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敗者だから伝えたい こうして会社は倒産しました 18

~ムードメーカの人を解雇した話~

 全部自分が体験した実話の倒産劇。何かの参考になれば幸いです。
前回までのあらすじ。企業情報会社には全部バレていてゾッとした話でした。

従業員を探す

 話は少し戻って、従業員が大量に退職した後のことです。
https://note.com/sr_harada/n/n78f203c7557c  16話の後ぐらい。

総入れ替えで面接をすることになります。何しろ当時のスーパー向け冷蔵商品の問屋では、私の会社が地域最大規模だったので(赤字ですが)、同業の経験者などいないのです。

 まず頼れる経験者はいないかと頭に浮かんだのは、以前横領事件で解雇した物流センター長でした。
https://note.com/sr_harada/n/n189105fec08f  7話で解雇した方です。

緊急事態なので、お願いしようと声掛けしたら、同意してくれたのですが、問題は当時に彼を解雇するように最も迫ったお客様でした。

 狭い業界なので、こっそり入社させてもすぐにバレるでしょう。ということで再入社させる前に、許可を頂きに相談に行きます。
しかし答えは、笑顔で「ダメ」でした。そういう人物がいる会社では取引できないと固く忠告され、彼の再入社は諦めました。

新メンバーが決定

 新しく人材を集めざるを得ない状況でしたので、求人で集めることになりました。

新しい事務員は、事務経験者が来て頂けました。
営業の代わりも、
・20代で真面目そうなちょっとマニアな方(Lさん)
・30代で背の高いがっちりして声の大きい方(Mさん)
・40代でひゅうひょうとしている方(Nさん)
の3名が入りました。
コンビニ部門で働いていた弟も、営業に入れて、合計4名体制です。
皆さん安い給料でごめんなさい。
当時が就職氷河期で無かったら誰も来なかったかも。

 仕入れの担当は、元お客様で怖いバイヤーとして知られていた方(Oさん)。唯一の経験者で、この方は全て分かっていた中で、倒産後まで大変お世話になりました。
 最後まで感謝の言葉を言ってないような気がします。そういう人間だったのが私の一番ダメなところなのでしょう。

 新メンバーで特にMさんは、今までに無い新風を起こしてくれました。会社を出るときに「いってきます」、帰ってきたら「お疲れ様です(鹿児島では「お疲れ様」は会ったときの挨拶にも使います)」を大きな声で言うので、大量離職で沈んでいた雰囲気が明るくなります。
当時はくそ真面目でそういうことが苦手な私にはちょうど良かった。

 飲みにケーションが無い風土の会社で、彼には無理やり誘われたこともあり、思えばうれしいことでした。当時は会社にお金が無いのと、自分が慣れてないので、当惑してました。

そしてムードメーカを解雇してしまう

 社内の雰囲気も明るくなり、新人たちも得意先とも連携ができてきて、利益強化の次のステップに進まなければいけません。

 1年ぐらい経った頃です。仕入先の営業から、仕入担当のOさんに相談がきます。
「営業のMさんにお金を貸しているが、返してもらえない」
とのことです。

 それを耳にした私は激高してしまい、Mさんを呼び出します。
彼は土下座して謝罪したのですが、当時の私は土下座する人が大嫌い。
どうしても許せないという感情の結果、解雇することになりました。

 立場の弱い仕入先から借りるという行為は、許しがたいものですが、もっといい解決方法があったかもしれません。
彼がいなくなってから、元の静かな営業所に戻りました。


倒産社長が伝えたい経営の教訓


感情で人事を行ってはならない

 これは自分がやったこととはいえ、社労士的にもアウトの案件です。仕入先からお金を借りた程度で、普通解雇はできません。それが悪質な賄賂であって会社にも大きな損害があれば話は別ですが、それでも一発アウトにするのはハードルが高いです。

 それ以前に一時の感情で判断したのが良くありません。冷静に判断すれば、解雇処分が重すぎることとは理解できなければなりません。しかも、その直前に横領した社員を引き戻そうとしているのに。

 ただ注意程度で済まされる話ではないので、それなりの対処は必要になるでしょう。今書いていて改めて気付いたのは、解雇したために仕入先の方にお金が返ってこなかったかもしれません。その確認もしてませんでした。

 コンプライアンスやコーポレートガバナンスの意識は必要ですが、時と場合を考えて行動しなければならない。公平性を逸脱するような優遇もするべきではありませんが、冷静に判断する目は常に必要なことだと思います。

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シリーズ1回目はこちらからです。


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