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【Z世代の新トレンド】”映え”より”リアルさ”を求めるZ世代にスポーツはどう近づけるか

Z世代のバイブルともいえる、「映え」を狙わないSNSアプリ「BeReal(ビーリール)」に、パリ・サンジェルマン等のプロスポーツチームをはじめとする公式アカウントが開設されました。

名門クラブが参画する新たなSNS「BeReal」とは何かご存じでしょうか?
皆さん、まだ「Z世代は『映え』が好き」だと思っていませんか?今やZ世代は ”映え” よりも ”リアルさ” ”飾らない日常” ”生々しさ” を求めるようになっています。
過去にZ世代とスポーツの関係性と可能性について記事を書きましたが、ここに来てZ世代が好むものや求めるものが変わってきたのです!
ということで、本記事では今起こっているZ世代のニーズや考え方の変化から、なぜスポーツチームがBeRealに参加するのかを理解し、これからZ世代とスポーツをより近く強く結びつけるためにはどうすべきなのかを考えます。
そして、スポーツマーケティングのキーワードになりつつある「Authenticity(ありのまま)」とは何か?について、このワードが重要視され始めているアメリカの動きを見てみたいと思います。
「Z世代が “映え” を好きじゃない・・!?そんなわけ・・・!」と思っている皆さん、「BeRealってなに・・?知らないの自分だけ・・・?」と危機感を感じた皆さん、ちゃんとご説明しますのでご安心ください!


”映え”がないアプリ「BeReal」

「BeReal」とは、2020年にフランスで誕生してから徐々に世界中でユーザー数が増加し、今ではZ世代に大ヒットしているSNSアプリです。
BeRealは、一言でいえば「”映えない”SNS」です。
そのアプリのコンセプトとして5つのポイントを掲げています。

1. NO FILTERS.―フィルターなし
2. NO LIKES.―いいねなし
3. NO FOLLOWERS.―フォロワーなし
4. NO BULLSHIT.―ハッタリなし
5. NO ADS.―広告なし

BeReal tagline

BeRealでは好きな時間に好きな投稿をできません。
不定期に投稿時間のアラートが通知され、2分間以内に写真を撮影しシェアしなければならないという、なんとも不自由なSNSアプリです。
さらに写真は内外両方のカメラで撮影され、加工ができない上に、撮り直した回数が公開される仕組み。
つまり、加工で「良く」見せることも、見せたくないものを見せないこともできないことで、最大限「リアル」しか存在しない世界を成立させているアプリがBeRealです。

そんなBeRealの現在のアクティブユーザー数は2300万人を超え、LINEリサーチが行った「Z世代の最近の流行」に関する調査によるとBeRealが第1位となりました。

Z世代はキラキラした日常や楽しい日常をSNS上で自慢しあって楽しんでいると思いきや、もはやZ世代が求めるものは大きく変わったということをお分かりいただけたでしょうか。
では、なぜZ世代が「映えない日常」を好むように変化したのでしょうか?

デジタルネイティブはデジタルに疲弊し始めた

Z世代がBeRealを使う理由として、「リアルな自分を見せられる」「写真加工のプレッシャーから解放される」が挙げられます。(参考:写真加工アプリに関する調査
表層的な理由はこのようなものですが、その背景にはデジタルネイティブとして生きてきたZ世代の疲労が関係していると考えます。

物心がついたときにはスマホやSNSが存在し、青春時代もしくは幼少期からデジタルコンテンツ・SNSと共に生きてきたZ世代は、簡単に言えば、綺麗で華やかな場面を見せることで他人から「いいね」という好反応をもらって承認欲求を満たすという行為に疲れているといえるでしょう。
自分自身も加工等を使って「綺麗に見せている」からこそ、作られたものばかりが並ぶSNSに飽きているというイメージです。

SNSに疲れても承認欲求には勝てない

「じゃあSNSやらなきゃいいじゃん」と思うかもしれませんが、そうもいかないのがZ世代の難しさであり、BeRealが好まれる理由です。
SNSは疲れる。でも承認欲求は満たしたい。
なぜなら、SNSと共に生きてきたZ世代は「自分と他人」の関係性の中で自分を位置づける・自分の価値を定めることにあまりにも慣れているからです。
自分らしさを重要視することもZ世代の特徴であることは確かなのですが、Z世代はSNSという他人とつながるツールとともに生きてきたために、他人のものさしで自分を評価する傾向にあります。
結果として、どうしてもSNSを通じて他人から評価を得ることで承認欲求を満たしたい気持ちを無くせない状況になります。

結局Z世代が求めるものとは?

映えは嫌いだけど承認欲求は満たしたい。
結論から言えば、方法・ツールが変わっただけで、Z世代が持つ承認欲求の強さは何も変わらないといえます。
ただし、Z世代が求める方法・ツールが変わったということは、スポーツがZ世代を取り込むためには、関わり方やアプローチの仕方を変える必要があるのではないでしょうか。
ではどういった動きが必要なのでしょうか?
現在海外で見られる「Authenticity(本物らしさ)」を重要視した動きを最後に紹介します。

アスリートの市場価値はスーパースターから本物らしさへ?

SportsProは、個人アスリートを対象とした「Most Marketable Athletes of 2023」にて、最も市場性の高いアスリート50人をランキング形式で発表しました。
1位はリオネル・メッシ、2位はレブロン・ジェームスといわゆるスーパースターがランクトップに位置づける中、なんと女子大生が2名ランクインしました。
ルイジアナ州立大学に所属する体操選手のオリビア・ダン(30位)とバスケットボール選手のエンジェル・リース(19位)です。競技レベルはそこそこにも関わらず彼女らがランクインしている理由には、このランキングの評価指標が一つ影響していると考えられます。

主な指標は①Brand Strength ②Total Addressable Market ③Economics の3つで、うち②を構成する要素の一つである「Authenticity(ありのまま)」において、リースは2位、ダンは13位と高い順位に位置づけているのです。
彼女たちは、SNS上でのユーザーとの関わり方の工夫によって「Authenticity」で高評価されていると考えられます。
年収2億円超えともいわれるダンですが、彼女がSNS上で宣伝を行う商品には「大学生でもハードル無く購入できる」という共通点があります。

@livvy

Everytime, everywhere @American Eagle jeans forever #AEpartner #AEjeans

♬ original sound - Olivia Dunne

彼女がSNS上で宣伝するものは、Forever21、American Eagleといったファストファッションや、300ドル未満の安価なスマートフォンで2021年に米国で3位のスマートフォンブランドとなったMotorolaなど。あえてハイブランドではなくこれらのブランドを選んでいる理由は、彼女が自身の顧客が大学生であることを正しく理解しているからだといえます。
彼女の投稿を見た視聴者にとって、彼女が宣伝する商品は自分でも購入できる商品だからこそ関心が生まれ、その結果として彼女の市場価値につながります。

いわゆる拡散力・影響力を持つ「インフルエンサー」的な立場となると、どうしても作られた感や着せられた感、内容や商品の良し悪しに関わらず宣伝している感が出てしまうことは想像に難くないと思います。
ここまで記載したBeRealの流行からみえるZ世代の変化を踏まえると、そのような印象は市場価値として特にZ世代にとってはマイナスに影響するといえます。
逆に考えれば、Z世代から見ると、その人がいかに強い選手か、かっこいいスター選手か、よりもいかのその人が盛られていない事実を述べているか、素直なありのままの姿を見せているか、といった「Authenticity」が重要視されていると考えられます。
このようなブランディングを築いてきたアスリートの動きは、「消費者がスポーツコンテンツに対してどのような点で価値を感じるのか」のヒントになるといえるでしょう。

最後に

Z世代のニーズは上記の通りこれまでと変わってきていますが、映えよりもリアルが求められているから単純にビハインドを見せることでファンが増えるか、といえば必ずしもそうではないと思います。
また、基本的にデジタルで生きているZ世代はそのトレンドや流行が目まぐるしく変わります。今Z世代が何を好んでいるのかはもちろんですが、それよりもそのトレンドの背景や、トレンドが変わっても根底で変わらないものは何なのかを理解することで、Z世代と取るべきコミュニケーションが見えてくるのではないでしょうか。
どんどん変化し複雑化するZ世代のニーズや考え方について、今後も注目していきたいと思います。

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