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<定植の作法>


<定植の作法>

いよいよ定植のタイミングが近づいてきたとしても、焦りは禁物だ。野良仕事には季節のタイミングがあるように、野菜たちもまた最適なタイミングで畑に移してあげたい。

天気予報を細かくチェックしながら、1週間くらい前から温床のビニールを外して外気にしっかり触れさせておこう。また夏野菜は低温障害に合わないように最低気温に配慮したい。イネ科ウリ科は最低気温が10度以上、ナス科は15度以上が理想的だ。もちろん地温にも配慮したい。

定植前には底面給水を最低でも2~3時間ほど行う。あまり長く水につけておくと過水分となり茎が割れてしまい、虫害に遭いやすくなる。底面給水用の水には数%のお酢を入れることで活着を早めることが期待できる。これは植物が根を伸ばすときに自ら根酸を出してから伸びる性質があり、それを利用する。

暑さが好きな野菜に関しては暑くなる日の午前中に、暑さが苦手な野菜は夕方もしくは曇りの日に行う。週間の天気予報を見て計画を立てることで、定植が遅くなりすぎないように配慮したい。

天地返しや元肥施肥をした畝では移植ゴテでモグラの穴が空いていないかをチェックし、ある場合はしっかり埋めておく。定植のための穴を開けてポットをつけた状態でしっかり収まるか確認すること。

定植の前に自立根圏内をノコギリ鎌や移植ゴテでしっかり中耕する。これはそこに生えていた雑草の命を終わらせてあげて大地に還してあげるためだ。雑草は最強の先輩(自生種)なので少しばかり大人しくしてもらわないと、後輩(野菜)が育つチャンスを逃してしまう。

定植は丁寧かつ素早く行いたい。なぜなら本来、根は外気に触れることなく伸びるからだ。ポットから外したら素早く植えるが、そのときに土がほぐれてしまわないように気をつけたい。特にウリ科など移植に弱い直根性の野菜は。またナス科のように移植に強い側根性の野菜は根が老化しているようなら、根をほぐすものありだ。定植前に発芽からの日数と根の様子を確認して、根ほぐしが必要か判断する。苗が元気で、根が白ければする必要はない。根ほぐしは野菜の根を育苗用土ごとほぐしていくように、3分の1だけ残して根を切っていく。これは再生術であるため、元気で若い根には必要ない。ほぐした根と土は定植穴の中に入れること。直根性植物、つまり移植に弱いウリ科、イネ科、マメ科、シソ科、オクラなどには決して行わないように。

行灯や支柱などは定植時に一緒に行うか、翌日など近いうちに済ませておきたい。野菜は畑という新しいステージに移されたことで、今まで感じていなかった温度と風を受けることになる。本来植物が移動(定植)されることはないように、野菜にとってはストレスフルな時間を過ごす。そのためストレスをできるだけ取り除くために、行灯や支柱は効果が大きい。ストレスが溜まり弱ると虫害や病気に遭いやすい。

野菜が環境に慣れると、新しい根を伸ばし、新しい茎葉を成長させる。これを活着という。行灯は活着すれば外しても構わないが、外した後にまだ寒さや風が強く吹く場合は続けても構わない。行灯から大きくはみ出すようなら、風通しが悪くなってしまうので外してしまおう。大切なことは野菜の様子と気候を毎日観察し、それに合わせてあげることだ。

定植のやり方にもさまざまな流派があるが基本的に自然農は無肥料で育てるために、根を愛し、大切にすることは同じだ。目に見えないストレスを理解し、それらを排除してあげよう。ひとり立ちするまでの間は目をかけ、手をかけてあげる。


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