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「あなたはその正義の違和感を見抜けるか?~『闇祓』~」

『闇祓』 辻村 深月 著 (KADOKAWA)       2021.12読了
 
表紙とタイトルを見て、なにやら不穏な感じを抱いたが、それは正解だったのかも。
人間誰もが持つ正義の、そのもろさと危うさがえぐり出された本作。
私のニガテなミステリー・ホラーではあるが、作者の上手さなのか、ページをめくる手が止まらなかった。

 
学校、ママ友グループ、会社、部活、SNS…様々な人間関係の中に、ゆっくりじんわりと近づき入り込むものがいる。
闇を押し付け取り込み、果ては死をも呼び込んでしまう。
ちょっとした言葉や行動を、「間違いだ」「おかしい」…と非難された人は、しだいに闇に落ちていく。
 
そんな暗闇の中で正義の殻をかぶった人物がさりげなく自分の身近に現れたら、きっと登場人物たちのように当たり前に信じそして頼りにしてしまうだろう。
自分の中にもある正義感をもめちゃくちゃに振り回されてしまい、「確かに言われてみればそうなんだろうけど…」と、どこか違和感を感じながらもその人物の主張を否定できなくしてしまう。
巧みに言葉を操り、いつの間にかあちら側に自分が連れて行かれる。
 
その違和感こそが、闇ハラ。
望んでいないのに自分の正義感や優越感や善意が、心に潜んでいた悪意が白日の下に掘り起こされてしまう。
言われていることは確かにそうなんだ。


「でもそこまで自分は望んでいなかった…」と、本を読んでいれば「余計なお世話!」と言い切ることができるけど、
きっと現実となったら彼らに論破されてしまうんじゃないか…?
誰しも持つ弱さに付け込まれるのかもしれない。
かなり怖いなと感じた。その危うさが…。
 
彼らは家族単位であちこちと移動し、狙いを定めると闇を増殖していく。
その家族の一員がある理由で存在しなくなると、別の人間を補充することで、家族の形を保っていく。
 
そんな闇家族を退治(?)するべく、活動するのが闇祓いと呼ばれる人々。
 
主人公・澪がかかわることになってしまった一件では、ある闇家族はどうにか解散させることができたが、まだまだほかにも存在する。
読んでいて、どこかゾワゾワする気持ち悪さをおぼえる物語だった。


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