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スキについて書くこと

 自分はいろんなものが大好きだけど、自分の「好み」に「好き」って大分偏っている。でもそんな偏りが自分の個性で、そんな偏愛について思い切り語るのが大好き。「トリツカレ男」なんて本もあるけど、あんな感じで好きなことに夢中になれるっていいと思う。

 日本語音読の重要性を啓蒙して下さる斉藤孝先生は「偏愛マップ」という本を書かれていて、「スキ」を伝えることで自分を伝えることができると語られる。「スキ」を共有してそのことを語り合えるほどに楽しいことってないですよね。偏愛から、共感から、人はつながりあえて、コミュニケーション出来るんだと思います。

 でも「キライ」はあまり語らない方がいい。自分の「キライ」を好きな人が嫌な気分になるからね。

 複雑なモダンジャズが理解できないからってジャズの悪口言ったら、ジャズの好きな人は楽しくないですよね。わたしはどうして嫌いなのかに耳を傾けることが面白いのだけど。長所は短所と表裏一体ですので、「キライ」からも物事の本質が見えてくることもよくあります。

 議論してDisagreementを楽しむって、地球温暖化の予測モデルを先駆的に研究されてノーベル物理賞を受賞された真鍋叔郎先生は言われましたが、こうした態度は日本文化の中では好まれるものではありません。

(c)朝日新聞Globe+ 朝日新聞デジタル

 自分が何を嫌いであるのかを自覚して、どうして嫌いなのかを知ることは自分を知る上でとても大切なことだけれども、あまり語らない方がいい。「キライ」をいつか好きになれることだってあるけど、どうしても好きになれないこともある。

 このNoteには、他のSNSの「いいね」の代わりに「スキ」がある。

  誰かが「スキ」してくれるとNoteからこんな通知が届いたりもする。
「スキ」で繋がる世界がNoteなんだなと思う。「高評価」でも「低評価」でもなく「いいね」でもなく、「スキ」=I like it なNoteっていいですよね。

 あとこの言葉、大好きです。「赤毛のアン」からの引用。

「この世の中にこんなに好きなものがたくさんあるって、すてきじゃない?」
村岡花子訳

 日本にも平安時代に書かれた「枕草子」がありますよね。清少納言の随筆が千年の時を経ても読まれ続けているのは、あの本にはたくさんの「スキ」が自由な言葉で思い切り書かれているから。「わろし」についても書いてるけど、やはり「をかし」を書く彼女の言葉は素敵です。

 春はあけぼの。やうやう白くなりゆく山ぎは、すこしあかりて、紫だちたる 雲のほそくたなびきたる。
 夏は夜。月のころはさらなり。やみもなほ、蛍の多く飛びちがひたる。また、 ただ一つ二つなど、ほのかにうち光りて行くもをかし。雨など降るもをかし。
 秋は夕暮れ。夕日のさして山の端いと近うなりたるに、烏の寝どころへ行く とて、三つ四つ、二つ三つなど、飛びいそぐさへあはれなり。まいて雁などの つらねたるが、いと小さく見ゆるはいとをかし。日入りはてて、風の音、虫の 音など、はたいふべきにあらず。
 冬はつとめて。雪の降りたるはいふべきにもあらず、霜のいと白きも、また さらでもいと寒きに、火など急ぎおこして、炭もて渡るもいとつきづきし。 昼になりて、ぬるくゆるびもていけば、火桶の火も白き灰がちになりてわろし。
「枕草子」冒頭

 私の大好きな小説家の辻邦夫は「枕草子」がスキを語る態度こそが生きる喜びの普遍的な態度なのだとエッセイに書いていました。辻邦夫は自分の「好き」を生涯書き続けた小説家でした。わたしもそんな「スキ」を書いていたい。

 ちなみに「背教者ユリアヌス」や「春の戴冠」を書かれた辻邦夫さんは、アニメの「赤毛のアン」(1979)が大好きだったと、奥様の辻佐保子さんがやはりエッセイで書かれています。微笑ましいエピソード。

 これからは毎日、このNoteで自分の「好きな」ことを書いてゆきたいと思っています。自分の「好き」なことを言葉にして伝えたい。そして同じような「好き」を共有して共感できる人とオンラインでつながりあいたい。

 こんな想いでNoteしています。あなたの「好き」をもっと知りたいです。あなたもたくさん「スキ」を書いてくださいね。わたしのまだ知らない「スキ」に出会えるかもしれないから。

 「スキ」から世界が広がり、想いをつないで、つながりあえる。そんな風に思っています。


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