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ふかわりょう「スマホを置いて旅したら」の感想

便利だけどわずらわしいのが、スマホ。

たまにはスマホを家に置いて出かけたいなと思いつつ、モバイルSuicaもPayPayも楽天ペイも使えなくなるのが面倒で、結局連れて歩いている。

今回紹介する「スマホを置いて旅したら」は、ふかわりょうさんが日本のとある地方を、スマホなしで四日間旅するお話だ。

ふかわりょうさんがエッセイを書いているのはなんとなく知っていたが、今回はじめて読んでみた。率直に言うと、取り扱っている題材はかなり好みだけど、自分にとっては何か物足りない…という感じだった。

今回はこの本のしっくりこなかったところも含めて、書いていきたい。

※内容に軽く触れます。あらすじ程度ではありますが、ネタバレが嫌いな方は先に作品をご覧ください。



よかったところ

まず、テーマ設定がとても好きだった。

スマホなしのゆったりした旅。いまどきに言うと「デジタルデトックス」を味わっている姿がいいなと思った。スマホがないことの解放感も不便さも、想像の範囲内ではあるけれど、スマホに対しての考えが自分と似ている気がして、ちょっとホッとした。


そして、旅行の内容も興味深かった。行く先は岐阜の美濃。
伝統工芸に触れたり、昔ながらの宿に泊まったりしつつ、旅の一番の目的はとても渋いスポット、○○○(伏字にさせていただきます)。

この時代に性別でくくるのはナンセンスだとわかってはいるけれど、落ち着いた女性が好みそうな旅程だ。

紙の本ならではの仕掛けもあり、この本は電子書籍ではなく紙で手に取ってほしいなと思った。


しっくりこなかったところ

私が一番ひっかかったのは「ふかわりょう、タクシー多用しすぎじゃない?」というところ。

自分のなかでは、一人旅でタクシーを使うのはリッチすぎるという考えがあって、ばんばんタクシーに乗るところがしっくりこなかった。

運転手さんとのあたたかなコミュニケーションもあり、タクシーでの移動も充実しているようだったので、それはそれでよかったとは思う。

でもタクシーでドアtoドアで移動するなら、そりゃあスマホなしでも大丈夫だよね、という冷めた思いを抱いてしまった。個人的には、事前に入念に下調べをしたり地元の人にいろいろ聞いたりして、なるべく公共交通機関で乗り継いでいくようなエッセイが読みたかった。


あと一つ気になったのは、描写がすんなり入ってこなかった点。読み終わってから巻末に掲載されている写真を見て「あれ?想像してたのと違った」と思うところが少々あった。

全体的に少し読みにくい文章だと感じたのだが、レビューでは読みにくさに言及している人がいなかったので、私の好みや相性の問題かもしれない。



扱っているテーマとしてはすごくよかったのだが、ところどころしっくりこない部分があった、というのが正直な感想だ。

とはいえ、ふかわりょうさんが訪問された場所はどこも魅力的に描かれているし、行きたいと思う場所も見つかった。「ことりっぷ」の雰囲気が好きな人は気に入るような気がする。


SNSに少し疲れている人や、美濃地方をのんびり旅したい人におすすめの一冊だ。

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