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デザイナーがライティングガイドラインを整備した話

こんにちは!デザインチームの新井です。
早いものでスペースマーケットにjoinしてから1年と3ヶ月ほどが過ぎ、一人で任せていただく仕事がかなり増えてきました。もちろん日々反省することも多く勉強は欠かせませんが、毎日充実しています。

以前デザイナー合宿の記事で紹介がありましたが、デザイナーという立場から行った全社向けライティングガイドラインの整備・運用についてお伝えします。

合宿記事はこちら!

ガイドラインの整備に至るきっかけ

実は、ライティングガイドライン自体は以前から存在していました。前任のデザイナーが基本的なルールを制定・スプレッドシートを作成してくれていたのですが、「誰が運用するべきか?」という重要な部分が決まらないまま、うまく運用されていない状態でした。
そんなガイドラインを整備し直し運用していくことの必要性を強く感じたのは、デザインチームが毎週行っている定例会議でサービス内に散在する「表記揺れ」が議題に上がったことがきっかけでした。

例としては

・年月日の表記が2019年7月1日か2019/7/1か決まっていない
・お支払いと決済が混在して使われている
・キャンセル料金・サービス料金など、同じ意味で違う言い回しがある

などが挙げられます。

特に3つ目に関しては少し確認しただけでも該当する箇所が複数あり、これにはかなり危機感を抱きました。

スペースマーケットはサービスの性質上独自の用語が多く、それだけで新規のユーザーには難しく感じられてしまう側面があります。
その上用語があやふやに使われていたとしたら、第一印象で「使ってみたい!」と思ってくれたとしても、テキスト以外でいくら分かりやすいUIを実現したとしても、ユーザーは利用する前に「難しい」「分かりづらい」と離脱してしまうかも知れません。


つまり、ライティングの乱れは単に統一性がなくなるという問題だけではなく、複雑で分かりづらい・統一性を欠いた文章のせいでUXに悪影響を与えてしまうということが考えられます。これは早急に改善しなければいけないと感じました。

ライティングは誰のもの?

そして、以前問題になった「誰が担保するのか」という問題。
知見や職域的にもライティングの専門家がいれば心強かったのですが、残念ながら弊社には該当のポストがありません。

ここには「デザインと切り離すべき」「ライターに任せるべき」など色々な考え方があるとは思うのですが、個人的には「UXに悪影響を与えてしまう」課題の一つなのであれば、改善の一環としてデザイナーが関わっても良いのではないか?という考えに至りました

上記の理由を説明し、「ぜひやりたいです!」とリーダーに相談したところ、快く任せてもらえることになりました(今回に限らず、スペースマーケットは個人に与えられる裁量がかなり大きいので「やりたい!」と手を挙げた業務を実現できることが多く、非常にやりがいを感じています)。

全社を巻き込むという選択

状況を確認してみると、デザインチーム同様どの部署も明確なガイドラインの運用は無い状態でした。

スペースマーケットでは、キャンペーンにまつわる記事等を執筆しているマーケティングチーム、メールマガジンを担当しているビジネスチーム、ヘルプページを整備しているカスタマーサクセスなど、さまざまな部署のさまざまな担当者が日々ライティングに携わっています。

特集もその一つです。

これだけの人数で「スペースマーケット」として文章を発信しているのに統一ルールが無いという状況には驚きましたが、デザインチームだけではなく会社全体の課題であるとこの時強く感じました。

やったこと

まず、ガイドラインを大きく基本ルール・用語集の2つに分類しました。
基本ルール

この基本ルールに関しては以前作成されていたものを活用し、必要な部分は加筆する形をとりました。

・送り仮名の統一
・過度な漢字は使わない
・ラフすぎる語尾はNG

など、語調に関するルールがこれに該当します。細かいですが、言葉一つで印象がかなり変わってしまうため重要です。
また「外部サービスは正式名称を使用する」など、専門用語以外の単語についても記載しています。

今後も全社共通で基本ルールを守り、イメージを損なわない文書を書いていきたいです。


用語集
基本ルールと並行して用語集の整備も行ったのですが、この作業が特に大変でした。

検索画面や特集記事・使い方ガイドからヘルプページまで、ありとあらゆるページを見て回り、定義が必要な用語はないか・そのページでどのような使われ方をしているか調査します。当然普段の業務があるので、毎週曜日と時間を決めて取り組みました。
洗い出しが終わった後は、一つずつその説明をスプレッドシートに書き込んでいきます。

全ページ分書き込みます。


もちろん私の独断で定義は決められないので、デザイナーの先輩に時間をもらい、話し合いながら地道に埋めていったのを覚えています。他部署へ確認・相談することも多くありました。

少しずつ確認を進め、全員が納得できるベースが整い、改善を繰り返していくという前提でまずは完成となりました。少しずつ進めていたためもありますが、この「ベースが整う」までに約3ヶ月ほどかかりました。


ルールの完成・最終チェック

ようやく完成したルールですが、いきなり公開はせず、まず先にカスタマーサクセスヘ共有することにしました。
ユーザーに直接案内する機会が一番多いため、デザインチームで決めたこの内容で問題がないか運用前に確認してもらいたかったからです。

また、カスタマーサクセスは確認と並行してヘルプページのライティングを整えてくれました。

運用方法は相談の上決めましたが、実際のチェックは担当者へ一任しました。その後定期的に進捗確認はしていましたが、「ユーザーが迷わないように」という前提に重点を置くことで、自主的かつ迅速に改修を進める姿には感動しました。

ルールを作成している時は「きちんと運用してもらえるのか?」「形骸化してしまわないか?」という点が一番不安でしたが、このように先に一部のチームにうまく運用してもらうことで成功事例を得られ、改めて「UX改善のため」という前提の大切さを伝えていこうと思いました。

そしてとうとう、全社員へ公開する段階へ。

社員会での発表

繰り返しになりますが、しっかり運用してもらうためには各部署にライティングの重要性を理解してもらうのが最優先です。
これまで相談してきた部署・社員以外へどのように理解を促すべきか考え、社員会のトピックスとしてライティングガイドラインについての発表をさせていただくことにしました。
以下は発表で話した内容の一部です。

後日いただいたフィードバックには「必要だと思っていた」「なぜ必要なのか分かった」という感想があり、改めてこのタイミングで共有することができて良かったと思いました。

運用開始後と今後について


協力体制の実現と効率化
運用開始後は、定期的に他部署の方と相談する機会を作ることを心がけました。今も継続して行うことができており、逆に他部署の方からライティングに関する相談を持ちかけてくれるまでになりました。
合宿の記事でも「越境」という言葉がありましたが、チームの垣根を越えて協力体制を作ることができたので、この取り組みは非常に良いきっかけになったと感じています。

さらに、社員の一部から「以前は共通となるルールが無いせいで表現に迷う時間があったが、それが削減された」「指針ができたことで文章が書きやすくなった」ということが後のヒアリングで分かりました。ライティングガイドラインを整備したことで業務の効率化にも貢献でき、これは非常に嬉しかったです。

レギュレーションではない。ガイドラインという立ち位置

ルールは「ガイドライン」、あくまで指針という位置付けにしました。
集客のための記事を書く時の足枷になったり、厳密で細かいチェック体制を設けることで担当者のリソースを過剰に割いてしまうことは避けたいと考えたからです。そのため、「絶対的に〇〇を禁止します!」という運用にはせず、迷う部分があれば相談してほしいと伝えています。
もちろん例外を全て認めてしまってはガイドラインの意味がないので、定期的な運用状況のチェックは欠かせません。

また、内部に浸透してきたので、今後できればより分かりやすい外部向けのライティングガイドラインも作成したいと考えています。

スペースマーケットの人格

今回ライティングに深く携わることで、サービスの人格についても統一のためにガイドラインを作成する必要性を感じました。

人格については、以前デザインチームでデザインコンセプトについて話し合った時にも少し議題に上がりました。

もちろん今回「用語を正しく使う」「文章に統一感をもたせる」ためのルールを整備することはできたのですが、そもそもの語調や言葉の選び方、つまり「そのサービスがどんなキャラクターか」という前提について言及することができていませんでした。

スペースマーケットの持つ今のイメージは「丁寧だけど堅苦しくない、やわらかい」印象です。色々な部署の方に聞いてみても、このイメージは皆共通で持っているものでした。しかし、今は前例に従うことで保てているかもしれませんが、今後も各担当者に何の指針も示さずそれを一任したところで必ず守られるのか?と考えると、とても自信は持てません。

ユーザーの思う「スペースマーケットというサービスへの印象」がブレてしまわないために・またサービス自体のブランディングのために、今後考え明文化していくべき課題と捉えています。

まとめ

今回ガイドラインを作成することで、今後何を決めるべきかという問題がはっきりしたように感じています。また、運用はまだ開始したばかりなので、今後もさまざまな課題が出てくると思いますが「ユーザーのため」という前提の元、引き続き大切に運用していきたいです。

株式会社スペースマーケット
デザインチーム 新井