小匙の書室128 十角館の殺人
角島に建てられた、十角館。
そこに集う男女を襲った連続殺人は、伝説の一幕を挟んで本格ミステリの金字塔となる──。
〜はじまりに〜
綾辻行人 著
十角館の殺人
ミステリ好きならば知らない人はいない、名作中の名作。この作品を抜きにしてミステリの歴史は語れないほど、多くの作家に影響を与えた『十角館の殺人』は今から35年以上前に講談社ノベルスで刊行された綾辻先生のデビュー作です。
デビュー作ですよ、デビュー作。それからここまでのムーブメントを引き起こしたなんて、恐ろしすぎやしませんか……。
まだ読んでいないあなたが、とにかく羨ましい。
そんな本作が明日3/22にHuluでまさかの実写化ということもあり、私は再読するに至るのでした。
………………くぅぅ。
5年ぶりの再読でも色褪せない──!
〜感想〜
もうここまで有名な作品なら、感想を綴ったところで他の読了済みの方とほとんど同じものになってしまうことでしょう。
ただそれでもやっぱり、「実はまだ読んでいない」という方に向けて魅力をご紹介するのが『小匙の書室』の活動目的なのです──。
◯角島に建つ、奇妙な館。その名も、『十角館』
K※※※大学のミステリ研に所属する男女7名が訪れた孤島──角島。そこには十角形をした奇妙な館が建っているのです。この『十角館』は、ミステリ小説で一番有名といっても過言ではありません。
現実に存在するなら、私も足を運んでみたい。
※その異様な威容を建てたこの中村青司は後に〈館シリーズ〉におけるキーパーソとなり、多くの読者を虜にしてしまいます。名探偵や犯人ではなく、ただの建築家が愛されるというのも私には衝撃でした。
◯孤島で起きる連続殺人。本土で起きる死者からの手紙。
本作は孤島パートと本土パートにわかれて物語が進行されていくのですが、それぞれで追う謎が異なるので一冊で二つの味わいを楽しめるのです。
孤島ではミステリの王道となるクローズド・サークルの連続殺人を、本土では死者から届いた謎に隠された真実を。
再読によって本土パートもしっかり堪能することができたわけですが、私的に不謹慎にもワクワクさせられたのはやはり孤島パートでした。一人、また一人と命を刈られていく様は否応なしに某ミステリの女王が上梓した某有名作を彷彿とさせるからです。
次に誰が犠牲になるのか油断がならない。
初読時には「おいおいこんなに死ぬなんて聞いてないぞ……」と思いながら手に汗握っていたものです。
◯推理小説とは何か、という談義。
今でこそ社会派も本格も争うことなく肩を並べているわけですが、本作が初めて刊行された当初はいわゆる社会派ミステリが主流で、本格ミステリには向かい風が吹いていたのです。
そう考えれば冒頭におけるエラリイ(登場人物のあだ名)のセリフは、ささやかな対抗心の表れとして受け止めることができます。
ミステリ好きが求める推理小説とは何か❓
ただ……読めばわかるけれど、『十角館』は本格ミステリとして社会派のリアリズムを潰している(=批判に重きを置いている)わけではないんです。
だから、うん。この点については深く気にしすぎることなくお読み頂いて問題はありません。
◯誰もが口にしたくなって、だけどできない伝説の一幕。
『十角館の殺人』は未読のあなたへ。
ひょっとしたらSNSや、最近だとHuluの予告編なんかでとある宣伝を目にしているかもしれませんね。
“あの◯◯の衝撃”
と。
さあ、それは一体なんなんだろうと気になってしまったのならすぐに書店へ向かいましょう! ネットの世界にはどんな危険(ネタバレ)が潜んでいるかわかりませんからね!!
◯全てが終わったとき、どんな審判が下されるのか。
たくさんのミステリを読み通した上で再読したことにより、『十角館の殺人』の締め括りがミステリの様式美から少しだけ逸れているのだと気付かされます。(そんなわけねーよ、って思われたらごめんなさい)
だからでしょうか。
初読時から5年が経っても、常に新鮮な風が吹き付けるような読後感を得られるのは。
計画を立てた者に下される審判を、ぜひとも見届けてください──。
〜おわりに〜
は〜やっぱり面白い!!
私が今回読んだのは〈愛蔵版〉だったので、付録である冊子も併せて至高の読書時間となりました。
いや〜もうはじまっちゃうのか、Huluでの配信が。
先行上映で各作家さんから寄せられたコメントを見る限り成功しているそうなので、もう期待が爆上がりです。
ぜひとも、皆さんで感想を共有し合いましょうね。
ここまでお読みくださりありがとうございました📚
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