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「自分の中の闇は何かを変えたいと願っているか~『よるのばけもの』~」

『よるのばけもの』 住野 よる 著 (双葉社)     2017.1読了                      
 
またまた他サイトのレビューでも書いている人がいましたが、とにかくこの著者の書くものは全て、確かな説明が不足しているように感じます。
同じことを思っている人が少なからずいたことに、内心ほっとしてもいます。
 
いずれにしても、それは良くも悪くも、この著者の一番の特徴なのかもしれません。
『君の膵臓をたべたい』『また、同じ夢を見ていた』もそうでした。
しかし本当に読書に慣れていない人には、言ってみればとても不親切なことかもしれないですね。
 
今回もまた率先して読みたいと思って手に取った本ではありませんでした。
再び同僚から「先に読んでみて感想を聞かせてほしい」と言われてしまったのです。(何なんだ・・・!)
しかし私にとっても幾分リベンジのような気持ちでしょうか、とにかく作品を読んでみることにしました。
 
上記にあるように、のっけからいきなり何の説明もなくばけものになってしまう中学生の“僕”ですが、なぜ“ばけものになってしまうのか?”は謎のままです。
これは最後までこの物語を読んでみると、「何となくそうなのかもね」と自力で納得せざるをえなくなるのです。この物語にある疑問、問いかけにちゃんとした回答は返してくれません!
 
ええ、ええ、そうでしょうとも!
全て自分で考えなきゃいけないんですよね。
 
(……と、ちょっと感情的になってしまいました。ふふふ。)
 
しかし、ある意味自分で解決しなくてはいけない問題だからこそなのかもしれません。
ハッピーエンドに終わらせるのも可能だったはずですが、あえて宙ぶらりんで終わらせています。
主人公の“僕”は、ささやかですがとりあえずの回答、いわば中間地点(中間発表?)での解決でもって、この物語を終わらせています。
 
今現在誰しも当事者になりうる問題は、たしかに自分で答えを見つけなければならないのです。
 
学校の教室は、小さな社会です。
その中で起きる問題に心を悩ませたり、傷めたりする子どもたちは少なくありません。
大人社会でも、同じような問題を抱えている大人は大勢います。
ただ、生きた年月が長い分、うまくやり過ごしたり、どうにか乗り越えていける人が多いだけで、中には適応できなくて悩んだりする人もいるのです。
子どもだけの世界の話ではないんですよね。
 
人間のばけものの部分、本音と建前を使いこなしながら上手に世間を渡っている人間がいかに多いことでしょう。
 
そんな中で、ある意味不器用なのか正直すぎるのか、オモテウラがない人物、それが“僕”の同級生の女子・矢野です。
 
彼女のまっすぐな問いかけにずっとごまかして答えてきた自分の内面に、ばけものの要素を発見してしまう“僕”。
一人になると、そういう黒い自分に嫌気がさして、いつかまともな自分になりたいと悩んでいます。
 
そしてそういう人間がたくさんいることを望んでやみません。
 
 
しかしながら矢野のしゃべる言葉が独特すぎて、それを表現しようとしたのだろうけど、おかげで文章が読みにくいったらありません。
彼女のキャラクター設定としての作者のこだわりなんでしょうが、別に普通に会話している表現でも良かったんではないでしょうか…。
(と、結局今回も辛口で終ってしまいました。ごめんなさい。)


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