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伊坂幸太郎 AX(2017)

今回は最近読んだ本。
というかマリアビートル読んだら続編でもあるAXを読み直す欲が高まりすぎて気付いたら読んでました。仕方ないですね。

今回は結構ユニークで、前作はマリアビートルの閉鎖空間よろしく殺し屋まみれのお祭り騒ぎと言った感じでしたけど、AXは兜と言う通り名の殺し屋だけにフォーカスして話が進められていきます。
意外とこのシリーズ初めての妻子持ちだったりします。表は文房具メーカーの営業社員として、裏は殺し屋として。今まではやたら濃いキャラが多くて一般社会から逸脱してるようなのが多かったんですけど(殺し屋だし当たり前ではある。)、今回は逆に妻を恐れる恐妻家として人間味溢れすぎるキャラクターで面白いです。

妻に声を掛けられるだけで背筋が伸び胃が引き締まる…夜遅くに帰る時は些細な音も立てられないのでもっぱら夜ご飯は魚肉ソーセージ…果てには妻の一挙一動を記録してどう応対するべきかをまとめたトリセツノート。でも裏稼業としての実力は本物で、依頼をこなしていく。最初はそんなギャップをちょっとコミカルに、たまにはシリアスに、描写されることで兜のキャラクターがより鮮明に浮かび上がります。もう感情移入ですね、感情移入。まあ僕結婚してないしそんな恐妻家になるような関係でもないですけど。

そんな兜が息子の誕生・成長を機に、裏稼業から足を洗うことを目指す。
でもそう簡単に抜けられるわけもなく…って感じのお話。ジョン・ウィックも結局抜けられなかったですね。業を考えろということでしょうか。

僕のnoteで小説とか本を取り上げる時は一応人に勧める体ではあるので、ネタバレは避けたいんですけど、避けつつ紹介って難しいですね。
適当に余談でも挟んで終わりましょうか。

小説は書いてあることがすべてで、書かれていない部分は、「書かれていないことに意味がある(埋めてしまっては意味がない)」と思っています。絵の中の白い部分のような感じです。ですので、みなさんの質問に対しては、物語の裏設定を説明するというわけではなく、僕自身がその場で思いついたものを(大喜利に答えるような感覚で)回答していると思っていただければありがたいです。
                                        ――伊坂幸太郎

上記の1問1答で書かれてる注意文みたいなもんですけど、この考えすごく好きですね。
まあ考察好きをたたっ斬ってるって側面もありますけど、聞くだけ野暮読者の想像に任せるっていうのが至極真っ当な気がして。個人的にはとても共感します。別に裏設定とかを否定してるわけではないんですけどね。考え方として。

ただ1問1答でも言及されてるけど、今回5話構成でAX・BEE・Crayon・EXIT・FINEと並ぶんですが最初の3話は短編で後ろ2つは今回の書き下ろしなんですよね。
A~Fと並んでるのから分かる通りDもあったみたいで、ただ書き上げることが出来ず結局没になったみたいです。
そういう意味でしこりみたいなものが残りそうなのでここらへんはスッキリさせて欲しかった気がする、うん。あ、本編自体はスッキリです。読後感はやっぱり良いものですね。

伊坂幸太郎ばっかり紹介してるのでたまには他の本も紹介したいお気持ち。
なんかないかなあ。

おわり。

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