小匙の書室108 ─本屋のない人生なんて─
出版不況、過疎化……本屋を取り巻く環境は、刻一刻と変わっていく。
そんな中、独立書店はいかにして生き残るのか──。
〜はじまりに〜
三宅玲子 著
本屋のない人生なんて
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🗣️3/21発売です〜〜‼️
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以前にこのような記事を書き、身近な書店がなくなることを嘆いたばかり。
今や書店の閉店告知は見慣れつつある光景となり、「なんとかして書店というスポットを護れないのだろうか……」と考えていた折、こちらの作品と出逢いました。
あなたは普段、気になった書籍をどこで購入しますか?
書店?
オンライン?
──もしもあなたの近くに書店があるならば、是非ともそちらに足を運んでいただきたい。
〜感想〜
「本が売れない」と言われる昨今。出版業界、そしてそこに連なる書店界隈は厳しい状況に立たされていることは間違いありません。
ただ、その中にあって、本作で紹介されている11の独立書店は如何にしてここを乗り越えようとしているのか。
本書の読みどころは以下の通りです。
◯個性的な独立書店。それを知るだけでも、書店界隈の広さを知れる。
全国チェーンではない。独立書店。本作で取り上げられているのは11店舗。
留萌ブックセンター(北海道)
今野書店(東京)
定有堂書店(鳥取)
ウィー東城店(広島)
ブックスキューブリック(福岡)
本屋 Title(東京)
高久書店(静岡)
双子のライオン堂(東京)
汽水空港(鳥取)
MINOU BOOKS(福岡)
橙書店(熊本)
独立書店はこんなにも存在しているのです。
◯各書店はどのような経緯で生まれたのかが、その地元の風土と書店主の人生と共に綴られる。
本作はノンフィクションであるから、綴られる事柄は全て事実なのです。
独立書店の一つ一つは、自然発生したものではない。その裏側には必ず書店を興すにあたっての書店主の人生がある。
これが非常に読み応えがあった。
それらが北は北海道、南は九州まで地域の風土と共に綴られており、私はこれ一冊で書店をめぐる日本旅をした気分になりました。
◯書店や出版業界の裏側を知れる。
ノンフィクションジャンルであるからこそ描けるリアル。
取次や配本、それらを管理する業務の苦悩。選書の妙。地方書店と都会書店の差。
本という媒体を余すことなく捉えた一冊であり、いかに書店が創意工夫なんかを内包した居場所であるのかを深く理解することができました。
◯書店を続ける上での、核。それは──。
先述した書店主の人生。
開業まで漕ぎ着けたは良いものの、それを続けるとなるとまた新たな力が必要になります。
本が売れないと言われる時代、書店主は何を以てして書店という空間を護るのか。
そこにあるパッションが私の心をガッチリと掴みました。
何気なく訪れている書店にも、想像を超えた歴史があるのかもしれない。
書店を見る目がガラリと変わることでしょう。
◯いま一度、書店のことを考えられる。
11店舗の過去と将来を見据えた本作を読み終えたとき、「書店業の難しさ」に宿る憂いもさることながら、「そんな中でも頑張る書店主がいる」という確かな事実が、私にひとつ前向きな気持ちにさせてくれるのでした。
無くなってしまう書店を嘆いているばかりではいられない。
存続している書店に、読書家として、何ができるのか。
これは、一度でも本屋に愛着を持ったことのある読書家にとって必読の書であると、いえます。
〜おわりに〜
ノンフィクションジャンルをがっつり読んだのは本書が初めてでした。
ここにはフィクションでは描き切れない、むしろフィクションを超えていくほどの揺るがないドラマがあります。
是非とも近くの書店でお買い求め頂きたいです。
3/21発売予定です。
ここまでお読みくださりありがとうございました📚
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