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フライ・バイ・ワイヤ。

これは近未来を舞台にしたSF青春本格ミステリ。宮野隆也のクラスに転入してきたのは病気で通学出来ない少女が遠隔操作する二足歩行ロボットだった。生身の人間と同じように振る舞うロボットの姿に戸惑いながらも心を通わせていくクラスメイト達。やがて定期考査の結果が発表されて…という話。

最初、誰の何を読んでいるのか…って気もしたけど、地味なディテールのリアルさが石持浅海らしくて良かった。デジタル化が進んでも一部にアナログが残っていたり、休み時間や放課後の他愛もない雑談やキャッチボールや二人乗りといった色褪せない青春の瑞々しさなど。

そんな恋愛や学業や将来に迷うガッツリなジュブナイルかと思いきや、ロボットはなぜ転校してきたのか?どこからどうやって操作しているのか?本当に遠隔操作している少女はいるのか?アシモフアプリ(人間に危害を加えられない)が本当にインストールされているのか?その存在に対して各生徒はどんな心境で学生生活を送っていたか?など、次第にSFとミステリの要素が複雑に絡み合っていく。

イロモノかと覚悟してたけど、閉じられた空間や討論などお馴染みの展開が見事にねじ込まれていて思ってたより本格ミステリとして満足感があった。個人的にはもっとミステリに振り切って、巧みなミスリードを走らせて、もう二転三転しても良かったかなと思うけど。あと文庫本のカバーのラノベ感。


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