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拝啓 F.N.様へ

拝啓 F.N.様へ。
初めまして。こんにちは。ご遺言通り、イニシャルでのご送付差し上げます。
 ある一冊の本をご紹介いたします。よろしければ、最後までお付き合いください。
 
 成田国際空港。私にはまだまだ知らいないことだらけでした。空港という響きだけで、ビジネスマン、観光客、留学生。様々な人たちが行き来する場所だと思っていました。          
 今まで普通の日常に慣れすぎていました。空港は全世界への玄関口です。パスポート1つで何処の国へも訪れることができます。それは、観光だけでなく、ビジネスや留学様々です。
 
 そして、「国際人道支援」 への玄関口でもあるのです。国際人道支援とは、紛争や自然災害などで、助けを必要としている方の所へ行き、限られた設備で助けを必要としている方に最善を尽くすことです。
本書は、国境なき医師団(通称MSF) の看護師さんの現地で最善を尽くしてきたリアルなドキュメンタリーです。

 私は本書を読む前、国際人道支援の名目があれば、紛争地までの到着は全ての人達が協力的だと思っていました。
 しかし、実は全然違っていたのです。中には協力的な国もある様ですが、混乱を極める紛争地では国境を越えることができずに被災者が命を落とすことがあるのです。
 
 私が思っていた国際人道支援は、敵味方関係なく、傷ついた民間人や兵士がいれば全員が協力し合って一つの命を救うのだと思っていました。
 本書は私のこの生ぬるい考えが違うということをリアルな言葉で教えてくれます。一枚一枚ページをめくるたびに、紛争地での現実を分かりやすい表現で伝えてくれます。

 読み続けて行くと、私達が、今すべきことは何があるのか?という問いが産まれてきます。
 私が、現地に行ったらということではなく、今、日常を生きている上で、自分がやり残したことが無いか改めて教えてもらえます。
 
 勉強ができる幸せ。読書ができる幸せ。日本に生まれてきて色々な当たり前の幸せの感覚が鈍っていることに気がつきます。日常を想像だけで、生きているには、もったいない気がしてくる。検索だけで世の中を分かったつもりでは、早すぎる。自分が本当にやりたいこと、学びたいことを実際に行動に移したか?そんなことを問いかけてくる1冊です。

 著者の看護師さんは、日本の看護専門学校を卒業後、数年後にオーストラリアに渡り、帰国しMSFへ参加します。著者の心境がありありと表現されています。
 住み心地の良かった安定した暮らしでのオーストラリアでの7年間。私ならそのまま永住してしまいそうですが、著者は冷静に自分の本当の目的を再確認し、日本へ帰国します。その決断はとてもとても怖い決断だったのだろうと文章から伝わってきます。

 MSFへ参加後、シリア、南スーダンなど多くの紛争地、紛争地へ赴きます。私が特に印象に残った章は初めてシリアへの派遣が決まった章です。
2012年シリアでは日本人ジャーナリスト山本美香さんがシリアで殺害される報道が一斉になされました。
 
 そうなのです。この状況は「戦争」 なのです。この状況に於いても著者はためらうことなくシリア行きを承諾します。日本にいる限り「戦争」 は画面の向こうの世界の話が大半です。しかし、著者はその画面の向こうへ行くのです。自分のことを必要とされている人を救うために。
 
 また、本書では数多くの困難を経験で乗り越えてきた内容が記載されています。庭での医療活動。MSF施設への空爆。これらすべてが同じ地球で起きている現実なのです。

 そして、これらの様な現実でも、新しく産まれてくる命もあります。水も食料も十分ではないのに産まれてくる命。この産まれて来た命が次の世代への希望になるのではと思いました。
 
 現時刻においても、世界中では住む家がなく途方に暮れている人達、十分な医療処置を受けれずに我慢をしている人達がいます。
本書を読み終えた後、自分が本当にしたいことを再確認する気持ちが産まれました。せっかく日本に生まれたのに、自分自身の甘えで諦めてしまったことや、一度でいいからやってみたいこと。心境が変化しました。
まさか、自分が亡くなるまでにしたい10のことを書くとは夢にも思いませんでした。
 
 そして、自分がボランティアに参加をするとは。

 私達は本当に恵まれた日本に生まれています。道を歩いていて、空爆の恐れもありません。私達が本当にするべきことはなんなのか?と言う問いを本書は冷静に伝えてくれます。

 本書内で語られる、著書の感じる悲しみや差別。世界には私が知らないことばかりです。特にパレスチナ/ガザ地区に関して複雑すぎて何度も読み返しました。また、自分がどれだけ、知識に乏しいか思い知らされました。まだまだ、未熟ですがこれからも、できる限り、自分の知らない知識を勉強して行きたいと思います。

 私が読んだ本の中で本書の様に紛争地を看護師さん視点から描かれた本はありませんでした。
 
 そして、何よりも、専門用語がなく、やさしい言葉を選んで頂いており、とても読みやすく理解が深まる一冊です。

 そして、最後にある人にお伝えしたいことがあります。

拝啓 F.N.(フローレンス・ナイチンゲール)様へ。
 こんにちは。あなたの意思は数百年経った今でも引き継がれています。
私も、あなたの意思の手助けができる様に「国境なき医師団へ参加する」ことを目標として、日々勉強をしています。
あなたの移した行動には感謝という言葉しかありません。本当にありがとうございました。

                               敬具
追伸
    あなたの言葉がいつも胸の中にあります。
 「あなた方は進歩し続けない限りは退歩しているのことになるのです。
  目標を高く掲げなさい」

最後までお読み頂きありがとうございました。

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