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【小説】#3:道尾秀介『向日葵の咲かない夏』

タイトル:向日葵の咲かない夏
著者:道尾秀介
読了日:2022/11/28

あらすじ

小学五年生のミチオくんは、学校帰りに偶然にも同じクラスのSくんが首を吊って死んでいるところを発見してしまう。すぐに学校の先生と警察に知らせるが、死体がなくなっている。もしかしたらSくんは誰かに殺されたのかもしれない。ミチオくんはこの謎を妹のミカとともに調べていく。すると、彼らの目の前に現れたのは蜘蛛に生まれ変わったSくんだった。3人(?)で真相を暴こうと調査するにつれて明らかになる真実は、まさに衝撃。常に奇妙な雰囲気を醸し出すミステリ作品。


感想

この作品は今まで読んだことのないタイプのミステリだった。向日葵、首吊り、性癖などいくつものリアリスティックな要素がありいかにもなミステリ感を覚える序盤だが、途中から「生まれ変わり」という非現実的な、SF的な要素が出てきていつしか物語において中心となる。
「ああ、そういうタイプの作品なのね」とまでしか考えていなかったが、物語が終盤に近づくにつれて「もしかしたら今までの一連のお話はこういうことなのかもしれない」と、それまでの解釈を改めなければならないと感じた。ここで、今僕は「なのかもしれない」という書き方をした。これには訳がある。この作品でははっきりとした結論が書かれていない。この作品に対する理解は人によって変わるのではないかと思う。しかし、読了し、物語について自分なりの理解が得られたのならそれはもれなく正解なのだろう。あえて解釈の幅を広げるような終わり方をしたのではないかと感じた。
また、この作品は好き嫌いがはっきりと分かれると思う。ちなみに僕はどちらかといえば苦手な部類だった。ホラー系のミステリ作品だからというのも一つ理由としてあるのだが、先述したとおりSF的要素を巻き込んで記述されているためどこか受け付けないような、何かが引っかかるような感じがする。
とはいえ、ミステリというジャンルの幅を広げられた作品であることは間違いない。是非一度読んでみると良いと思う。

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