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雨模様10


このセクターには全部で5人の人間が居合わせていた。タスクさんが亡くなって全部で4人、あたしを足して5人。

「誰かこの部屋の構造について詳しい人間は居ないか?」

先程、叫び声をあげていた女性が名乗り出た。

「セクターはたくさんあるけど、その殆どがトラップよ。私達は何かしらの実験の被験者として集められたみたい。」

「セクターというのは部屋のことだね?」

「そうよ。セクターは全部で10,000個以上あるの。パズルのようにセクターは移動してしまうから、出口のセクターを見つけるのは無理な話しね…じっとしてるのが良策っていう訳。恐ろしいトラップが仕掛けてあるから…」

あたしは猛烈な眩暈と共に、何か頭に浮かんだのだが、それが何だったのかはっきりと思い出せない。既視感。そう、デジャヴ。この場面は何か、以前に見たことがある。あたしは確信を持ち、言葉にしてみた。

「今、あたし達が遭遇しているこのセクター、まあ部屋という事だけれど、ホラー映画『CUBE』の設定をそっくりそのまま真似ているような気がします。」

要以外の4人は、要の発した言葉の意味するところが、良く理解出来ていないようだ。

身体つきもがっしりした、リーダー的な引率力のありそうな男が話を始めた。

「俺も観たことがあるよ、その映画。結局、仲間割れして死んで行くんだ、全員」

何故、あたし(達)はこの仮想空間の中で、映画の中に描かれた物語を体験させられているのだろうか?あたしが体験してるのは、「物語」だわ。これらの「物語」を体験することで、一体あたしはどうなるっていうのかしら。

あたしは、映画のストーリーのように仲間割れせずに、とにかくじっと待っていれば、このヘンテコな装置から抜け出して、元の世界に戻れるとしきりに説明した。

先程のリーダー格の男が言った。

「そもそも、君がこの仮想空間に迷い込んでしまったきっかけは何か憶えているのか?」

そう、あたしはミヤオを探しているのだ。それでも何故、この空間に自分が居るのか分からなかった。

「あの、あたしは飼い猫のミヤオを探している内に変なサイトにアクセスさせられたんです。」

すると4人の身体はハリボテのようになり、ヒュウっとどこかへ飛んでいってしまった。

今はあたしはサバンナのような場所に立っている。

屹立した大きな黒い石。

「これはモノリスだわ…」

つづく