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第86話・2007年 『公正欠く判定、北京予選やり直しへ』

日本にハンドボールが伝来して100年になるのを記念した1話1年、連続100日間にわたってお送りする企画も終盤です。21世紀に入っての20年間は“あすの課題”でもあります。大会の足跡やチームの栄光ストーリーは少なくなります。ご了承ください。取材と執筆は本誌編集部。
(文中敬称略。国名、機関・組織名、チーム名、会場名などは当時)

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思いもよらぬ事態が起きた。国際ハンドボール連盟(IHF)が北京オリンピック・アジア予選の「やり直し」を決めたのだ。

12月17日、パリでのIHF理事会。

8月にカザフスタンで行なわれた女子の、9月に日本(愛知・豊田市)で行なわれた男子の北京オリンピック予選は不可解な判定が続き、代表権を手にした女・カザフスタン、男・クウェートの試合は公平さを著しく欠いたとする競技・規則委員会(PRC)の報告を重視、男女全試合を白紙に戻し早急に「再予選」を行なう、との異例の決定をした。日本のメディアは大騒ぎとなる。

17人が出席した理事会は激論の末、「再予選」の賛否を問う投票は賛成11、反対2、棄権3(会長は投票せず)の大差となり、前代未聞ともいうべき「やり直し」が可決される。

PRCは男・クウェート-韓国戦には38回の誤審があり、大半は韓国に不利な判定だったと指摘、女子はホームのカザフスタンが有利となるように仕組まれた疑いがあるとした。

男子は各試合のテレビ中継用映像などが充分整っているが、女子は映像がいっさいないことも明らかにされた。

IHFは「再予選」に参加できるのは最初の予選会に出場した男・5ヵ国(日本、クウェート、韓国、カタール、アラブ首長国連邦)、女・4ヵ国(日本、カザフスタン、韓国、カタール)に限られるとした。

クウェートとカザフスタンの“勝者”はその勝利を主張するとみられ、IHF決議後、激しく反発を続けるアジア・ハンドボール連盟(AHF)の姿勢を支持している中東勢は再戦を拒むと思われ、男女とも日本、韓国だけのエントリーにとどまるのは確実だった。

問題は試合地だ。IHFは中国を候補としたが同国は断り、“第三者地”での開催は可能性が薄いまま年を越す。

問題の予選を振り返ろう。

女子は第1日、日本-韓国戦は作為的な判定がめだち、30-29で日本が取る。第2日、勝てばオリンピック出場が有力となる日本に対して地元カザフスタン有利の笛が露骨に続き、日本は22-28で敗退。最終日、カザフスタン-韓国は“大激戦”から32-31で韓国。3国とも圧勝したカタール戦を除いて1勝1敗の三つ巴、3者間の得失点差でカザフスタン、韓国、日本の順。

男子は開幕戦でクウェートが韓国を28-20で降す“問題の試合”となる。日本はクウェートに27-29、クウェート寄りの判定にスタンドからペットボトルが投げ入れられるシーンもあった。韓国に25-30などで3位。クウェートはカタール、アラブ首長国連邦にも勝ち全勝でモスクワ、アトランタに次いで3大会ぶりのオリンピック出場となる。

IHFが派遣したドイツ人レフェリーはクウェート絡みの試合では登用されず、AHFの指名するペアが担当した。日本、韓国両協会は大会終了直後に記者会見を開き「IHFへの提訴」を表明、AHFに対しても「強く抗議する」とした。韓国協会はこのあとも国際オリンピック委員会(IOC)の有力委員にクウェート戦のDVDを送るなど「不当」をアピールする手を緩めなかった。

春から2016年夏季オリンピック東京都招致計画が急テンポで具体化され、9月閣議で招致が決定、11月基本計画が発表された。ハンドボール会場は当初の東京ビッグサイト(東京国際展示場、江東区)と国立代々木競技場(渋谷区)2会場案から代々木で全日程消化に変わる。

男子の全日本学生選手権(全日本インカレ)が第50回大会(北海道・函館市)を迎えた。優勝は50回連続出場の日本体育大学(18回目、通算169勝)。

日本リーグで田中美音子(大和銀行-ソニーセミコンダクタ九州)が女子初の通算1000ゴールをマーク(2月3日、対HC名古屋)。

第87回は10月18日公開です。


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