バレンタインデー@さくら編

※登場人物※
『さくら(娘ねこ)』

かわいらしくしおらしいだけじゃなくて結構やるときはやる
表立っていないが何度かご主人さまを襲っている

---------------------------------------

それは夕飯の後の事だった。

「ご主人さま、ご主人さま、デザート食べませんか?」

さくらは声をはずませながら
チョコレートの並んだお皿と紅茶を運んできた。

「えへへ、今年のチョコレートは頑張ったんですよ?」

隣にピッタリとくっついて座り、こちらを覗き込んでくる。

「自信作って事かな。 さくらはお菓子作るの上手くなったからね」
「お料理だってご主人さまより上手くなっちゃいますよ」
「すっかり作る回数も減ったなぁ」

そう言いながらさくらの頭を撫でると
みみをふにゃりとさせて気持ちよさそうにしている。

「それで、このチョコは?」
「あ、えっとですね……」
「普通のチョコなの?」
「にゃっ! ご主人さまひどいーー! なんですかぁその言い方ーー!
「いやいや、毎年毎年手を変え品を変えてくるからつい」

チョコは美味しいのに……。

「もうっ、もうっ! お酒入りのチョコレートですよ!」
「お酒?」
「はい。 ウイスキーの入ったチョコレートを
 ご主人さまが美味しいって食べていたので、
 やよいちゃんからもらった梅酒とかをいれてつくったのですよ」
「ああ、そういえば」

何かのお土産でもらって食べている時にそんなことを言ったかな。
さくらはひとつ食べただけでフニャッと寝てしまった気がするけど。

「ご主人さまはあの梅酒好きなので、調べて作ってみたのですよ」
「へーそれは凄い」
「にゃぁん♪ ご主人さま、ご主人さま、食べて食べて?」
「じゃぁ……って、さくらは食べないのかい?」
「むぅ……ご主人さま?
 このチョコレートはなんのチョコレート、なのです?」

バレンタインデーのチョコレートってことか。

「そうだね、じゃあもらおうかな」
「にゃぁん♪」

これ以上は言うまいとチョコをひとつ手にとって食べてみる。
少しだけ苦味のあるビターな感じだけど……
口の中で割ってみると、中から甘い梅酒が出てくる。
なるほど……一緒になるとちょうどよい。

「どう、ですか? ご主人さま?」
「うん、美味しいよ、さくら。 凄く美味しい」
「えへへ♪」

破顔させながらギュッと握った手を胸元にあててホッとしている。
その姿を見て思わず頭を抱き寄せてしまう。

「にゃっ……にゃぅ……えへへ、ご主人さまぁ嬉しいです」

嬉しそうに甘える声を出しながらさくらも寄り添ってくる。

「本当に美味しいよ。 何個でも食べられそうだ」

そう言いながら既に3個目を食べていた。

「にゃぁん……うれしっ♪」

ごろごろと甘えるさくらはいつの間にか隣から膝の上に乗っていた。

「さくら?」
「ご主人さま……? どうしたのです……か?」

上目遣いで見上げてくる。
薄っすらと頬を染めて。

「美味しいけど……お酒が強いのかな?
 梅酒はそんなにだし、チョコにも入っているし……?」

さくらは大きな瞳でじっと見つめながら顔を近づける。

「ごしゅじん、さま……」

吐息のようなそのひとことでビクッと体が震える。
さくらの息をする音だけでクラクラする。

「さく……ら?」
「…………」
「……」
「…………」

何も言わず。
何かを期待するような静かな吐息だけ。
そんなさくらを見ていると妙に鼓動が早くなってくる。

「ちょっと、酔ったみたい……だよ、さくら、外の空気を吸ってくる」

そう言うとさくらをソファーに移動させようと……
した手を素早くつかみ、さくらが自分の胸に当てる。
柔らかい感触が妙に敏感になった手先から伝わってくる。

「ご主人さま♪ 逃げちゃだめ、なのですよ?」
「さく……ら?」
「にゃぁ……ん♪ 体がポカポカしてこないですか?
 ……さくらのお胸柔らかいなってドキドキしないですか?」
「や、やめ……」
「ごしゅじん、さま……んっ」

さくらは首元に軽く口付けしただけだろう……だが妙に感触が残っている。
そしていちいち声が艶かしくみみにのこる、これは?

「えへへ、どう……ですか? 体が熱くなって……きませんか……?」
「さく……ら、何を……いれた」
「梅酒とか……ですよ? ちゃんとそうゆったのですよ?」
「!?」
「ご主人がちょっとだけ元気になったり……
 こう……にゃん♪ したりするものも入っているのですよ」
「どこからそんな……あっ! まさかあれと……作ったのかっ!」
「はい♪ かえでちゃんです」
「またあのいたずら娘ねこ……か……」
「さくらのお友達を悪く言っちゃ、や、なのですよ」
「……油断した……もう来年からは絶対食べ」

そこまで言ったところで声がつまる。
一瞬さくらのシュンとした表情を見てしまった。

「スキありなのですよ?」

そう言ってさくらはソファーに押し倒してきた。
時折見せる猫のような素早い動きで。

しかし、チョコの正体に気づくのが遅かった……。
今の状態はヤバい。 ヤバい。
何かが外れそうだ……。

「もういっこ、食べましょ? ご主人さま♪」

吐息のような声で囁くように……。
とても嬉しそうな笑顔でチョコを手に持つ。

「さくら……やめるんだ、そんな事……っ」
「ご主人さま?
 さくらも思うのですよ……こんなことまでしてご主人さまと……」
「さくら……」

そうだ、さくらはそんな事無理やりできるわけがない。

「だからせめて……ご主人さまに襲われたいなって」
「あれ!? そんな流れだった!?」
「えへへ♪」
「っ……」
「はい♪ あーん、なのですよ? ご主人さま♪」

そう言いながらさくらはチョコを口に押し込んできた。

「にゃう……。ご主人さま(てごわいです)まだ足りないのですか?
 もいっこ、たべましょ? ご主人さま愛してるのですよ♪」

【おしまい】

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?