桜と楓をあわせたら

※登場人物※
『楓(かえで・娘ねこ)』

口数少ないクール?系娘ねこ さくらがとても大切、でもからかうのも好き
さくらよりも少し小柄で薄い紅色の髪を短いツインテールにしている
『さくら(娘ねこ)』
相談と称してご主人との惚気話を親友にするが、本人はそう思っていない
困っている相談をすると惚気話になってしまうだけ

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「それでね、楓ちゃん……」

テーブルを挟んで向かい側で少し興奮気味に身を乗り出して話しをしている

「にゃぁぁぁ~~ん♪ どーしよー」

時折顔を手で覆ってみたり、ふわふわできれいな桃色の髪の毛を揺らして
少しオーバー気味に照れる娘ねこ。

「…………。
 楓ちゃん、聞いてる? ねぇ、聞いてくれてる?」

相談といういつもの惚気話をボーッとしながら聞いていたら
拗ねるような顔で目の前に迫ってきた。

「……うん、さくちゃんは可愛いよ」

「にゃぅっ!?」

大切な大切な可愛い娘ねこの親友。
私を外に連れ出してくれた娘ねこ。

「……ん? さくちゃんは可愛いよっていつも思ってる。
 食べちゃいたいくらい」

「もぉ……また楓ちゃんはそうやってからかうような事をゆう……」

頬をぷくっと膨らませる仕草をする。
それを見るともっとこんな表情を見たいと思ってしまう。

「ん……からかってないよ。
 娘ねこどうしでも、ちゃんと気持ちよくなれると思う。
 それに、さくちゃんとなら……いいよ?」

うそじゃない。

「わわわっ! もーー!! 楓ちゃんのいじわるーー! えっちー!」

「……えっちって、何を考えたの……?」

「にゃっ!?」

「……ん、そうゆうこと考えるさくちゃんのほうが……ぽっ」

「ぅぅ……またそゆうことゆう……もぅ」

私と違ってクルクルと表情を変えるのを見ているだけでも幸せ。
でもそろそろちゃんと聞いてあげないと……んーたしか……。

「楓ちゃぁん……ちゃんと聞いてよぉ~~」

「ん。 それで、海に行くんだっけ? さくちゃん」

「そうなの! それでね……えっと……にゃぅ……」

「……えっちな水着が着たいけど自信がないの?
 さくちゃんならどんな水着でも似合うと思うよ……?」

「着ないよ!?」

「そう? でも、さくちゃん無理して水着なくてもいいかも」

「にゃんでぇ……?」

「どうせ後で脱ぐんだから、着ていなくても……え?」

「ぬーがーなーいーもんー! 楓ちゃんのえっちぃ! もーー!」

「脱がないの?」

「脱がないもんー」

「残念……。
 じゃぁ、ちょっと脱いで見せちゃったりするのは?」

「にゃぅ……。
 ねぇ楓ちゃん……そゆうの、ご主人さま、喜ぶかなぁ……」

「ん。 思わず手を出しちゃうかも」

「にゃぁぁん♪ ご主人さまぁ~ここじゃいにゃぁん♪」

分かりやすい想像をしながら、真っ赤な顔を手で覆い頭を横に振っている。
さくちゃんなら何を着ても似合うだろけど、
あまり露出の多いのはダメ……さくちゃんを変な男の目に晒すのはやだ。
でも、可愛い水着は着て欲しい。

「それでね、楓ちゃん」

「ん……」

「水着、買いに行きたいな……って」

「いいよ?」

「ふぇ?」

「ん?」

「楓ちゃん……いい、の?」

「ん……なんで?」

「ううん、楓ちゃん、嫌がるかな……って」

「……そう?」

「お買い物行くと、人も沢山いるし、凄く騒がしいし……
 楓ちゃん、そゆうの苦手だし……」

「ん、大丈夫」

「そっか! えへへ、嬉しっ! 楓ちゃん大好き!」

「ん……しってる。
 でもさくちゃんはご主人と行かなくていいの?」

「あ、えへへ……ご主人さまには海で見せて驚いてもらいたいなって

「ん……。
 わかった。
 さくちゃんのご主人がさくちゃんにむしゃぶりつきたくなる水着を選ぶ。
 任せて」

「にゃぁっ! 楓ちゃん!
 そういうのはダメじゃないけど、ゆうのはダメぇ!」

顔を赤くしながらまた頬を膨らませている。
私ひとりじゃ絶対に行かない場所だけど、さくちゃんとなら行きたい。
一緒に歩いたり遊んだりしたい。

「ん、冗談。 さくちゃんに似合う水着をを選ぶ」

そう言うと正面のソファから私の隣にサッと移動してきて
抱きついてきた。

「えへへへ……楓ちゃんありがと、にゃふふん♪」

密着しながら頬ずりしてくるさくちゃん。
あたたかいしすべすべだし……気持ちいい。

「ん、まかせて」

「うん! 楓ちゃんとお買い物楽しみーー!」

「ん……」

「……ね?」

少しすると、はしゃいでギュウギュウしていた腕の動いが止まる。

「……ねね……あのね、楓ちゃん」

「ん?」

「えっと、その……楓ちゃんも水着、買おう?」

「……え?」

「楓ちゃんも……いっしょに行こう?」

「……」

「だめぇ……かな」

「……ご主人とふたりきりで行くんじゃないの?」

「う、うん……えっと……」

急に歯切れが悪くなった。
こういう時は大体何かを隠している……。
さくちゃんは隠し事がへたっぴ。

「…………」

「ね、いっしょにいこ? だめ……?」

そんな顔で、そんな声で言われて断れるわけがない。

「……最初から、そのつもりだった?」

「にゃぅ……」

「どうして? ご主人とふたりで遊びに行きたいんじゃないの?」

「それは……それはあるけど……。
 さくらは、楓ちゃんとも沢山遊びに行きたい……の。
 いっぱいお出かけしたい」

しゅんとみみをうなだれさせながらそんな事を言う。
私はあまり外に出るのが好きじゃなかった。

「ん……ありがと」

「……ぁ……あの、いっしょにいってくれるってコトだよね?」

「ん、いく」

さくちゃんに初めて会ったのは、
さくちゃんのご主人が私のご主人を誘って出かけた時。
ひと目見てなんて可愛い娘ねこなんだろうと思った。

「やったぁ♪
 えへへ、楓ちゃんと~~うみ~うみ~」

それから、一緒に遊んだり、お喋りしたり、外に遊びに行くことも増えた。

「……でも、ちょっと心配」

「え、楓ちゃん? 心配って……?」

「ん……水着のさくちゃんを見たら、ご主人が誘惑されちゃうかも……」

「にゃぁぁ! なんでー! そんなコトないもん!」

「……おっぱいおおきいし」

「にゃぁう!? そ、そんなコトゆうならぁ……
 ご主人さまが楓ちゃんのコト好きになっちゃったらぁー
 さくら困るなぁー」

口を尖らせて、言い返してやった!
見たいな顔をする。
また可愛い表情をみたくなる。

「……ん。 ふたりを相手にするのは初めてだけど……」

「にゃ?」

「うん、大丈夫、がんばる」

「にゃぁぁぁっ!? なにをがんばるの!?」

「あ、さくちゃんは加わっちゃダメ、ぜったい
 私がされるのはいいけど、さくちゃんがされちゃうのはダメ、
 ゆるさない」

「楓ちゃぁん! もぉぉぉだめぇぇ――!」

緩んでいた腕に力が入り、またギュッと締めつけてくる。

「……なんちゃって」

「え? 楓ちゃん、いま……」

初めてのリアクションに大切な大切な可愛い娘ねこの親友は、
大きな目をもっと大きく丸くしていた。

【おしまい】


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