「失敗してもいいから」と前に進むこと
今年の箱根駅伝を見てからというもの、なんとなく「嫌われる勇気」ならぬ「失敗する勇気」というものがあるんじゃないかと考えるようになりました。七転び八起きということわざがありますが、転ぶということができないと八回も起き上がることはできません。そこで転ぶ勇気(=失敗する勇気)というものが必要になってきます。
けれども、そんな「失敗する勇気」を持っている人は少ないのではないだろうかと思います。ほとんどの人が失敗から失敗しない方法を学び、また同じ失敗をしないよう努力をするようになるからです。つまりそれだけ失敗をすることが怖いということ。
失敗が続いてしまっては自信をなくしてしまいます。それ以上頑張ることができなくなっていくのです。すると、できないことは最初からやらないようにするなど自分の心を守るために動くようになっていきます。これが「失敗する勇気」をなくしてしまった人の行動パターンの一つだと思うのです。
学生時代の部活動、陸上部で例えるのならひとりだけどんどんタイムが伸びなくなってしまったりなど失敗が続いてしまったとき、もう自分には難しいのかなと私だったら思ってしまうでしょう。「自分には向いていない」という言葉も脳裏にちらつくのではないかと感じます。そのまま部活をやめてしまうかもしれません。
そこから陸上に関すること(トレーナーなど)に活動の場を移す人、全く違う道を選ぶ人、そのまま挫折体験として引きずってしまう人など、いろんな人がいると思います。そして他に私が思いつくパターンは「それを競技としてではなく趣味として続ける人」です。
趣味にすれば上を目指すよりも楽しんでいられることも多いです。競技として接するのならどうしてもタイムなど厳しい現実がつきまとってしまうからです。大会での選考のために限界まで頑張ったりもすることがあるのではないかと思います。けれども、趣味としてなら参加することに意義があると考えることもできるようになります。
ちなみに趣味としてでも本気でタイムなどのことを考えて挑んでいく人もいると思いますが、その場合は今回のテーマと少しずれてしまうので割愛しておきます。
「失敗する勇気」は失敗のリスクが高いほど心の負担が大きくなってしまうのではないかと感じます。競技の場合それまで指導してくれた監督や支えてくれたマネージャー、応援してくれる部活の仲間達。その中には選抜の結果、自分と競争したけど負けてしまって大会に出られなくなったメンバーもいるでしょう。
そして家族など応援してくれる人達。そのたくさんの思いを一身に背負って一人で走ることになります。限りある選手生命に、限られた大会。その中で結果を出さなければ上位の大会に参加することができないのです。
対して趣味で走っている人はそこまで深刻なプレッシャーに打ち勝つ必要がないことが多いのではないかと思います。志した理由は数あれども、自分が「陸上がやりたい」という純粋な思いが大きいのではないでしょうか。それは競技よりもずっと身軽でいて、かつ楽しさを伴っているものだと考えます。好きなことを好きだからとやっている時に人は輝きます。
もちろん競技として陸上をしていて、楽しくてたまらないという気持ちがある人もいると思います。リスクよりもそういった感情を感じる人もたくさんいます。そういう人たちはポジティブな感情を見つけることができているのでしょう。
プレッシャーよりもポジティブな感情に照準を合わせることがうまい人はすごいと思います。そういう人達はきっと失敗することで得る怖さよりも利点の方を見つけることができているのではないでしょうか。
一方で監督やマネージャー、部活のメンバーや家族など普段から応援してくれる人たちからの温かい声に応えようと頑張ることのできる人もいます。誰かの思い、誰かへの思いを力にできる人たちです。応援はプレッシャーにもなりえますが、頑張る上で何よりも大切だという人のほうが多いのではないでしょうか。
これは競技としても趣味としても、同じように持ちうる感情だと思うのです。自分のためにやること。他の人のためにもやっていきたいこと。どちらかのほうが得意な人もいれば、どちらもあったほうがより頑張れるという人もいます。
全てのメンタルづくりをひとりきりでできる人もいるかもしれませんし、誰かと一緒の方がいいという人もいるのでしょう。けれども、結局大切なのは「失敗するかもしれないけど、挑戦しよう」という強い思いです。
きっと多くの人が失敗することは怖いでしょう。そして自分の意志だけで頑張れる人ばかりではありません。けれども「失敗する勇気」になるだけの力を渡してくれる人がどこかにもしいたのなら、一度勇気を失くしてしまったとしてもその人はまた歩き出すことができるかもしれません。
それがたとえ、ずっと前にかけられた温かいことばだったとしても、思い出すたびに力になる人もいるのです。身近で支える人の思いやりはもちろん、遠くからだとしてもかつての励ましが心に響くこともあるでしょう。「失敗する勇気」を得られる理由は本人の強さとは限らず、誰かの優しさのこともあるのだと思っています。
ここまで読んで下さってありがとうございました。
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