘルメット, これもマスク同様かぶっているだけではダメで, 正しく着けましょうねってお話.


救急外来あるある

軽自動車とバイクの接触事故が発生し, バイクに乗っていた30歳代の男性(CPさん)が搬送されてきました. 幸い目立った外傷はなく, 歩行は可能な状態でした.

Dr.S:「今日はどうされたのですか?」
Pt.CP:「よそみをしてしまって...」
Dr.S:「ぶつかったときのことは覚えていますか?」
Pt.CP:「はい. だいたいは.」
Dr.S:「いまなにか症状はありますか?」
Pt.CP:「少し気持ち悪いですね. あとは少し頭が痛いです.」
Dr.S:「ヘルメットはしていましたか?」
Pt.CP:「はい.」
Dr.S:「ぶつかった後に外れてはいませんでしたか?」
救急隊:「離れた所に落ちていましたね. 」
Pt.CP:「あ…」
Dr.S:「なるほど…」

二輪車に乗る際に大切なもの

交通事故の総件数は年々減少しているものの, 救急外来には毎日の様に外傷の患者さんは搬送されてきます.
車の事故ではシートベルトをきちんと締めていると, そうでない場合と比較し運転手や前席乗員の死亡率は40-50%低下, 後席乗員では25〜75%低下するとも言われ, 今や後部座席でもシートベルトが義務化されていますよね.
それでは二輪車ではどうでしょうか. 二輪車事故の場合には, 生身の身体が直接車や道路と接触し受傷することから, 車の場合よりも一般的に重篤となります. その際に大切なもの, それがヘルメットです. もちろんプロテクターなどを装着していればより良いですが…

ヘルメットの効果

二輪車交通事故にヘルメット着用状況はどの程度でしょうか. 警視庁の報告によると, 死亡者の98.2%は装着していました. ヘルメットを装着していた人の頭部の主損傷率は42.1%, 未着用であった場合には63.6%と効果はありそうです. しかし, つけていても42.1%も損傷してしまうのかと思うと, それ程効果がないのでは?とも思ってしまうかもしれません. 実は, 着けていたとしても4人に1人は顎紐がきちんと結ばれておらず, 受傷時の衝撃等でヘルメットが外れてしまっているのです. 時々見かけますよね, 顎紐を結んでいない状態で乗っている方を…
マスクと同じで着けていても適切に使用していなければ効果は限定的なのです. 折角着けるのですからきちんと自分に合ったヘルメットを正しく使用しましょう.

自転車とヘルメット

自転車に乗用する幼児および児童(13歳未満)に対するヘルメットの着用遵守義務が施行(道路交通法第63条の11)されましたが, 2018年の交通負傷事故の自転車乗用中の幼児用ヘルメット着用状況は, 着用が312件, 非着用が568件と35%の着用率でした. 法律には定められていませんが, 高齢者の着用率向上にも取り組む必要があります.



♪小さな公園の 古いブランコ 座らせて 息子の背中おして
 大きく揺らした時に あの子がはじめて笑ってくれた
 それがただうれしくて 青空見上げて祈っていた
 たくましく育てと♬
『青空に祈った』

ミュージカル好き救急医から, 知っているとチョコッと役立つ知識を少しずつお届けします. ぜひ!