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眠い日、読んだ本のこと

午前中、瞑想してたらとても眠くなって、気絶するように寝てしまう。
(そんなことも久しぶり)

時間はあるようであっという間だ。
長女との隔離生活だから、ときどき煮詰まりそうになる。
(長女も退屈なのは分かってるのだけど)

それでも空いた時間に本を読めるのは、普通の休日じゃできないこと。

少しずつ大切に読んでいて、あと数ページで、読み終わるのがこの一冊。



『汝、星のごとく』の続編。
暁海と櫂目線でしか語られなかった物語が、この本を読むことで奥行きが増す。

一番新鮮だったのが北原先生のはなし。
本編では語られなかった過去に焦点が当てられて、そんなことがあったの!と胸を穿たれた。それは暁海も知らないことだったから。

本編の北原先生は暁海目線で語られるから、どこまでも理知的な先生のイメージだった。
それが読むと全然変わってくる。人は多面的な生き物だから、それは当たり前なことなんだろう。

前作でも思ったことだけど、凪良ゆうさんが描く愛の形はとても現実的だ。
お互いだけを見つめる恋愛とは違って、
(もちろん恋も描かれるのだけど) この世界を生きていくために必要な絆が描かれる。

生きるのに必要な信念があって、大切なものを守るために北原先生は行動する。
生前の櫂を愛した暁海も、その他たくさんの人々も譲れないものを持っている。
ふわふわ甘いだけじゃない、現実の愛はとても過酷で、そこには生活していくのに必要な重さと責務がある。
幸福の形も関係性もみんな違っていて、永遠に変わらないものなんてない。
譲れないものを抱えながら、みんな寄り添ったり、離れたりしながら生きていく。


本編で十代だった暁海はどんどん大人になって私と同い年になり、また月日が経っていく。
読みやめるのが惜しくて、ページが進まなくなる。そういう小説はなかなかなくて、それだけ私にとって特別だったということだ。
正しさが生みだす呪いを溶かしてくれる物語。

何度か目を留める文章があって、反芻したくなる言葉が、それこそ星みたいに物語に彩りを添える。
この本も本屋大賞の候補になっていたはず。
(他に気になる本もいくつか)


素敵な本を読むと自分も書きたくなる。
暁海の人生と重ねるように、自分の今までの道のりを思う。
恋愛や結婚、家族のこと。
自分で選んだ職業のこと。
目指してきた場所のこと。

北原先生は終盤、自分のことを平凡と言ったけど、私からすれば充分ドラマチックだ。


今日も、明日も、それぞれの胸に星のように輝く物語を編むために、ぼくたちは地上を歩む。

『星を編む』より



どんな弱さも肯定する物語のテーマが、絶え間なく寄せる波みたいに人生を照らしてくれる気がした。




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