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敗者だから伝えたい こうして会社は倒産しました ⑥

~事前に犯罪の対策をしましょう~

 前回までのあらすじ。厳しい状態が続く資金繰り、それに気付かない私、その中で起こるトラブル。様々なことが起こります。

 A社の工場移転のトラブルが収まれば、C社の工場で機械トラブルが起こり、その間にB社でもちゃんと問題は起こっています。

B社の物流センター

 B社は商社であり、複数の支店がありました。その中の鹿児島支店は、発祥の地であり、得意先であるスーパーマーケットの本部が近隣に多数あることも相まって、B社で最大の売上を牽引していました。その鹿児島支店の元支店長で、当時物流センターのセンター長をしていた人物の話です。

 彼は私よりも15歳ほど上で、話も上手く、理解力や計算も早い人物でしたが、トラブルを起こして支店長を解任され、営業と兼任で物流センター長になっていました。

 B社の取り扱い商品は日配商品と呼ばれる冷蔵商品が中心で、代表的な商品としては、牛乳・ヨーグルト・豆腐・納豆・こんにゃく・蒲鉾・餃子・焼きそばのような賞味期限が長くない商品なので、基本的に在庫は非常に少なく、ほとんどは当日物流センターに集めた商品を、各顧客先に仕分けして毎日配送します。毎日配送だから「日配」商品と呼ばれるのでしょう。

 仕入れるメーカのほとんどは、基本的に発注通りの数量で納品してくるのですが、一部のメーカはロット単位でしか納品しないので、余るものもあります。

B社の顧客

 B社の顧客の主軸はスーパーマーケットでしたが、バブル崩壊以降のデフレによってディスカウント志向が強まり、当時勢力を徐々に伸ばしていたのは、ホームセンターとスーパーマーケットを合わせ持ったスーパーセンターという業態でした。

 大店舗なので、集客力も高く、1店舗で仕入れる数量も非常に大きいため、B社の売上比重も年々高くなっていました。

 反対にスーパーマーケットは過去の大量出店による店舗同士の熾烈な競争により出店するエリアも少なくなり、同時にそれは、各店舗当たりの売上が小売店が出店する度に減少することになります。コンビニでも月商1500万位所は売上るので、コンビニができただけでも、近隣スーパーの売上は落ちる傾向にあるのです。

 出店攻勢が弱まり、各店の売上が伸びなければ、全体売上も上がりません。それは、スーパー業態で新規出店を目的とした借り入れが困難になることにもつながり、デフレと相まって業界全体の勢いが落ちる傾向にありました。

 私も顧客とのコネクションを強めることが業務の一環であったため、得意先の懇親の場に行ったり、店舗を巡回したりすることは頻繁でした。いまひとつ親しくなれなかった方もいましたが、仲良くお話ができる関係性を構築できた方もおり、特に取引先大手の方とは、良好な関係を作っておりました。


バイヤーとセンター長が組んで起こした事件

 小売店の顧客には、「バイヤー」と呼ばれる分野ごとの仕入れ責任者に当たる方がおり、多くはバイヤーが商品の特性や価格等の条件によって判断し、店舗に採用されるか否かが決まります。

 その中で、お客様の1件と物流センター長が、事件を引き起こします。

 B社にはほとんど無いはずの在庫ですが、ケース単位の仕入の残り以外にも、ゼリー・紙パック飲料等の長期保存可能な冷蔵ケース販売の商品は、在庫していました。

 少ないと言っても数百万円ぐらいはあります。普通の食品問屋と比べれば圧倒的に少ないだけです。

 バイヤーとセンター長は、それを利用して、「朝市」を勝手に開いたのです。センター長は勝手に在庫商品や仕入れの残を持ち出し、バイヤーは店が開く前の店頭を利用して販売するのです。

 何と言っても仕入が無料なので、相当売れたようです。普通に犯罪行為ですが、在庫の数量が合わないはずの当社では全く分かりませんでした。
なぜなら、まともな在庫管理をしていなかったからです

B社は営業の会社ですが、悪い言い方をすると、売ることしか考えてない会社です。発祥がA社の営業部門であり、そこから問屋として成長していないのです。物流センターの在庫は、欠品することで売上が下がることを防ぐための在庫管理であり、商品という資産を管理するための在庫管理では無かったのです。

倒産社長が伝えたい経営の教訓


社内の犯罪は、犯罪ができる場所で発生する

 罪を憎んで人を憎まずというわけでは無いのですが、やはり何をするにしても、犯罪行為ができない体制づくりが重要です。

お金をあちこちに落としておいて、取られたと騒ぐのは、取る方が圧倒的に悪いですが、本人も悪いと思います。

 制度と仕組みは性悪説で考える。これが基本です。信頼は大事なので、信頼する人が気の迷いをしないように、最初から歯止めしてあげるべきです。

 在庫管理を日々きちんとした上で、常に監視カメラを常備していれば、こうした事態は防止できたかもしれません。

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