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買い置きマッチに助かった日

お金を払ってわざわざ不便な手段を買う。そこに価値はあるのでしょうか。

焚き火、野焼きを見ることは珍しくなかった子どものころ。それがいつしか、日常生活のなかで焚き火を見ることはほぼ、無くなりました。火を扱う経験といえば小学生のころ何度か、アルコールランプで理科の実験をしたこと。自宅での花火に、雷の停電時、父親がろうそくをつけて灯りにしたことも何度か。

平成13年4月、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」で原則として野焼きは禁止となりました。喫煙の習慣が無ければ、屋外で火を扱うにはキャンプ場やバーベキュー場を探すことに。最近は焚火カフェなるものも見かけます。

ゆらゆらと燃える炎をぼんやりと眺め暖を取る。そんな経験は自ら探さないと得られないものになりました。

私たちの日常生活のなかではどうでしょう。ガスコンロ、お風呂の着火、暖房、アイロンがけ。火と熱を使う場面は多岐にわたるものの、着火、火の燃料、消化から後始末までの方法はとても簡単です。

スイッチを押す、ダイアルを回す、それだけです。電磁調理器となると、もはや炎を見ることもありません。

趣味でアロマキャンドルを使ったり、固形燃料やバーナーでアウトドア料理をする、仏壇のろうそくに火をつけるなど、わざわざ火を扱う趣味や用事がないと、火を扱う機会はますます、失われていくのかもしれません。

数年前何度かバーベキューを外でやったことがあり、点火棒を100均で購入しています。ボタンひとつで火がつくすぐれもの。便利だなと思いつつ、なんの気なしに用いていました。

バーべキューの醍醐味炭おこし

久しぶりに固形燃料を使い、小さなコンロで焼肉をやろうと思い立ちました。点火棒をつけるとガスがもう無くて、つきません。

いつのまにガスが無くなっていたのでしょう。言うまでもありませんが、スイッチひとつで使える点火棒も、ガスが無ければ使えません。

困ったなあ、と思いきや、ふと思い出しました。

7年くらいまえ防災用品のひとつとして、マッチを通販で購入していたのです。棒の長い防水、防風マッチです。

買った理由は紛れもなく「災害時のため」でした。

アウトドアで使えるマッチ

こんな昔に買ったマッチ、使えるかな? 

と思いきや、見事に点火しました。しかも棒が長いので普通のマッチよりも使いやすいのです。

防災用というよりも、困ったときに役に立つものは、意外と利便性の高すぎる商品ではないと実感した経験でした。

右端にあるのが使用済みマッチ

マッチを使うこと自体数十年ぶりです。懐かしさとワクワク感と、火をじかに使うという少し不安の入り混じった感覚。これら混ぜこぜになった感覚が、火がついたときのひときわ格別な達成感を呼ぶのでした。

昔ながらのシンプルなものが、意外と長持ちして使いやすいのだなあ。

お金を払ってわざわざ不便な手段を買う。それはずっと役立つスキルを身につける手段でもありました。買ったマッチを使ってみて、初めて防災時に備える、という買った理由を活かすことができたのです。

このマッチは防災用として大切に保管しています。そして大人のお楽しみ、コンロ焼肉のときにも登場することでしょう。

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