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【栽培担当インタビュー】なぜ植物工場で野菜が育つのか?気になる味や栄養価、そして100年後の行き先は?!

こんにちは。スプレッドnote編集部です。

2024年になったんですが、弊社が植物工場を始めてから18年、そしてこのnoteを立ち上げてからまる3年が経ちました。

このnoteを始めたのは、植物工場というものについて皆さんにもっと知っていただきたい!という想いからです。
実際、以前に比べて植物工場の認知度が上がりつつあり、食品業界や一般家庭の間でも植物工場野菜を愛用していただいている方が増えていると感じています。

一方ではまだ植物工場について「人工的」なイメージを持っていたり(響きのせいですかね?)、栄養価を心配されるご質問やご意見をいただくこともございます。

この記事では、少しルーツに立ち返って、そもそも植物工場の仕組みは何でしたっけ?というところから解説したいと思います。
そのためには、以前の記事でお馴染みの栽培企画担当の平山さんに出ていただきます!

平山さん インタビュー

栽培企画 マネージャー 平山 亮太(2015年入社)

まずは自己紹介お願いします。
思い返せば農業をやっているのは・・・何年前からか?(笑)
17年前くらいかな、農業の高校に入った時からですね。
そのあとも農業関連の大学行ったり、海外行ったりして、ずっと植物にかかわる仕事をやっています。
その後、日本、それも地元にめっちゃくちゃでかい植物工場ができたって話を聞いて、戻ってスプレッドに栽培管理として入社しました。

入社当時の平山さん

平山さん、さらっと「海外」とだけ言いましたけど・・・
本当はすごいところに行ってたんですよね!?
いえいえ。オランダのヘルダーラント州です。
世界一の農業大学といわれているワーゲニンゲン大学があって、その近くにある知り合いの農業法人でお手伝いをしてました。
トマトや花の水耕栽培をしつつ、研究しながら品種改良もやったりと。
知りたいことがあると、ワーゲニンゲン大学に授業を聞きに行ってました。

「農業のシリコンバレー」とも呼ばれているところですよね!すごい。
では現在、スプレッドでされている業務について教えてください。
「栽培企画」という部門のマネージャーをしています。
栽培企画は、各工場にいる「栽培管理チーム」とは別に、例えば、新しい工場を立ち上げる時の栽培支援や、既存工場の野菜をより良くするための改善施策など、会社全体の栽培をサポートする役割です。

なるほどですね。では植物工場の基本的な仕組みを説明していただけますか。
外の農業と一番違うところは、3つあります。
1つ目は、土の代わりに水を使うことです。いわゆる水耕栽培ですね。
2つ目は、外から完全に隔離されている、「室内栽培」であることです。
あとは、LEDなどの人工照明を太陽の光の代わりに使うことです。

レタスの種 まずは、この種を植えて・・・
数日したら、小さな苗が出てきます
少しずつ大きくなって、自分の根っこを形成
最後はこんなにも大きく!種との違いがすごいですね
ちなみに、種まきからここまで約40日間(亀岡プラント)


太陽と土がなくても、室内の環境で野菜が育つ理由ってなんでしょうか?
植物の成長に必要な要素は何なのか?という話だと思います。
一般的には、水、空気、光、プラスαで栄養ってよくいわれています。
植物は土の中にある水と栄養分を吸い上げて成長していて、「土」そのものは必須ではないんです。
植物工場では、水に栄養分を入れて、直接的に植物の根っこに届けるんです。基本的な栄養の成分も変わりません。
もう一つは光です。畑では太陽光を利用しますが、植物工場では室内で栽培するのでLEDなどの照明を使います。

植物が成長する仕組み

太陽がなくても育つのか!?って言われることがあります。
まぁ、育ちますね(笑)
太陽光と家で使っている照明の光って、そこまで大きくは変わらないです。
もちろん、細かいところは色々違いますよ。でも根本は同じです。
そして植物工場で使うLED照明のいいところは、光の「波長」を選べるんです。植物の成長にはこの「波長」が重要で、それぞれの植物にあわせて「波長」を調整することで成長を促すことができるんです。

なるほどー・・・そうやって聞くと確かに野菜ができても不思議ではないですね。
味の方はどうなんですか?ぶっちゃけ、普通のレタスとどっちがおいしいですか?!
僕の個人的なコメントをいうと、「植物工場で育ったレタスの方がおいしい」です。

おおっ!言い切りましたね。
ちゃんと理由があります(笑)
もちろん、自分自身で育てているというところもありますが、
やっぱり植物にとって一番ベストな環境で育てているというところは大きいと思っていて。
畑だと、「ああ、この時期は曇っていて太陽が少なかったな」とか、「大雨で水がかかりすぎっちゃった」とか、自分の思うように行かないことって多いんですよ。そうしたらどうしても品質にばらつきが出てきます。
もともと自分も畑の栽培からスタートしてますので、よく分かります。
比べて、植物工場は外の影響を受けないので、栽培管理者は全てをつかさどる「神様」のような存在です。おいしい野菜ができる環境を見つけて、それをしっかり保てば、365日おいしい野菜が出てきてきます。
これはやっぱり植物工場の大きな強みだと思っています。

味のことは分かったけど、栄養価は大丈夫なのか?と言われる方もいますよね。どうお話しされますか?
むしろ、一般的な球レタスよりβカロテンが多かったりしていますので、栄養価は豊富です。もちろん、パッケージにも栄養成分を記載していますけど・・・
例えば、私の祖父の世代って、もちろん植物工場はなかったんです。
なので、そういう世代の方に説明するときに、まずは食べていただくのがベストだと思います。
味はレタスなので。そこで安心してもらって、説明する内容もすっと入るんです。

平山さんは以前、食育イベントに実際参加されたこともありますよね。
何回か参加しましたね。親子限定のイベントで、自分で育てるところから、食べるところまでやりましたね。

そこで実際に考え方を変えたりした方はいたんですか?
いましたね。もともと植物工場はんなのか、どういう風に育てているのかを分からない方が多くて。栽培工程を一つ一つ、丁寧に見せてあげると、安心してもらえて受け入れやすくなります。

なかなか栽培担当がそういうイベントに出向くのも珍しいですが、これだけ詳しく丁寧に説明されると消費者の方も安心しますもんね。
ちなみに、レタスの他には何が作れるんですか?植物工場で作れないものはあったりしますか?

基本的に植物工場で育てられないものはないと言われています。
米、小麦、大豆、いわゆる主食となるものも栽培できます。
ただ、栽培日数がかかりすぎたり、コストの課題があるので、ビジネスとしてはまだ成立していないというのは現状です。
そういう作物もいずれできるように、スプレッドとして取り組んでいますね。

すごいですね!お米まで植物工場でできるんですね。
では最後に、平山さんが個人的に育ててみたいものは何ですか?

50年後、100年後の世界では今のように安定的に作物が作れるのか、という話があります。
そう考えると、少し食べるだけで栄養分を補充できる作物がいいかなと思っています。

そんなすごい作物ってあるんですか??
クレソンです。たまにステーキとかを食べるときにちょっと添えるアレです。
実は、ビタミン量が野菜ではナンバーワンなんですよ。
ああいうのが植物工場で栽培してみたいなって(笑)

クレソン

色々伺いましたが、今日で一番びっくりしたかもしれません(笑)
ぜひ、いつかクレソンを栽培できるといいですね。
今日はありがとうございました!


ということで、2024年初の記事を最後までをお読みいただき、ありがとうございました!
本年もスプレッドnoteをよろしくお願いいたします。