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敗者だから伝えたい こうして会社は倒産しました 14

~経営再建中だから見栄をはる~

 前回までのあらすじ。顧客先であるスーパーが次々と倒産していく時代でした。

 経営再建中の中で、当初は毎月1000万円が消えていく状態です。様々な対策で少しづつ赤字幅は減らしていくのですが、いかんせん元々の赤字額が大き過ぎます。今回はそうした状況での私の内面の話です。

流通業は得意先の懇親会が頻繁に開催されます

 他県ではどうなのかが不明ですが、鹿児島県内では、小売店(スーパー等)の業者会が頻繁に行われます。特に一部の得意先では業者会の役員になっていたり、選挙応援に駆り出されたりするので、頻繁に懇親会が行われていました。コロナ禍が終わって、もう復活しているのでしょうか。

 地元スーパー等は私の会社が倒産した後でも、多数廃業や倒産をしているようで、今の業務で地方に行くと、そこにあったはずの得意先に別の建物が建っていたりすることも多く、生き残って頑張っているお店を見ると、つい買い物してしまいます。

 こうした中で、一緒に懇親会に参加したり、懇話会等に参加したりするのは、納入業者の役員(だいたいは社長で、一部専務や常務等)であることが多く、その大部分はかなり大きな会社ばかりだったりします。

本音で会話できる相手はいるのか

 債務超過は企業の信用としては致命的です。特に掛け買いでの仕入販売を主にする小売店や問屋業にとって、信用は最大の武器です。前回の話で得意先への売上を制限したように、問屋業に対しても、メーカーは納品を絞ることもできるのです。

 特に小売業はいい立地があったりしますが、問屋業で会社の場所など関係ありません。発注して時間に間に合うように、適正な数量を納品できればいいのです。

 そのため、会社が債務超過であることは、絶対の秘密になっていました。

 ある時に、懇親会で一緒にいた会社の社長が言いました。
「今お金無いんだよね」
恐らく手持ちのお金の話をしていると思います。

当時の私は、人前でお金無いとかとても言えません。私も手持ちのお金が十分にあることは無いのですが、そんなことを言って、
「この人の会社はお金が無いんだ」
などと、本気にされるのが怖いのです。発言をきっかけとして調べられたら本当に危険です。冷静に考えれば、そんな人など滅多にいるものではないですが。

会社がヤバいと言えた社長

 とある経営者の会で、
「私の会社が倒産しそうなので、皆さんの意見を聞かせて下さい」
と話をした社長がいた話を耳にしました。それは実際に知り合いの方だったのですが、それをきっかけとして多くの人が知恵を出したり協力したりして、現在では会社も軌道に乗り、そんなことがあった片鱗も見せませんし、むしろほとんど仕事もせず毎日豪遊されています。

 その会社は食品製造業だったことも功を奏したのかもしれません。自分も真似しようかと思うことは何度もありました。しかし私の会社も根幹は食品製造業ですが、会社全体の売上規模を牽引しているのは問屋業なので、信用喪失で即座に倒産の危機が起こります。問屋業の仕入先として、大手商社や県外の大手食品メーカが多かったことも影響しています。

 武士は食わねど高楊枝とは言いますが、プライドがあるとか、気位が高いとかではなく、そうせざるを得ない状況もあるのです。お金が無い時にあるフリをするのは、結構大変でした。

倒産社長が伝えたい経営の教訓


経営危機になった時でもお金の話までできる相談相手を作れ

 業績がいい時にお付き合いした相手は、業績悪化した途端に、ほぼ全員いなくなります。ビジネスの関係とはそんなものです。特に成長企業や大手企業であれば、業績が悪化したクライアントと長々話をすることは「効率が悪い」「生産性が悪い」「頭が悪い」とか言われるのです。
 口が堅く、適切なアドバイスなどできなくてもいいでしょう。何を言っても安心できる相手がいることは重要です。役員や親戚も意識を共有しているようで、みんな自分の生活が重要なので、こっそり逃げる準備をしていたりするものです。
 何の助けにもならなくても、話ができるだけで、多くの悩みは軽減されます。そういう相手は簡単に見つからないのが難しいところです。

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シリーズ1回目はこちらからです。

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