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能面検事。

晴れて大阪地検の検察事務官になった惣領美晴が配属されたのは、常にポーカーフェイスで表情も感情も表に出さない検事、不破の元だった。ついた渾名が能面検事。
「事務官とはいえ、質問者の顔色を窺い、洞察力と度量を推し量る相手に、感情を徒に表出して務まると思うかね」
「事務官は検事の手足、検事が何を疑い何を調べているのか教えてくれなければ手足だってスムーズに動けません」
やがて二人は世間から注目を集めるストーカー殺人事件を担当する…という話。

富豪刑事みたいな感じで、個性的な探偵役が快刀乱麻な活躍する連作短編集かと思ったら、警察と検察の微妙な関係性にはじまり、検察官と事務官の関係性、組織の面子、確執、信頼など、がっつり社会派テイストな長編小説だった。法廷シーンがクライマックスかと思ったら所轄資料室の証拠紛失事件に発展したり。
著者の「思いもよらぬ方向に広がったストーリーが、割と王道な感じに収束する」感じは賛否は分かれそうだけど好き。

登場人物の深堀りや伏線やミスリードなどもっとエンタメ要素に重心置いても良さそうだけど、おざなり感と全体的なドライな印象が良かった。検事の冷徹な感じや忖度しない姿勢は能面の二文字だけでは捉えきれてない気がする。

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