バレンタインデー@桃萌編

※登場人物※
『桃萌(もも・娘ねこ)』

バレンタインデーとか特に関係なく攻める妹娘ねこ(自称)
悪巧みに母どころか父も両親も加担している事が発覚

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「ハッピーバレンタイーン♪」

バン! と擬音が付きそうな勢いで部屋のドアが開く。
そして入ってきたのは妹(自称)の桃萌だ。
ま、こんな事をするのは桃萌しかいないんだけど……。

「何度言ってもわかってもらえないけど、ノックはしてね?」
「時々してるよ?」
「そうだね……できれば毎回してほしいとお兄ちゃんは思うんだ」
「にゃぅぁん♪ お兄ちゃんのお願いじゃ仕方ないなぁ、きをつけるね♪」

可愛く舌をぺろっとだして謝っているが、気をつけたことなど無い。

「何か用かな桃萌……って、ああ、なるほど」
「えへへ、さすがお兄ちゃん、察しがいいなぁ♪」
「新しいパジャマ似合ってるよ」
「ぅにゃっ!?」

みみとしっぽがぴょこっと立ち、顔がボッと赤くなる。

「お、ぉ、お兄ちゃん! ふいうちぃ! ふいうちきんしぃ!」
「えぇ……せっかく褒めたのに」
「嬉しいけど! 嬉しいけどぉ! もぉもぉ!」
「それで? バレンタインとか言ってたけど……」
「にゃぁん、お兄ちゃん、実は下着も新しいんだよ?
 見る? むしろ脱がしてみる?」
「あ、なんか急に眠くなってきた……」
「えへへ、パジャマも下着も大事だけど……
 バレンタインデーだよ! お兄ちゃん。
 チョコレートだよーー手作りチョコレートだよ」

そう言って、お皿に置いたチョコレートを見せてくる。
しかし……

「昼間に貰った、よね?」
「ふふん♪ バレンタインデーにいっかいしか
 チョコをあげちゃダメなんてルールないもん!」
「……桃萌が言うとそうなのかとか思っちゃうな……」
「にゃうん♪」

嬉しそうにしながらベッドの方へ歩いていく。
座るのかと思いきや

「お兄ちゃん、はやくはやくこっちきて!」

そう言いながらみみをぴょこぴょこさせながら呼ぶ。

「えぇ……」
「お兄ちゃん! なんで嫌そうなの!?」
「だってさ……まさかとは思うけど……その……
 いかがわしい食べさせ方をさせるわけじゃないよね……
 そんな事したらお兄ちゃん家出するよ?」
「にゃん♪ お兄ちゃんのエッチ!
 桃萌になにをするつもりなの? むしろなにかして?
 脱げばいいの?」
「……わかったから、すぐに脱ぐ脱ぐいわないの
 なんだか妹として本当に心配になってくるよ」

言われた通りベッドに座ると、当たり前のように膝の上に座ってきた。

「えへへ、おにいちゃぁん」
「ところで妹よ……向きがおかしくないかい?」
「そっかな? こっちのほうがお兄ちゃんと話しやすいし♪」

膝の上に乗るのはまぁそうそう珍しいことでは無いけど、
この向きはなかなか記憶がない。
膝の上というよりは膝にまたがって顔を見合わせる感じになっている。

「まぁまぁお兄ちゃん♪ はい、チョコレート。 あーんして♪」
「このままの体勢で食べるの?」
「妹はお兄ちゃんのお膝に乗る権利があるのです。
 法律でも決まってるよ」
「知らない間に随分妹に肩入れする国になったなぁ……」
「早く食べないと溶けちゃうよぉ。
 ……溶けたら指についたチョコも舐めてもらえばいいからそれはそれで
 ……にゃへへ」
「いただきます」

ん……これ?

「桃萌、このチョコレート」
「えへへ、気がついた? お母さんとお父さんに手伝ってもらったんだよ。
 こないだお兄ちゃん美味しいって言ってたから」

父上が買ってきた洋酒入りのチョコレートをパクパクと食べていた。

「どう? 美味しい? 桃萌のオリジナルアレンジだよ」
「ああ、美味しいよ」
「えへへ、やったぁ♪ こっちはどうかな?
 少し違う味なんだよ? はい、どうぞどうぞ~~」
「まてまて、もうちょっ、むっ」

次のチョコレートを口に突っ込まれた。

「どうかなどうかな?」

確かにひとつめより甘い感じがするが……

「あ、れ?」
「お、お兄ちゃん?」

顔が熱くなってきた……もしかしてこれは……。

「……おにいちゃん? だいじょうぶ?」

いつの間にか首に腕を回していた桃萌が耳元で聞いてくる。

「桃萌……こ、このチョコレート……」
「お父さんはね、さんこめまで持つかな?
 って言ってたけど……にこめだったね」

はっきりわかるくらい顔も耳も体も熱い。
桃萌声が聞こえるけど何となくぼやけて聞こえる。

「桃萌、ごめんちょっと、降りてくれるか?」
「や」
「……桃萌?」
「や」
「無理やり降ろすよ……?」
「お兄ちゃんはそんな事しないもん~~
 酔っぱらって力加減がわからないような今は、ぜったい」
「……やっぱり」
「お父さんとお酒の順番や種類を相談して、
 お母さんになるべくアルコールが飛ばないように工夫してもらって。
 お父さんはよんこめで寝ちゃったけど」
「……」
「はい、お兄ちゃん、ト~~ン♪」

口からの効果音と一緒に軽く押される。
体に力が入らないのと、
桃萌が膝に乗っているおかげでそのままベッドに仰向けに倒れる。

「お兄ちゃん、今日はバレンタインデーなんだよ?
 か弱い女の子が想いを伝える大事な日。
 えっとね、お兄ちゃん、大好きです」

そう言いながら桃萌はパジャマの紐を解いている。
……しまった、脱ぎやすさ重視……!?

「ま、待ちなさい、桃萌……」
「なに? お兄ちゃん」
「その、なんだ……こんなお酒に酔った状態じゃ嫌だよ。
 勢いみたいじゃないか……な?
 ちゃんと、桃萌の事を大事にしたいよ」
「お兄ちゃん……にゃぅ、えへへ、ありがと♪」
「桃萌……」
「でも今日はバレンタインデーだから、女の子からの日なの。
 お酒に酔っていようが、意識が朦朧としていようが……
 既成事実作ってからゆっくり考えよ? お兄ちゃん……
 それに、何度もすればいいし」

誰か、助けてください……。
部屋のドアの隙間から見ている母上……あなたの息子のピンチですよ。
あ、ドア閉めて行かないで……。
父上……は寝ているのか。

「お兄ちゃん……」

妹に馬乗りされている体勢で逃げることは出来ない。
しかし……だ。

「桃萌……」

桃萌の顔がだんだん近づいてくる。
そして……

「桃萌、お前もひとつ食べてみな?」

そう言いながら、こっそりと手に持っていたチョコを桃萌の口に入れる

「ふっ、にゃぁっ!? むぐっ! おにいちゃ……ん?」
「お。美味しいな、桃萌のチョコ」

「……ふにゃぅ……」

あの時食べていたチョコはアルコール度数はほとんど無かった。
でもそのチョコを少しかじっただけで酔っていた桃萌なら……

すぐに目をトロンとさせて、みみはへにょりと垂れ下がって

「おにいちゃん……ひどいぉ……」
「こうするしか、なかったんだ……
 もも、ほらせめてもの情けだ、こっちにおいで?」

フラフラだ。
倒れ込んできた桃萌を受け止めてそっとベッドに寝かせる。
添い寝しているような感じに。

「おにいちゃぁん、えへへ、すりすりぃ……えへへ、にゃふ」

もぞもぞと桃萌がくっついてくる。

「よしよし、桃萌、チョコレートありがとうな。
 いい子だ……よしよし」
「にゃぁん♪ おにいちゃんのなでなでぇ~~♪ えへへ~~」

気持ちよさそうに頭を撫でられ、そして

「ん……ぅ。 すぅ……ん、すぅ………」

寝てしまった。

「はぁ~~~~~~」

大きく息を吐き、なんとかなった事に安堵してから
ベッドの上の毛布を引き寄せて桃萌にかける。

「ぉにぃちゃ……ん、にゃぁん♪ すぅ……えへへ、だいすき~~♪」
「はいはい、お兄ちゃんも好きだよーー」
「にゃへへ……しってるにゃぁん♪ ん、すぅ……ん……」

夢の世界へ入っていった妹(自称)を見ながら自分も意識を手放した。

【おしまい】

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