勝負手
年に数回知り合いの子供たちと指すくらいなのだが、それでも私は将棋が好きだ。
子どもたちとやるゲームはいろいろあるが、ゲームの途中、子どもたちも、私も自然と話しをしなくなり、その世界にのめり込んでしまうのは将棋だけかもしれない。
将棋の面白いところは、取った相手の駒を自分の駒として復活させられること。
この「復活」により、チェスよりもはるかに複雑に、はるかに戦略が豊かになる。
そして、「復活」させるタイミングも、場所も基本的には自由だから、通常ならあり得ない場所にありえない駒が出現することになる。取るに足らない存在だった駒が、戦局を左右する重要な一手に変化する。
この盤上の出来事に、人の生き方を重ねてしまう。
ある会社で取るに足りない存在であった社員が、異動を経てポジションが変わり、あるいは転職をして、会社の命運を握るキーパーソンになることがある。かつて、敵陣地の目前に置かれた「歩」である私がそうであったように。
あらかじめ用意されたスタート地点からの想定されたルートではなく、好きなタイミングで、好きな場所からわがままに始める人生。それにより、その人が活躍できるようになり、人生がより深く、より豊かになる。
そんな人の生き方に重ねて見ているから、私にとって「将棋」は特別なのかもしれない。
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