れあのお留守番事情

※登場人物※
『れあ(娘いぬ)』

お留守番中に何かに目覚めてしまった……かもしれない
慣れる為にごしゅじんのシャツを着る回数を多くするコトにする
『ごしゅじん』
朝から用事でお出かけ中

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「わぁふ……」

目が覚めたのでもぞもぞとごしゅじんを探す。
いつもならごしゅじんのベッドに潜り込んでくっついて寝ているので
目をつぶっていてもすぐに見つかるのだけど……?

「ぅわぅ……ん……」

ベッドのどこに移動してもごしゅじんがいない。
もう起きてベッドから出てしまっているのかもしれない。

「ぉしゅじぃ~~ごしゅじぃん~~? わぅぅ~~」

遂にはベッドの上にぺたりと座って周囲を見渡す。
ふわふわした意識の中でごしゅじんの匂いを探す。

「わぁぁぅん~~くぅ~~ん……ごしゅじ~~ん」

その呼びかけに返事はなかった。

「ごしゅじん……?」

だんだんと寝ぼけた頭が整ってきた。

「ん~~んっ。 ぁう……」

大きく伸びをして、ひと息。

「わぁぅ……そっかぁ……
 今日はごしゅじん、朝から夜までおでかけなんだっけ……」

パタリともう一度ベッドに倒れると、
自分の枕の横にあるごしゅじんの枕を見つける。

「……わぅ」

毛布を頭から被り、素早くごしゅじんの枕を毛布に引きずり込む。
娘いぬ(おおかみ)に狙われた枕はあっけなく捕らえられる。

「えへへ……ぁわう」

ぎゅうぎゅうと両手両足で枕を抱え込む。

(……ごしゅじん……ごしゅじん……)

甘噛みなら大丈夫とか
ごしゅじんが寝ている時にもしているから大丈夫と言い訳しながら
もぞもぞぐいぐいと枕を思う存分抱きかかえてからベッドから出る。

「わぁふ……ごしゅじん成分を少し補給できたよ」

そういえば……お店も休みにしたから
ゆっくりしていても良いと言ってくれたけど

「お洗濯して、お掃除して……お店のお掃除もして……」

グッと両手を握って力を入れる

「ごしゅじんに沢山褒めてもらうんだもん!」

そのまま両腕を万歳するように突き上げる

「そしたら……えへへ」

『れあは凄いな、オレにれあが一生必要だ』
『うん! ボク、ごしゅじんのお嫁さんになるね!』

「わふぅ、ごしゅじんてば、もう!もうっ!大好き!」

思わずぴょんぴょん飛び跳ねてしまった
いけないいけない……そうなるにはまず朝ごはんを食べなくちゃ。

冷蔵庫の中にある昨日の夜から浸しておいた
フレンチトーストのボウルを取り出す。
正確にはごしゅじんがボク用に作ってくれた。
かわりにボクが作ったごしゅじんのフレンチトーストは無くなっているので
出かける前に食べてくれたみたいだ。

「わふ、美味しかったかな?」

そんな事を思っていると、取り出したボウルの後ろに
赤い色の物が入った小瓶を見つける。
こんなのあったかな?? と、手を伸ばす
でも手に取る前に何かわかってしまった。

甘い……いちごの香り

「いちごジャム!」

瓶を手に取り、蓋代わりのラップを取って
行儀が悪いと思いつつも、この誘惑には勝てないよぉ、うん、むり~
指をちょんとつけて

「ふぁぁ……ぁうぅ、わふぅ……」

口の中に広がるいちごと……甘ったるい、甘々すぎてお店には出せない味。
ボク専用のいちごジャムの味。
夜は無かったので、朝出かける前にボクのためだけに作ってくれたジャム

「いただきます、ごしゅじん♪」

たっぷり浸されてプリンのようなフレンチトーストに
ごしゅじんのいちごジャムをたっぷりのせた朝食
お留守番しているボクが寂しく無いようにって、
ごしゅじんが言ってくれている気がするよ。

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「わぅ……どーしよー」
朝食の片付けも終わり、パジャマから部屋着に着替えて準備万端、
最初のお洗濯までは順調だったのだけど……

今抱えているのは、ごじゅじんがてんちょの時に使っているコックコート。
いつもはクリーニングに出しているのだけど
今日はボクが洗おうとクリーニング用のかごから持ってきたところだ。

ところが……

「スンスン……ごしゅじんの匂いと甘い香りがする……」

コートを抱えたままへたりこんでいる。

「へぅ……これはボクには洗濯できないよぉ……むりだよぉ……へぅぅ」

どうしても洗濯機に入れる前に手が止まって、また抱え込んでしまう。
抱え込んだ腕が動かない……足が力が入らない……
コレハオソラクホンノウガキョシヒテイル――
コノママジャダメ――

「…………ぁぅ」

きっと抱えているだけだからダメなんだ――
もっと満足すれば足も動くようになるんだ――

頭の中がぐるぐるしてどうして良いかわからなくなったので

とりあえず

部屋着を脱いで
下着まで脱いで

コートを着てみた
…………
……

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夜ごしゅじんにたくさん褒めてもらった。
家事だけでなく、コックコートまでピカピカに洗ってくれたこと。
枕カバーや枕も干してフカフカにしておいたこと。

「休んでいても良いって言ったのに、れあはがんばり屋さんだな」

「うう、ごしゅじん……れあ、がんばってない……ごめんね」

「いや、なんで謝るの?」

「えへへ……れあね……ごしゅじんの為にもっと練習するね」

「?」

れあは反省したんだよ。
だって気がついたときには。

コートを着たれあがごしゅじんの枕を蹂躙してしまっていたんだよ。
中身はかたより……枕カバーは濡れていて……ひどい状態だったんだよ。

れあ、もっともっとごしゅじんへの想いをコントロール出来ないと……

いつかね、

れあ……ごしゅじんを…オソッチャイソウダヨ♪

【おしまい】

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