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他人と比較してネガティブになるのではなく「自分らしさ」で幸福な人生を送るために

今回私がご紹介するのは他人と自分を比べてネガティブになってしまう人必読の本です!「世界中の人に、1人残らず幸せになってほしい」という思いの著者によって、誰にでもわかる幸せの方程式が書かれています。

『幸せのメカニズム 実践・幸福学入門(講談社現代新書)』

「幸せ」の意味

【幸福とタイムスパン】

「そもそも幸せは目指すべき対象か?」という問いに対し、肯定派の代表として「幸福は誰もが求める最高の目標である」と言った古代ギリシャのアリストテレスがいます。一方で、否定派の意見としては、夢や目標に向かう過程に幸せがあるだとか幸せを目指すのではなく日常にある幸せに気付くべきだ、という意見もあります。

著者は、漠然とした幸せを目指すのは難しいので、目指すのではなくメカニズムを理解して、具体的で手の届きそうなわかりやすい目標を持つべきだという立場をとっています。

まず、「幸せ」には幸福・うれしい・楽しいなどの類義語がありますが、それらをタイムスパンで分けてみると

(長い)幸福な人生>幸せ・うれしい気分>うれしい・楽しいという感情(短い)

となります。

タイムスパンで考えると、死ぬ直前に自分の人生を振り返った時に満足していれば「幸福な人生」で、欲しかったものを買ったりおいしいものを食べたりした瞬間に「うれしい・楽しいという感情」ということになります。

しかし、「幸福な人生」はゴールしてからでないとわからないし、漠然としすぎている。だから人は簡単に手に入る「うれしい・楽しいという感情」になれるものに手を出してしまいます。しかし、それは本質的な幸せとは言えないかもしれません。

【ピーク・エンドの法則】

苦痛・快楽の評価はその活動の「ピーク(絶頂)」と「終わったときの程度」で決まるのであって、「どれくらいの期間続いたか」は無視される

このピークエンドの法則は辛いことが長く続いても耐え抜いて結果が良ければ全てがよかった思い出になる一方で、どんなに楽しいことが長続きしても、最後が悪ければ全てが台無しになってしまうということです。

すべての記憶が均等に思い出されるわけではないから、時間がかかるとしても最後までやり抜く方が幸福を得られることを暗示しています。

一方で、現実逃避のために一時的な快楽を求めたとしても後から辛いことがあったら、途中にあったその小さな幸せはなかったものになってしまいます。幸福をゴールにするのであれば、物事に向き合ってピーク(途中の大きな喜び)かエンド(最後までやり遂げる・成功)を迎えるしかないのです。


【フォーカシング・イリュージョン】

人は所得などの特定の価値を得ることが必ずしもしも幸福に直結しないにもかかわらず、それらを過大評価してしまう傾向がある

例えば、「年収が上がれば幸せになる」という考えはフォーカシングイリュージョンの典型です。様々な研究で、ある年収(だいたい1,000万円)を超えると幸福度と年収の相関はなくなると証明されているのに、多くの人が「もっとお金があれば幸せになれる」という幻想を抱いてしまうのか。

それは西洋的な進歩主義の、競争と快楽の追求を是とする考え方により、人々が物質的な豊さを求めるような価値観が広まったのが原因の一つです。

【地位財と非地位財】

地位財=周囲との比較により満足を得るもの
例) 所得/ 社会的地位/ 物的財
✔︎幸福の持続性は低い
非地位財=他人との相対比較とは関係なく幸せが得られるもの
例) 健康/ 自主性/ 社会への帰属意識/ 良質な環境/ 自由/ 愛情
✔︎幸福の持続性は高い

人々は人との比較によって生まれる地位財を求めてしまいがちですが、非地位財の特徴として幸福の持続性が高いとあるように「幸福な人生」を送るには、むしろ非地位財による幸福にもっと目を向けるべきなのです。

幸福に寄与する4つの因子を覚え、満たせるように心がければ幸せになれる!

幸せに関連する項目を過去の幸福研究から見つけ出し、それに基づいたアンケート結果をコンピューターで分析してシンプルな構造にモデリングした結果、以下の4つが「幸せの因子」として導き出されました。

幸福に寄与する4つの因子を覚え、満たせるように心がけると幸せになれるのです。

1. 「やってみよう!」因子 (自己実現と成長の因子)

コンピテンス=私は有能である
社会の要請=私は社会の要請に応えている
個人的成長=私のこれまでの人生は、変化、学習、成長に満ちていた
自己実現=今の自分は「本当になりたかった自分」である

まずは西洋近代進歩主義のような他人との競争に勝つことを自己実現や成長と捉える考え方を見直す必要があります。

画一的な地位材(地位・名誉・金)を目指すと勝者と敗者に分かれてしまします。そうではなく、一人ひとりがどんな種類のどんな小さなことでもいいから自分らしさを見つけ、それを生かして社会で自分らしく生きていけることこそが、第1の幸せの因子である「やってみよう!」因子の本質です。

合理的で効率的で社会的意義があるものだけではなく、一見意味がなく訳のわからない活動でも、結果的にいい思い出や相互理解につながればいいのです。大事なのは、他人に押し付けられてやる自己実現や成長ではなく「自分らしさ」があることです。

自己実現しているか、自己実現するために何かアクションをしているか、ということが大事なのです。それが「自己実現と成長」です。

2.「ありがとう!」因子(つながりと感謝の因子)

 人を喜ばせる=人の喜ぶ顔が見たい
 愛情=私を大切に思ってくれている人がいる
 感謝=私は、人生において感謝することが沢山ある
 親切=私は日々の生活において、他者に親切にし、手助けしたいと思っている

友人の数よりも、多様な人との関わりがある方が主観的幸福が高いという統計があります。そこで、著者は多様なつながりを持てるような活動に参加することを勧めています。

しかし、多くの人は、時間がない、疲れている、興味がないと理由を付けて避けてるのではないでしょうか?著者はそれらの理由を否定し、解決策も提示してくれています。

①「時間がない」と言う人へ

どんなに忙しい人でも通勤時間やテレビを見る時間などから1日30分は捻り出せるはずです。

また、睡眠時間を減らすのではなく仕事の速度を2倍にすればいいのです。最初は慣れなくて大変でも、できるようになれば1日何時間も時間を作れるはずです。

②「疲れている」と言う人へ

疲れの原因はほとんどの人の場合、肉体的疲労ではなく精神的疲労です。その疲労は、テレビを見たりゴロゴロしたりしたら取れる類のものではありません。

精神的な疲労を取り除くには原因を克服するか、もしくはその原因が小さいと思えるくらい他の何かに打ち込んで「自己実現と成長」をする。精神的に疲れている時こそ行動すれば、その疲れが取れるのです。

③「人との繋がりに興味がない、面倒くさい」と言う人へ

社会問題解決のための社会貢献活動への参加意欲と幸福度の関係についての調査の結果、幸福度は高い順に「すでに参加している人」「参加したいがどうすればいいかわからない人」「参加したいが余裕がない人」「興味がない人」でした。

つまり、幸せになりたいのであれば、積極的に何らかの社会貢献の活動に参加すべきなのです。それは、第2因子である「ありがとう!」因子(つながりと感謝の因子)だけではなく、活動の過程で第1因子である「やってみよう!」因子 (自己実現と成長の因子)を満たすこともできます。

3. 「なんとかなる!」因子(前向きと楽観の因子)

楽観性=私は物事が思い通りにいくと思う
気持ちの切り替え=私はものごとが思い通りに行くと思う
気持ちの切り替え=私は学校や仕事での失敗や不安な感情をあまり引きずらない
積極的な他者関係=私は他者との近しい関係を維持することができる
自己受容=自分は人生で多くのことを達成してきた

1990年代に人格特性や主観的幸福の50%は遺伝によって決まるという研究結果が発表されました。人が幸せを感じやすいかどうかはある程度先天的に決まっているということです。しかし、楽観的な自分を意識的に作ることで後天的に幸せを感じやすくなることがでると著者は言います。

他の因子に比べて「なんとかなる!」因子の解説がとても長かったので、特に使えそうだと思ったものを一つだけ紹介します。

【心は幻想】

仏教的な無や現代哲学のニヒリズムと同様の考え方で「心は幻想」だと思うことで楽観的になることができます。絶対無からの楽観。

「死にたくない」「〇〇をしたい」「〇〇が欲しい」という欲望自体が幻想

これを誤読すると無欲で向上心がないくなってしまいそうですが、覇気をなくせという訳ではありません。

著者を例にすると、地位財を自分のために使おうという欲がないだけで、世界中の人を幸せにするという欲に溢れています。実際に本を執筆しているのもその欲を満たすためであり、決して名誉やお金に対する欲のためではありません。その結果、やりがいや自己実現にもつながっていきます。

4. 「あなたらしく!」因子(独立とマイペースの因子)

社会的比較思考のなさ=私は自分のすることと他者がすることをあまり比較しない
制約知覚のなさ=私に何ができて何ができないかは外部の制約のせいではない
自己概念の明確傾向=自分自身についての信念はあまり変化しない
最大効果の追求=テレビを見るときはあまり頻繁にチャンネルを切り替えない

文化的にアメリカ人は人の目を気にしない傾向がある一方で、日本は調和を重んじるため教育の段階から人と比較し、そして人と同じことをすることが教え込まれています。それが悪いという訳ではなく「自分らしくいる」ことと「周りと合わせる」ことをうまく使い分けるのがいいと著者は言います。

人の目を気にしないということは所得や 社会的地財、物的財などの他人との比較の中で生まれる持続性の低い幸福にあまり興味がないことが考えられます。そのため、相対的に他人との相対比較とは関係なく幸せが得られ、幸福の持続性も高い非地位財(健康/ 自主性/ 社会への帰属意識/ 良質な環境/ 自由/ 愛情など)を目指す結果、幸福になれるという考え方があります。

一方で、幸福な人は自分に満足していてその結果他人と比較する必要などないので人目を気にしないという考え方もできます。

人の目を気にしない結果として幸福になれるのか、幸福だから人の目を気にしないのかはわかりませんが、この2つは因果関係のループになっていて、好循環になっていると著者は推測します。

「普通の人」より「変人」になると、この好循環を手に入れることができます。人目を気にしない自分になることで、幸せになることができるのです。

ここでの変人の定義とは

ささやかでも自分だけの成長と自己実現による充足感を手に入れ、多様な友達を持ち、楽観的によく笑い、人の目は気にせず、楽しく生きた方がいい

の極限のことだそうです。

まさしく、幸せの4つの因子を満たしている状態ですね。

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今回は私自身がこの本の内容をすぐ振り返れることと、もっと多くの人に読んでもらうことを目的として書きました。要約したのは、私が印象に残った部分と他の人に広めたい部分で、解釈は人によって変わってくると思うのでぜひ本を手に取って読んでみてほしいです。



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