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≪intermission⑦≫ 飛行機物語

               2003.3.27記録 2023.8.3加筆・修正
 
私が飛行機に乗るようなことは、遠出の旅行くらいしかありませんのでそれほど多くはないのですけど、乗れる機会があるといつもわくわくします。
いい年になっても子どものように、窓から外の様子を見るのが大好きだからです。
 
離陸してから、眼下の町の風景がしだいに小さくなっていき、山、谷、川などの地形が地図帳を見るみたいに手に取るようにわかります。
じ~っと見ていると、普段いろんなこまごました事で悩んでいたことが、本当にちっぽけで些細なことのように思えてくるから不思議です。
(これは誰もが感じることではないでしょうか)
 

そして高度がだんだん上昇して、機体が雲の上に出て下の風景など見ることができなくなっても、まだ外を眺めています。
とにかく雲を見るのが好きで、その雲が厚くなればなるほどえもいわれぬ気持ちになります。
子どものように、あの雲の上を歩いたり、雲の中に入ったりしている自分を想像してみたりするのです。
 

新婚旅行ではじめて海外旅行なるものを経験した時も、もちろん機内では窓の外を見ていましたが、夕方成田を飛び立ったので運良く夕日が雲の地平線間際に位置しているところにも遭遇しました。
その時は、なんだか崇高な思いがずんと胸に迫ってきて、大げさだと思われるでしょうけど、まるで自分が天上人であるかのような錯覚さえおぼえました。
 

さて、いきなりここで紹介する曲ですが、今回は“夏曲”ではありません。
この“初”国際線の飛行機でやたらと流れていたのが、The Doobie Brothers『what a fool believes』です。
 


機内のBGMチャンネルで、小林克也さんDJのプログラムを長旅のお供にずっと聴いていたのですが、この曲が何度も繰り返し流れていて、初海外の気分の盛り上がりもあり、記憶に染みついてしまいました。
曲調がなんかかっこいいです。
この曲を聴きながらでも、窓の外を眺める私。
 
 
飛行機の外の眺めに憑りつかれ、ずっと窓に張り付いている私を夫はどう思っていたのでしょう。(笑)

しかしながら飛行機は太陽を追いかけていくような感じで、雲の地平線に陽が隠れることがなく外はずっと明るかったのですが、キャビンアテンダントの方たちが就眠のために窓を閉めるよう巡回されていました。
もちろん、当然のことながら私の席の窓も締めなくてはいけなくて、ちょっぴり残念。
開けたままでは他の乗客の迷惑になりますから仕方のないことですけど、夜の雲の様子も見てみたかった気持ちもありました。
 
 
さて、私がはじめて飛行機に乗ったのは、もうかなり前ではありますが、年の離れた上の姉に連れられ東京へ遊びに行ったときでした。
まだその頃は、機内サービスも今より凄くよくって、お菓子なんかもいただけてそれくらいのことでもお子ちゃま気質の私は気分良くなり嬉しく思ったものでした。
(国内線ですが、今は飴玉一個ありますか?せいぜい飲み物だけとか…)
 
往きはけっこう大きい機体で、すごく安心してゆったりした感じでしたが(エアバスでした。当時は地方の空港にも頻繁に就航してくれていました)、帰りは逆に正反対の機体でした。
 
その頃はまだ普通に飛んでいたYS型の小さい飛行機だったのです。
あの、プロペラで飛ぶ機体です。
おかげですごく貴重で恐い経験をさせてもらいました。(笑)
 

おりしも運悪く天候はすぐれず今にも泣きだしそうな空模様、でも飛行機が飛べないほどではなかったので、予定通り羽田から地元へ向け出発しました。

しかしいざ離陸してかなり高度が高くなった頃、窓の外ではすごく強い雨が降り出してしまいました。
雲は真っ黒で、ときおり雷まで鳴り出す始末。
強風も吹いているのか、機体が揺れたりもして相当恐かったです。

帰りのフライトなので夕方ということで、外は次第に暗くなっていきます。
人間、暗いと急に不安になったりもします。
何事もないと、暗い空が逆にロマンティックに思えることもあるというのに。
状況によって、こんなに感じる気持ちが違うのですね。
 
「うぁ~…堕ちるかもしれない~!」と姉とビクビクしていました。
もちろん機内のほかの乗客もこの天気の荒れ様にザワザワし始め、私たちと同じように不安そうに話していました。
 
そして突然、窓の外を見ると、すぐ近くにピカーッと稲光が!
機体の揺れも大きくなっているし…。
もしかして乱気流の中に入っているのか!
こんなのアリ!?
私、初めて飛行機に乗って、初めて東京に行って帰るんですけどぉ…。
もし落ちたらすごい確率で大当たりじゃないですかぁ。
いやだ、死にたくないよぉ!まだ長い人生、何もできていないんだから~!!(注:当時は、です( ;∀;))
 
ああ~~、思い出しました。
映画『トワイライト・ゾーン』!!
この時はまだこの映画を観ていなかったのですが、映画をすでに観ている今ならまず思い出すあのシーン。

                                           (オープニングのみ)

高所恐怖症の男が飛行機に乗らざるを得なくなり、いざ乗り込むが外は嵐。
嫌な想像しかできなくなってしまいます。
そして窓の外で稲妻が飛行機の翼に落ちるところを見てしまった男は、謎のエイリアンがこの飛行機に悪さをして堕とそうしているのだと思い込み、パニックになってしまうというエピソードです。
 
これを観ていたのなら、絶対に思い出して怖い思いは倍増したに違いありません。
 
 
それでもどうにか、幸いにも無事に着陸できました。
もっとも機長さんはベテランなのでしょう、落ち着いた声でアナウンスされていたし、危険だということは何もおっしゃらなかったし…。
 
雨は止み、どんより雲が空を覆う地元の空港に降り立ったときは、ほっとしました。
 
飛行機から降りる直前、なんだか前の席がざわざわしています。
どなたかを乗客のみなさんが取り囲んでいる様子。
降りようと前に移動し、いったい誰なのかと近づいてみると、今は亡き淀川長治氏が同乗されていたのに気づきました。
みなさんされていたので私たちもついでに握手していただきましたが、ニコニコされてとってもやさしそうなおじいちゃまでした。
 
「ああ、恐い体験を共に味わった仲なんだなあ…」と妙に感慨深かったです。
もしかしたら、淀川さんはその時『トワイライト・ゾーン』が頭をよぎられたかなあ…。
 
このような怖い思いをするのは、滅多にないと思いますが、こういう状況で有名人と遭遇するなんていう機会もそうそうないと思います。
こういうレアな体験ができるのは、飛行機だからと思いますが、怖い体験はもうこりごりです。
 
そんな私ですが、また長距離の旅行を計画して、飛行機に乗りたいな、雲を観たいなと思っているのです。

以下、追加文です。

この記事をアップした後に、以下のご褒美をいただきました。
前記事のYA本『靴を売るシンデレラ』の読書感想文記事に対してです。
いつもながら数字的に?な感じで申し訳ないですが、私としては喜んで受け取りたいと思います。
みなさま、いつもスキをありがとうございます。


 

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