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小匙の書室105 ─ だから殺し屋は小説を書けない。─

 プロの殺し屋、〈雨乞〉。
 今日もボスから依頼を受け、新たなターゲットを前にしたとき一つの疑問が芽生え──。


 〜はじまりに〜

 岡崎隼人 著
 だから殺し屋は小説を書けない。

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🗣️3/14発売です〜〜‼️
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 2006年、第34回メフィスト賞を『少女は踊る暗い腹の中踊るでデビューし、本作は17年ぶりの新作。

 テーマは、

 ◤  殺し屋×小説 

 瀬戸内の小島を舞台に、痛快な殺し屋アクションが繰り広げられるのです──。


 〜感想〜

 小説を読んでいると、そりゃあもちろん色んな感情で満たされることになります。
 「これはじっくり読みたいな」とか「物凄く泣けるなあ」とか「予想に反して考えさせられる」とか。
 それでいくと本作は、「最後まで読み手を惹きつけるジェットコースターみたいな作品だ」でした。
 以下に読みどころをご紹介。

◯手に汗握るアクション
 本作を語る上で絶対に外せない魅力の一つがコレです。
 藪池というターゲットを狙うものの、ふと疑惑を覚えた雨乞。その裏側にある真実を探るため、ひょんなことから藪池と共に調査を開始するわけですが。
 迫り来る刺客とのアクションがめちゃくちゃ熱い!
 雨乞はプロの殺し屋で、相手も互角。そんでもって繰り広げられるのは文字通りの命の奪い合いで、
 危ない、雨乞! そこだ、雨乞!
 などと脳内で戦闘シーンを描きながらページを捲っていました。安易に藪池に危害を加えられない制約が、いっそう物語の盛り上げに加わっていて面白いのです。

◯個性的なキャラ
 雨乞をはじめ、登場するキャラは全員が個性的。そこにあるきな臭さ/胡散臭さっていうんですかね、本心では何を考えてんのかわかんないっぷりが、想像力を掻き立たせてくる
 殺し屋のボス、ターゲットの藪池、伝令役の鳩……。
 雨乞はもちろんのこと、私は花時計が好きです。

◯秘めた趣味を持つ、雨乞というキャラ。殺し屋は小説家を目指せるのか?
 たくさんの小説を読んでいると、必然的に私的に好みのキャラというのが確立されていくものです。
 その意味で雨乞は、私のストライクゾーンにバッチリ収まる存在でした。
 殺し屋になるためには、まずはその心を殺さなければならない。機微というのは命取りになるから。
 これは本作に限らず披露されるポリシーで雨乞もその例に漏れないのですが、ここに『小説家』という要素が加わることで、大きな化学反応を生むのです。

 小説家になるためには、ただ事実を綴るだけではいけない──。

 刺客の猛攻をかわす雨乞が直面する、内面的な問題。これが空っぽだった雨乞を徐々に人間臭いものに変えていき、結果として訪れる砂浜のシーンで私は最高にエモーショナルな気分になった。

 刺さる人には刺さる、最高の主人公です。

◯雪崩れ込むような展開。雨乞は目的を達成できるのか!!
 もう最後はコレにつきます。
 目的は二つ。
 疑惑を晴らし真実を掴めるのか。
 己が望む小説を書けるようになるのか。

 是非ともご堪能あれ──。


 〜おわりに〜

 一気読み必至、痛快な殺し屋アクションエンターテインメント!!

 頁数も280強と短めなので手に取りやすいと思います。それに文体のリズムも軽やかなので、即座に作品の世界観へ入り込むことができるでしょう。

 改めて──3/14発売です。

 願わくば、他の殺し屋のスピンオフとか読んでみたいな……。

 ここまでお読みくださりありがとうございました📚

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