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マイナス30%の衝撃 新型コロナウイルスが日本経済に与えるインパクト

OECDの分析とフィナンシャルタイムズの報道

4月7日のフィナンシャルタイムズのマーティン・ウルフが、OECDのデータをもとに分析している記事は恐ろしかった。新型コロナウイルスで、経済的ダメージを一番受けるのは日本であり、年率マイナス30%まで下落するという予測を掲げている。ゴールドマン・サックスもマイナス25%と言っているので海外はどれも近い数字で、日本に警告を与えている

Already governments have given up old fiscal rules, and rightly so. 

すでに各国政府は(プライマリバランスを重視した)古い財政政策をあきらめており、それは当然のことだ。

Central banks must also do whatever it takes.This means monetary financing of governments. 

中央銀行だって何だってしないといけない。各国政府の金融政策だから。

Central banks pretend that what they are doing is reversible and so is not monetary financing.
中央銀行はあべこべに、これは金融政策ではないと、あざむいている。

Even “helicopter money” might well be fully justifiable in such a deep crisis.

ヘリコプターマネーですら、このような深い危機においては正当化されるというのに。

この警告を理解できないのが、日本の経済論壇である。ジャーナリズムも財界や日銀も含めた官僚も状況を全く理解していない。一番ダメなのは経済学者である。東日本大震災の時に復興増税に賛成した経済学者、東京財団で提言をだした経済学者は全員・追放すべきだ、と考えている。この人たちは日本以外では経済学者として食っはていけないだろう。

マイナス30%の恐怖、このインパクトを殆どの人が理解できていない。下記はコロナによってどの部門が狙い撃ちに合うかを分析したグラフである。

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ここには表現されないことがある。「公務員・警察・医療介護や鉄道・電気等インフラで働く人」や年金受給者などコロナの影響を受けないということだ。
このグラフは集中的に悪くなる分野、民間の特定分野への影響が甚大であるということを表現しているのだ。

百貨店や大型ショッピングモールとそのテナント管理の不動産が大打撃をうける。いま騒がれている宿泊と飲食より、もっと大きなダメージを受けるという姿である。これらの分野が30%悪くなるのではない。その分野が壊滅的な打撃を食う結果、日本全国でGDPが-30%も落ちるのだ。

マイナス30%は歴史にどんな爪痕を残したのか

人生でこのような数字を直接みたことがない。悲惨なリーマンショックですらこんな数字ではなかった。これは1929年の「大恐慌」までさかのぼらないと出てこない数字だ。

よく経済学者がハイパーインフレ、ハイパーインフレといって社会を脅すが、それよりももっと恐ろしいことが、この世にはある。大恐慌だ。それがいま起こりつつある。

第二次世界大戦の引き金となったのは1929年の米国の「大恐慌」だ。恐慌の結果、各国ともデフレが進み、経済的不満が国民の中に高まり、排外主義が拡がり、国際紛争の火種を拡大していったのである。

典型的には米国の「黄禍論」であり、日本人排斥とそれに対応するような、日本側の国連脱退という愚挙である。

恐慌は人々の生活と心を壊していく。日本でも515事件、226事件などの暗殺やクーデターが社会を襲った。失業者が山のように増え、仕事はほとんどない。それが日本が大陸に侵略した原因であり、戦争へと道を歩ませた。

世界人口が20億人の時代に戦争に巻き込まれて亡くなった人の数は8500万人に上る。4%の人が亡くなったのだ。日本においては国土が火の海になり、原爆を二つも落とされた。あの戦争の原因は「大恐慌」なのだ。

その事態がふたたび、日本を襲おうとしている。数年前、リーマンショック後の円高が長引いて日本経済が低迷し、派遣切りや家庭崩壊・ホームレス問題が起きたが、これがわずか二月で起きている。家庭内暴力で女性がひとりなくなっている。これがますます酷くなって増えてくるだろう。日本の治安も安全ではなくなる。混乱と混沌が日本中を襲うだろう。そしてこれを放置すると排外主義が拡がり、軍靴の足音が聞こえるような事態になるかもしれない。

それは最もおそろしいシナリオである。だから、一日も早い適切な経済対策が必要だ。大規模かつ財政と金融が一体となる政策を実行することだ。

日本が一番厳しい理由

日本がとりわけダメージが大きいのは、2019年秋の消費税増税を行ったからだ。10~12月のGDPは年率-7.1%となった。-7.1%沈んだところにコロナウイルス問題が起きた。例年なら、ボーナス商戦で財布のひもが緩くなり、買い物も増え、忘年会や新年会でそれなりの売上で景気が盛り上げるはずの時期に、景気が大きく落ち込み、企業は消費税の納税でキャッシュローが落ちた。そこにコロナがやってきた。客足が途絶え、売り上げが落ちる。

体力のないところから企業破産が出始めている。大手タクシー会社の全従業員解雇が発表になった。会社都合の解雇で直ちに失業保険がもらえる。正しい雇用保険の使い方でもある。最長330日分失業保険がもらえる。これも選択肢の一つだ。

わずか、ひと月二月を乗り越えられない企業が山のようにある。飲食店や物販店は消費税増税で、ただでさえ体力が落ちているところに、コロナはショックが大きすぎた。コロナ対策は、長引けは長引くほど、破産・倒産・私的整理は増えるだろう。大手だから必ず助かると思ってはいけない。既に航空機会社は黄色サインが付き始めている。

これは、日本の首都圏や関西地区など大都市の魅力が根こそぎダメになるぞという警告である。銀座も歌舞伎町も新地もミナミも全て消えてしまい、百貨店も残らない姿である。場合によっては「イオン」すら残らないかもしれない。地方からイオンが消えたら、どうなるのだろう。

数字で事態を読む

2018年の企業の内部留保は463兆1308億円となった。製造業が同6.7%増の163兆6012億円と拡大をけん引したとある。製造業の内部留保金を差し引くと、非製造業のそれは300兆円である。

今回の予測、550兆円のGDPマイナス30%、165兆円は企業の内部留保金を侵食する。しかも非製造業の300兆が狙い撃ちに合うのだ。こうなると大きいから倒れないとはいえない。大手も含めて半数以上の企業の資金が枯渇し、倒産することを意味するからだ。しかも一年で済むとは限らない。対応を間違えば、どんどん収縮がひどくなる。

結果として、税収も大幅に減るし、大量の社会保険料が納付されないことになるだろう。このショックでは雇用吸収力が高いサービス業が狙い撃ちになるので、大量の失業時代がやってくる。そして過去の例では強烈なデフレとなっている。

サービス業だけの問題ではない

サービス業だけと思ってはいけない。工作機械受注額という先行指数がある。工場のロボットを作るメーカーの受注額だが、昨年2019年は毎月前年対比-40%代だった。消費税増税で売り上げが落ちると予想されるので、製造企業が設備投資を控えたのだ。そしてコロナウイルスの結果、さらにメーカーの投資はマイナスとなる。その結果、来年のGDPも落ち込んだままという事になるだろう。長い不況が日本を襲う。不良債権が数多く出て、次は銀行の体力を奪う。

消えると推計されると同額のお金を政府がばらまかない限り、民間からお金が消える。いまのように民間にお金を融資したとしても、何の意味もない。それはいずれ返さないといけない、政府に戻す借入だからだ。一時借り入れだけが大きいゾンビ、それが日本の企業の姿となる。

この状況はだらだらと何年、下手をすれば何十年も続く。その間に借金漬けの企業は消えていく。失業率は高いまま、失われた30年が50年となり、企業は競争力を失い、GDPは低いままである。それは日本が先進国から凋落し、発展途上国に陥るという事だ。

では回避できないことなのだろうか。マーティン・ウルフが言うようにあらゆる手段をとるべきだ。中でもヘリコプター・マネーこそが大切だ。

重要なのはGDPの30%にあたる165兆円を政府が民間にばらまくことだ。ヘリコプターマネー、本当にヘリコプターから一万円札をばらまくことだ。

165兆円を赤字国債を発行してばらまくことだ。そうしないと、再び戦争に巻き込まれる事態、いや日本人が戦争を引き起こす事態になるかもしれない。この危険な状況を変えるために、国民一人一人が声を上げていくことである。

いまこそ、ヘリコプターマネーを!







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