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バーナンキはバブル崩壊から何を学んだのだろう

◆バブルって

日本人なら「バブル」という言葉を一度は聞いたことがあるだろう。株価が4万円近くまで跳ね上がっていたとか、日本の地価がどんどん上がっていったとか、人手不足で新卒は就職口が山のようにあって、取り合いになったとか。

千昌夫が「歌う不動産王」と呼ばれ総資産3000億を保有していた時代である

今では想像すらできないようなことである。それがある時から一転した。バブル崩壊である。株価は大暴落し、地価は下落し、仕事もなくなった。仕事はなくなりすぎて、ロストジェネレーションと呼ばれる世代まで作り出してしまった。借金苦で大勢の人が自殺し、ホームレスが増え、離婚も増えた。

◆バブルはなぜ崩壊したか

信用力

前回、岩井克人批判としてこんな図をいれた。バブル時に金融政策において二つのことが急に起きた。⑴日銀総裁に三重野か登場して、金利を急激に上げることと、⑵大蔵省が総量規制を引くことである。総量規制とは、1990年3月27日に、当時の日本の大蔵省から金融機関に対して行われた行政指導である。

大蔵省銀行局長通達「土地関連融資の抑制について」では、不動産向け融資の伸び率を総貸出の伸び率以下に抑えることとした。行き過ぎた不動産価格の高騰を沈静化させることが目的であった。

◆金利の引き上げ

バブルで貸し出しの市場が大きくなっているときに、いきなり金利を引き上げると返済が出来ない企業が増えて下図のような事態になる。

金利の上昇と不良債権


バブル時のように目いっぱいの貸出が行われているときに、いきなり10%まで金利を引き上げると、債務が返せないところが出てくる。これが不良債権となる。バブル崩壊以降、よく耳にした不良債権とは、日銀と大蔵省が土地の高騰を抑えるために行った急ピッチの金利上昇と総合規制という政策によって生まれたのである。

◆総量規制

総量規制はどういう影響を与えたのか。「不動産向け融資の伸び率を総貸出の伸び率以下に抑えること」はしごく真っ当な政策のような気がするが、地価が上がり過ぎているタイミンクで、この制限を出すと、土地の転売益で儲けようとしていた人たちは、次の転売先を失う。土地を高値でつかんだ人たちが、土地の値下がりによって借りたお金が返せなくなる事態が起きる。

それはこんな形で不良債権を産み出してしまう。


不良債権 信用枠の制限

バブル崩壊とは地価を下げるという錦の御旗のもとに人為的に行われた経済政策の結果である。かわいそうなことに千昌夫は「歌う不動産王」から「歌う借金王」に転落してしまった。

ここで気が付いてほしいのは、金利を上げても不良債権が出るが、総量規制でも不良債権が出る。両方で引き締めを起こしてしまったために、面積であらわされる不良債権は膨大な量になった。債権回収が一斉に始まった。売り手があまりに多く、買い手が少ないとき、価格は下がる。もともと地価を下げることを目標としていたのだから、当然といえば当然である。


債権の貸出担保である土地や建物といった不動産を売却しても、債権を全額回収することが出来なくなってしまった。その場合起きることを銀行の簿記であらわすと下記のようなことである。
   資産の部 債権  資本の部 自己資本 

回収できない債権(資産)によって銀行の自己資本が相殺されて資本が消えていく

当時の大蔵省の幹部や日銀の関係者はこういう事が起きて、銀行が破綻するのではないかという危機感は全くなかったのだろう。

日本長期信用銀行をはじめとして、数多くの金融機関が破綻したり、経営危機となり、公的資本注入と合併で16行あった都市銀行は三つにまで減ってしまった。日本の銀行には高度成長期の含み益が莫大な金額で眠っていた。地価を下落させ、それらをすべて吹き飛ばすような事を日銀と大蔵省がわざと引き起こしたのである。

◆貸出資産と銀行資本が簿記で相殺されること

これは銀行が市場に貸出たマネーが市場から一挙に消えることである。マネーが蒸発したといってもよいかもしれない。そして下記のことが起きた。

⑴地価の下落が起きる

⑵銀行の貸出担保の都市価格も下がる

⑶貸しはがしと貸しはがし

貸しはがし 貸出担保に余力がないので債権を強制的に返すよう求める  貸し渋り 借入を要望しても担保に余力がないため貸さない(貸し渋り)

⑷民間銀行の信用創造力が下がり、企業活動が低下、総需要も低下する

日本のバブル崩壊の過程で起きたのは、民間銀行の信用創造力が破壊された結果起きたメカニズムを説明するとこういうことである。

◆フィナンシャル・アクセレーターメカニズム

バーナンキは経済に成長と逆向きのことが起きる原因は「マネーの蒸発と」であり、その結果、恐慌や長引く景気低迷が起こることを日本経済からつぶさに学んだ。この学びから、お金が蒸発した時には、お金を「ヘリコプターからはらまく」ことだ。それが重要だ。そして、再度、経済が順調に成長する軌道に乗せることが大切だと気が付いたのである。

これがフィナンシャル・アクセレーターメカニズムである。この研究を深めた結果、米国経済をリーマンショックから救うことが出来たのである。

リーマンシッョクも原因は不動産投資ファンドの失敗だったからだ。

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