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詩歌ビオトープ

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歌人や俳人、詩人の分布図を作るプロジェクト
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詩歌ビオトープ030:近藤芳美

詩歌ビオトープ030:近藤芳美

詩歌ビオトープ30人目は近藤芳美です。

この人は1913年、朝鮮馬山浦で生まれました。12歳で帰国し、広島県に住んでいたそうです。高校生の頃短歌に興味を持ち、広島で療養していた中村憲吉を訪ねたことがきっかけでアララギに入会、中村と土屋文明に師事しました。

大学卒業後は建設会社に入り、設計技師として働く傍らアララギの活動もしていたそうです。

終戦後の1947年には加藤克巳、宮柊二らと「新歌人集

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詩歌ビオトープ029:宮柊二

詩歌ビオトープ029:宮柊二

詩歌ビオトープ29人目は宮柊二です。

この人は1912年に新潟県で生まれました。北原白秋に師事して「多摩」の創刊に参加、戦時中は召集され、そのときの経験を詠んだ「山西省」は戦争詠の代表的な歌集といわれています。

戦後は「多摩」の後継誌として「コスモス」を創刊。「コスモス」は今も会員がたくさんいて、歌壇における重要な一派といえるのでしょうね。

門下生もたくさんいて、島田修二や高野公彦、河野裕子

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詩歌ビオトープ028:中野菊夫

詩歌ビオトープ028:中野菊夫

詩歌ビオトープ28人目は中野菊夫です。

この人は1911年に東京都で生まれました。中学生の頃石川啄木を読んで短歌を始めたものの、特に誰かに師事するといったことはなかったようです。

その後多摩美術大学でデザインを学び、卒業後は学校の図画の教員となりました。

歌人としては、戦後「人民短歌」の創刊に関わり、その後自身の歌誌である「樹木」を創刊します。

この「人民短歌」はいわゆるプロレタリア文学系

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詩歌ビオトープ027:香川進

詩歌ビオトープ027:香川進

詩歌ビオトープ27人目は香川進です。

この人は1910年、香川県に生まれました。大学在学中に前田夕暮に師事し、自由律短歌を始めます。

大学卒業後は三菱商事に入社、サラリーマンとして働いていた頃に戦争が始まり召集、戦後の1952年に第一歌集となる「氷原」を上梓しました。

その後は文語定型短歌へと回帰し、1953年には山本友一らと歌誌「地中海」を創刊。1998年に亡くなりました。

今回も、小学

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詩歌ビオトープ026:山本友一

詩歌ビオトープ026:山本友一

詩歌ビオトープ26人目は山本友一です。

この人は1910年生まれ、19歳の時に窪田空穂の創刊した「国民文学」に入会し、松村英一に師事しました。その後、香川進らと「地中海」を創刊。「国民文学」も「地中海」も、今でも続いている短歌結社なのですね。

満州鉄道に勤務していた頃に日中戦争が開戦、現地で召集されました。その頃の経験を詠んだ戦争詠が高く評価されているそうです。

さて、今回も小学館の昭和文学

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詩歌ビオトープ025:佐藤佐太郎

詩歌ビオトープ025:佐藤佐太郎

詩歌ビオトープ25人目は佐藤佐太郎です。

この人は1909年に宮城県で生まれました。大学卒業後に上京して岩波書店に入社、この頃斎藤茂吉に師事して「アララギ」に入会します。1945年には岩波書店を退社し、自らの第一歌集の名を冠した歌誌「歩道」を創刊しました。この「歩道」は今でも精力的に活動しているようですね。

さて、今回も小学館の昭和文学全集35に収められた歌を読んでいきます。

本書には第一歌

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詩歌ビオトープ024:斎藤史

詩歌ビオトープ024:斎藤史

詩歌ビオトープ24人目は斎藤史です。

この人は1909年、東京都に生まれました。お父さんが軍人でありながら歌人でもあり、その影響で佐佐木信綱に師事して若い頃から「心の花」の同人だったそうです。その後、前川佐美雄らの新芸術派運動に参加しました。

若い頃はまるで絵本の世界のような幻想的でロマンチックな歌が多かったそうですが、27歳のときに二.二六事件があり、幼馴染だった青年将校の多くが刑死、父親も

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詩歌ビオトープ023:窪田章一郎

詩歌ビオトープ023:窪田章一郎

詩歌ビオトープ23人目は窪田章一郎です。

この人は、窪田空穂の息子さんですね。1908年に東京で生まれ、父である空穂に師事しました。空穂主宰の短歌雑誌「まひる野」発行の際は発行編集を務め、空穂没後は主宰となりました。この「まひる野」は現在も活発に活動されているようですね。noteもありました。

さて、今回も昭和文学全集35に収められた歌を読んでいきます。

本書には、「ちまたの響」から57首、

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詩歌ビオトープ022:渡部直己

詩歌ビオトープ022:渡部直己

詩歌ビオトープ22人目は渡部直己です。

この人は1908年に広島県に生まれました。「アララギ」に入会し、土屋文明に師事。高校教師だった頃に日中戦争が始まり、招集されました。

この頃に詠んだ戦争詠が高く評価されているとのことで、昭和文学全集35にも53首の歌が収録されていました。

全体的には写実的な歌が多く、僕の分類ではxが20、yが11の「絵画的かつ自然主義的」な人となりました。

ただ、W

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詩歌ビオトープ021: 小暮政次

詩歌ビオトープ021: 小暮政次

詩歌ビオトープ21人目は小暮政次です。

この人は1908年、東京都生まれの人です。「アララギ」の同人となって土屋文明に師事、「アララギ」解体後はアララギ系の歌風を引き継ぐ結社「短歌21世紀」をつくりました。「短歌21世紀」は今も活発に活動している団体なんですね。

さて、今回も小学館の昭和文学全集35に収められている歌を読んでいきます。

本書には「新しき丘」から30首、「春望」から35首、「薄

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詩歌ビオトープ020: 葛原妙子

詩歌ビオトープ020: 葛原妙子

詩歌ビオトープ20人目は葛原妙子です。

この人は1907年に東京都(当時の東京市)で生まれました。でも、幼い頃に父方の伯父の家に育てられたのだとか。

高校卒業後に医師である夫と結婚し、3人の子をもうけます。そのうちの1人はサトクリフの翻訳なんかで有名な猪熊葉子なんですね。びっくり。

短歌を始めたのは32歳のときということなので、早くはないですね。潮音社友となって太田水穂、四賀光子に師事したそ

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詩歌ビオトープ019: 坪野哲久

詩歌ビオトープ019: 坪野哲久

詩歌ビオトープ19人目は坪野哲久です。

この人は1906年に石川県で生まれました。大学に行くために上京、大学生のときにアララギに入会して島木赤彦に師事しました。でも、すぐに島木赤彦が亡くなってしまうのですね。

その後は新興短歌連盟に参加、大学卒業後は東京ガスに入社します。で、労働組合運動に参加しながらプロレタリア短歌を推進していきました。この頃は、自由律短歌をしていたそうです。でも、労働組合運

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詩歌ビオトープ018: 木俣修

詩歌ビオトープ018: 木俣修

詩歌ビオトープ18人目です。今回は木俣修を取り上げます。

この人は1806年に滋賀県で生まれました。幼少期から「赤い鳥」や「金の船」などに詩や絵を投稿していたそうです。

1927年、東京師範学校入学とともに上京し、憧れだった北原白秋に弟子入りします。しかし、その頃白秋は自身の雑誌を持っていなかったので、白秋系である村野次郎主宰の「香蘭」に参加したり、前田夕暮の「詩歌」に籍を置いたりしたそうです

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詩歌ビオトープ017: 生方たつゑ

詩歌ビオトープ017: 生方たつゑ

詩歌ビオトープ17人目は生方たつゑです。

いやー、やっと女の人が来ましたね。

この人は1905年に三重県で生まれました。日本女子大学を卒業後、結婚して群馬県に移り住みます。その頃「アララギ」で活動していた今井邦子に師事します。そうして30歳のときに処女歌集「山花集」を上梓しました。てことは、最初は「アララギ」の人だったんですかね。どうなんだろう。

戦後は窪田空穂がつくった「国民文学」に入会し

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