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『Summer Pockets REFLECTION BLUE』プレイレポート(下)~グランドルート編

こんばんは。

まだ夏を振り返りながら。
『Summer Pockets REFLECTION BLUE』をプレイした感想、その後編となります。
一応物語の最後までを辿りますので、ネタバレを避ける方はここでUターンいただければと思います。

この記事では個別ルートの先のALKAからPocket、いわゆるグランドルートを辿り、プラス全編を通しての感想など書き残したいと思います。

なお、本記事を書く上で無印『Summer Pockets』の公式サイトに掲載されていたショートストーリー「~夏の眩しさの中で~」も読破しました。

それ以外は極力目を通していないので、全然見当違いのことを言ってるかもしれませんので温かく流していただければ。
(後発プレイだとファンブックの類はまず手に入れられないのが辛い…!)
感想に添えて、自分なりに受け取った解釈を残してみたいと思います。

それでは、よろしくお願いいたします。


最後まで盛り上げ続けた音楽

Pocketまで通して、音楽がプレイ体験をずっと支えてくれました。
「Sea, you」シリーズや表題曲の「Summer Pockets」はもちろんですが、
「夏休みの過ごし方」「影は色濃くて」は情景やテンションを適切に印象づけるためとりわけ耳に残っております。
キャラテーマだと「Other Side Blue」「Splash Green」が特に好き。

また、一曲として起承転結がしっかり用意されている曲が多いのも印象的。
ヒロインとの大事なシーンを彩る「眩しさの中で」や、終盤を盛り上げる「アルカテイル-Story-」は生オケが用いられたりもしており何度もでも聴き入ってしまう。最も好きなボーカル曲は、後にも触れる「夜奏花」です。

立ち絵から見るキャラ色々

さてビジュアル面も見てみましょう。
ちょっぴり個性的なキャラ立ち絵について。
動きこそないものの、会話しながら立ち絵が変化したりと細やかな変化はあって十分「動」が伝わりますね。

そんな立ち絵もじっくり考えると、いろいろ伝えてくるものがありました。
例えばギャグ表情を持つキャラはとりわけ感情豊か、という私の持論があったりもします。

▲今作のギャグ顔持ち。あとは照れ顔がある鏡子さんも?

一枚絵でもギャグ顔かます蒼と識はともかく、本編ではそう見えなかったとしても、心は感情豊かなんだろうな、と予想することも出来るのです。クサい(?)ネーミングセンス持ちなしろははきっと内心百面相…それだけに本編ではいろいろ辛い目に合っているのが…
うみちゃんも控えめながら表情持ち。子どもらしい部分ということか、なんだかんだしろはの子ということか…関連性や連なりも見えてきそう。

ポーズにも着目。うみとしろはの二人だけ、動揺したときに「胸の前で腕を組む」立ち絵ポーズを持ってます。しろはを追いかけて続けて、真似をするようになったのかな?と思うと微笑ましい。

▲気づいてから見ると、「ああ、母娘なんだな」って

ALKA~うみ、最後の夏休み~

いよいよ始まるグランド

まず初っ端の演出で「うみちゃんの物語だったかー!」と手で顔を押さえたところからスタート。キーキャラであることはわかっていたけどいきなり来ましたね…同時にうみルートで残ってた空きスチルの意味も解ってちょいと残念だったり

▲開始数秒、ウインドウタイトルで察する

羽依里視点に戻りまたもや鳥白島の夏…と思いきや、初日にうみちゃんと対面するわ鴎と出会う日すら変化してるわ…まるっきり違う夏の気配。

▲ここにきてうみちゃんの名前の漢字も発覚

このルートで、うみちゃんの過去と出自が明かされました。
表の側面としては、しろはルートの要素を拾いつつもうみちゃんが最高の夏休みを過ごせるようがんばる物語。
裏の側面としては、作中で何が起こっていたか、世界観の一端を提示する役割がありました。
予想できたもの、そうでなかったものを織り交ぜ、物語の最後まで真相を見透かせないようになっていたのは見事。ついでに物語の進行度を察せないよう配慮されたスチルギャラリーにも拍手したい。
不安の描写を撒いてから、それが花と開くまで結構引っ張られたので、終始ドキドキしながら見てました。

また、プロローグだけだった羽依里のパートボイスも、(一時的に)確定した未来の場面においては復活してました。羽依里の声が入ると、その場所にはもう介入できないんだろうな…って思ったっけ。
あと、先に書いちゃうんですが、羽依里は色々報われなかも、と。主人公という位置づけですが、実際に一番がんばってるのはうみちゃんだし支えていたのは鏡子さんだし…彼もまた記憶を引き継いでいたからこそ最後に結びついていますが、元の世界線の羽依里はどんな失意と思いを抱えていたのでしょう…それはそれで知りたかったな、というのがまた一つ寂しいポイントでした。

ようやく見られた交流の数々

うみちゃんが島の人と交流するのはもちろん、自身のヒロインルート以外でほぼ出番のなかった鴎、紬、静久も出番が増えていたのが嬉しい。

▲二人同時に自己紹介されるとかもはや衝撃すらある

おかーさん役のしろはを中心に、蝶の捉え方を教える蒼、歌の楽しみを伝える紬、絵本の手ほどきを施す鴎…と無印ヒロインたちが最高の夏へバトンを繋げていった点はまさにグランドらしい要素だと思います。

▲この先を示唆して敢えて見せないのニクイなー!ほんとなー!

あと、しろはの優しい声もいっぱい堪能できて、メインヒロインここにありと思わされましたね。

▲しろはルートとはまるで声色が違うのよ。これがまたいいのよ

花火の下で最後に繋がる家族

クライマックスの花火大会のシーンはシンプルに泣いた。この場面は花火が持つ、一瞬の儚さとそれゆえの鮮烈な記憶という印象の二面性を活かしているようで…ただひたすらに切なく苦しかったです。

▲花火が終わった後の寂しさと実際の出来事がリンクするのがもう

ここぞというCGの畳みかけに「夜奏花」とのコンボで全力で泣かしに来られて、しっかり泣かされたシーンでした。

▲このうみちゃんの涙が一番堪えた。子どもに親の幸せを慮られるのは涙腺にくる

Pocketルート

根本の因果を断ち切るため

ALKAルートラストでは、夢の形で示唆された結末が事実として突きつけられたこと。それはうみちゃんが干渉せずともその未来に収束する…つまり、ALKA経由前からこの結末は確定していたことが明らかになります。
(力に目覚める以前でもうみのおかーさんはいなかった=同じ結末を辿るため)

▲あの流れから希望が絶望へ転換するのは辛い

Pocketルートでは、そんなループを起こす根源である「しろはが時の編み人になる運命」を打ち崩すべく、七海の奮闘と、それによって得られた結末が描かれました。

幼いしろはとの交流

Pocketの前半は、七海と幼いしろはとの交流がメイン。
幼いころからすでにぼっち気質が発動しまくっている…やはり、これは生来のモノなのかもしれません。

▲最初から見切れてたら小鳩さんもぼっち連呼しますって

しろはがおとーさんのチャーハンを求める日々の中で、最後の隠し味も明らかに。これが未来を変える最重要ピースだったと、今では思います。
単に輪廻を断ち切るだけでは、同じことの繰り返しですもんね。

▲きっと100点チャーハンはこの時はまだ遠かったのだろう

時の編み人となってしまう寸前のところで、七海から手渡された"未来の思い出"で前を向けるようになるしろは。ここから始まる最後の別れは本当に見てて心が痛かったですね…

▲"母親"としてのしろはの声が重なったときの鳥肌よ

一方頭には「何故未来のしろはが…?」と過りました。
今考えると七海となって過去を渡る所へしがみついたんだろうな…と解釈してます。
恐らくうみちゃんだけでは自分が居た時以前の過去には戻れない(自身が存在しない過去は観測しようがない)はず。より過去へ戻るなら、その時代を生き得た人の助けが必要だったのです。そしてその一人がしろはだった…なら納得。

▲一瞬見えたビジョンは羽依里かしろはしか持ちえませんしね

謎が謎呼ぶ鏡子さん

そして、Pocketでもう一人のキーパーソンなのが鏡子さん。七海との交流では意味深な発言を連発しました。なおわたしにとっては島ポンファイトにて昔の姿の立ち絵(=過去編がある)をネタバレしてきた人です。

▲この姿を見て察するなという方が難しいのよ
なお島ポンENDはヒロインエンド1個だけクリアした時期…序盤も序盤だった…

ショートストーリーなどを見る限り、おそらくは瞳さんにいろんなことを託されてたんでしょうね。
一番の苦労人だったけれど、最後の結末へたどり着けたのは間違いなくこの人のおかげ。
鏡子さんは、やりたいことを見つけられたのでしょうか。この先何をやっていくのか、明かされなかったのもこのゲームで数少ない残念ポイント。

▲見透かされたような一言に戦慄。思えば、不意に口をついた言葉なのかも

そして少し変わった未来へ

うみが現世の理から外れた時間軸で、羽依里は再び2000年の夏に鳥白島に下り立ちます。変わったのはしろはが「父のチャーハンの味を完全にものにしている」こと、「前を向くとともに時の編み人としての力を得なかった」ことの2点。
しろはと羽依里を繋ぐ接点が消失し、二人が結ばれる確定未来が消失したわけですね。

▲結果として、すれ違い続ける。これを、うみちゃんの頑張りが繋ぐ

羽依里は仲間と出会うこともなく、鏡子さんから託された蔵の整理を進めていきます。識ルートで描写された鳥白島山海文書の著者とかも考慮すると、加藤家もまた代々記憶・記録にまつわる何かがあるのかも?
そして、羽依里は鏡子さんと違って加藤家の直系。だからこそ、蔵をあるべきように整理することができたのかもしれません。

▲そして目に留まったのが、忘れてはいけないラストピース。

蔵の整理が終わり羽依里が帰る日、それぞれに過去を掛け違えた仲間たちの姿が描かれました。
あんなにハチャメチャやった仲間やヒロインと、ほぼ縁を持たないままなのが悲しかった。

▲鴎も藍も眠りの中にあらず。どんな未来の掛け違えがあったのだろう

けれど、それぞれによぎったうみちゃんの記憶が、チャーハンというきっかけから紙飛行機のリレーで繋がり、羽依里としろはは再び接点を持てました。これはつまり、羽依里としろはが結ばれ、うみちゃんが産まれる因果が再度紡がれたということです。

▲なるほどチャーハンエンド。これがkeyワールドなのか

幸せなエピローグ

無印メインテーマの「アルカテイル」によるエンドロールが終わった後、あれで終わりでも満足感はありましたが、もうちょっと続きました。
新たな願いが芽生えたうみちゃんは、識の声に導かれ紡がれた未来に戻る。

▲識・ALKAルートの描写で、もう出番がないことも覚悟してたところの不意打ち。私は嬉しかった

全ての始まりだった鳥白島の崖までに戻った上で、本当に待ち望んだものとその続きを辿っていく光景を見て、物語は終わります。
この一連のシーンは識が登場してることからもわかる通り、『RB』からの追加部分とのこと。
私が遊んだ別ゲームになぞらえるなら、これは幸せなエピローグ。きっとこうなってるのだろうなと予測できたことを敢えて見せてくれたわけです。

…とただ満足するだけで私は終わりませんでした。
「なんで識がうみちゃんと同じ次元に来られた?」という疑問が誕生。
それ以外にもいろんな描写に納得するためにはある程度考察が要りそう…ということで、その辺に触れます。

鳥白島不思議考察

鳥白島の聖域・迷い橘の裏…どんな時代にも繋がり、現実と少しずれた次元で時の概念もない空間。
私は作中の表現を用いていくつかの空間をまとめて「時の揺り籠」と読んでいますが、この作品世界には幻想的な要素が多数あります。
単に読み進めるとどういう要素によって奇跡や悲劇が起きた?という部分もチラホラ。その部分を改めて考えたいと思います。

時の揺り籠と時系列

さて、識がうみちゃんと時の揺り籠で出会えた理由はなんなのか。
羽依里が関与したかはともかく識ルートで彼女がとった行動はALKA以降で正史として扱われています。
命尽きたであろう識がなぜ…?と考えた結果、白羽の伝承になぞらえて七影蝶の一匹となった、と考えるのがそれっぽい。

▲この時はこんな形でしか出番ないのか…と思ったのは事実

まず、本編およびショートストーリーの描写を見る限り、物語のキーである七影蝶には2系統あるように見えます。
単に未練の記憶を保持するだけの蝶と、自らの意志を持ち自身の記憶を分け与えたり会話したりできる蝶。
前者は蒼ルートでたくさん遭遇します。後者には少なくとも瞳が該当し、藍もこちら側と思ってもよさそう。そして、識ルートエピローグで羽依里と、上記場面でうみちゃんと会話ができたことから識も後者であると思われます。

これを踏まえた時、存命していないと思われる瞳と識に共通しうるのが、白羽の伝承により蝶になった可能性があること。
識の最期は沖合の海であり、「人身御供として海に飛び込む」と伝承に伝わる条件に該当するという見方ができます。
伝承通りに蝶となり、それが七影蝶なのであれば、識ルートラストの描写とPocketエピローグの描写の双方に合点が行きます。

少し話が変わりますが、識ルートでは、識が過去に帰ることは確定していたからか、彼女が2000年に居るうちから、その意識の持ちようが過去に波及し、鳥白島山海文書の内容に即日影響を与えていました。
このことから、過去改変が生じた際は並行世界に分岐せずダイレクトに変化が伝播することも推測できます。識ルートはALKA・Pocketの描写の解釈を手助けしてくれた気がします。

▲ショートストーリーと言えば衝撃の事実を持つイナリ。言われてみれば、であった

もう一つの謎、神隠し

七影蝶が持つ記憶、白羽の伝承と時の編み人。このあたりはPocketまで通せばある程度作中の理も読み解けます。
しかし、「神隠し」と呼ばれる現象は紬ルートと識ルートくらいでしか描かれず謎が多く残りました。
本編の描写を見る限り、選択を迷った者がその時間と答えを得るために誘い込まれる場所…とみられます。
しかしそこにいた時間が反映されたりされなかったりと何でもあり空間とも化しております。

▲最終的にツムギは過去へ戻れたのでしょうか。いろんな描写より残る謎

だからこそ、うみちゃんが未来から本編の時代へ来たのは神隠しによるものだろう、という推察も成り立ちます。
うみちゃんが過去に戻る力を行使しているのはあくまで夏休みだけですが、彼女は2度も自身が生きていない過去へ遡行し、1度目は明確な描写なし。
ただ、エピローグで本来の時代に戻っていたことを考えると、1度目は識と同様神隠しに遭ったものと考えると説明がつくのです。
違いは行き先が「元の時代から見て未来か過去か」という点だけですから。

とはいえツムギが最終的にどうなったかなど謎が残された神隠し。もうすこし細かな設定が知りたいところです。

…え?ぬいぐるみがツムギの姿をとれた理由?そういうものでしょ、うん
七影蝶が姿を編める描写があったので、ツムギの記憶が編み出した姿、とかなのでしょうか…

うみと羽依里が紡ぎ得る可能性

視点が真逆になるうみルート

ある程度、様々な描写に納得したところで、Pocketまで見届けたのちにやろうと決めていたことを実行しました。
それが、うみルートをもう一度通すこと。

初回プレイは紬ルートのみクリア状態と、うみちゃんのことを全然知らない状態。そうするとあらすじはこうなるのです。

うみちゃんは一人で行動する姿をよく見かける…と思ったら子どもとも交流してた。羽依里の秘密暴露をきっかけにその子どもと結託し大人に反抗。その中で怪我をしかけたうみちゃんを叱咤する羽依里。それをきっかけに距離が縮まる両者だが、そこで羽依里のトラウマが発覚。うみちゃんはトラウマ克服を献身的に支え、互いの絆は深いものに。
また夏に会うことを約束して羽依里は島を去るのだった―――

うみルートあらすじ(初回版)

これが、Pocketクリア後に再度訪れるとあらこの通り。

"おかーさん"の痕跡を追い続け島を回るうみ。親の気持ちを知ろうと子供たちとも交流する中で、少しだけ歩み寄れた"おとーさん"の裏切りを目の当たりに。徹底的に親への反抗心を露わにするも、自分のミスで怪我をする寸前に。その時受けた"おとーさん"の𠮟咤と、その裏にある思いを知ったことで、一線を引いていた関係を解き始める。そんな時"おとーさん"が逃げ出したモノを初めて知ることに。親の幸せを願ったか、それと再び向き合えるよう応援することに。
最後の最後に"おとーさん"に別れと感謝を告げて、この夏が終わる――

うみルートあらすじ(クリア後版)

もう見え方が全く変わってしまいました。何も知らずに一度読んでおいて本当に良かった。

▲何気ないスイカバーを買う光景も、他ならぬおかーさんの好物だから。

秘密基地占拠のくだりで羽依里がうみちゃんを叱咤した場面。
前編で私は「側に居るはずの親が居ないってちゃんとわかってあげてるんですよね。」とか書いていましたが、「アナタガソノオヤダダノカ」となってしまうわけです。

▲うみちゃんがどんな気持ちでこの言葉を羽依里に投げかけたのか。
全て知ってから読むと、より重い言葉。こんなんそうそう訊けないよ…

そして読み進めて、私はとある場面で本作品で最も長く、声にならない感嘆の声を上げることとなりました。

▲1周目では単なる赦しの言葉だと思いましたが…

この場面で同じく心が動いた人とは固く握手をしたい

この場面を深読みするには、ショートストーリーうみ編、<夏の足跡>。そこで描かれた一幕を思い返す必要があります。
それはあるルートの8月9日。大成功に終わった屋台での稼ぎを持ったしろはが羽依里を誘い島の外へお出かけしようとする傍らで、うみちゃんとのみきのやりとりがあった…というもの。
そのやりとりの中で、のみきはうみちゃんに「頑張ったんだな」という言葉を贈ります。詳細は是非、ショートストーリー見よう。
この出来事はしろはルートでの夏のこと。この夏は、うみちゃんにとって自分抜きにおかーさんと仲良くなったおとーさんに嫉妬しつつ、彼と向き合う必要性をまたのみきに説かれた夏だったのです。のみきマジグッジョブ。

つまりうみルートは明確にしろはルートの後に訪れた夏、となります。それはおとーさんと向き合う必要性を知っていることを意味するのです。

最終日のシーンを改めて見ていると、うみちゃんが羽依里と別れることに心底寂しそう、辛そうな表情を見せているのです。他のルートでは怒ったり、いつの間にかフェードアウトしていたことを考えると、真逆の反応。

▲そして、もっとも意味合いの変わった場面…この表情を改めて見ると涙が零れます

そして最後の言葉、「――――ん、ありがとう」。
聞き取れなかった部分、1周目は当然「鷹原さん」と解釈していましたが、全部クリアしたならそんなわけないってわかってきました。「おとーさん」と、間違いなく言ったんだと思います。
ただ聞き取れなかっただけではなく、伝える意味合いすら変えるためだったこの描写に、たまらず涙が零れたことを憶えています。間違いなく、このうみちゃんは羽依里、もといおとーさんとの関わり方を変えられたのです。

アナザーエンドの可能性

ここまでを踏まえた上で、うみルートを改めて通して抱いた思いは、「これはPocketに連ならない、アナザーエンドの可能性がある」というものでした。

▲他にこの言葉が使われたのは、ALKAルートで羽依里・しろはと別れた場面。
つまり、共通点があると考えることができる

さて、ではなぜこの終わり方がアナザーだと思った(思いたい)のか。これには3点ほど上げることができます。

まずは、本編攻略に一切関係ないこと。ALKA解放にはうみちゃん以外の7ヒロインの攻略だけでよく、またいわゆる「鷹原さん」状態のうみちゃんでないとこのルートに入れないことが挙げられます。グランドエンドを見るだけならうみちゃんルートに入る必要はないんですね。

次に、うみルートの攻略はグランドルートに一切影響しないこと。上記の理由から当然と言えば当然なんですが、うみルート走破の有無はテキスト差分を一切起こさないのです。
つまり、ALKAルートに辿り着いたうみちゃんはうみルートを経由していない、という捉え方が可能なわけです。

▲ALKAルートにて、追加シナリオを含めた各ヒロインルートを示す表現があります。
しかし、これにうみルートが当てはまるものはない。

最後に、羽依里が逃げ出したモノをうみちゃんが知る機会はうみルートにしかないということ。
各ヒロインルートでは羽依里がヒロインに過去のトラウマを吐露し、克服する場面が描かれますが、ALKAではトラウマを明確に吐露せず、対小鳩戦も勢いのままの辛勝のため克服したとは言い切れない印象。つまり、うみちゃんはおとーさんのトラウマをちゃんと知る機会はなかったのです。

しかし、うみルートでは、"逃げ続けていたおとーさん"が抱えていたモノを羽依里から直接聞くことができた。
そして、うみちゃんはそんな羽依里に「頑張ったんですね」と言います。本当のおとーさんを見つけて、その姿に向き合おう、支えよう、と思ったからこそ、あの言葉は紡げたのだと思うのです。

これまで"おとーさん"から一線を引いてきたうみちゃん。けれどこの夏ではその壁は払われ、おとーさんに向き合えました。なら、うみちゃんは元の時代のおとーさんとも向き合おうとしたのでは?と思うのです。

▲対称的に、おかーさんとは縁のない夏だった

当初はエピローグに当たる場面がないことを残念がりましたが、うみちゃんに"翌年の夏"がないので当然だったのですね。しかし、エピローグがないということは、その先を空想するのも自由ということ。
別れの場面で、うみちゃんはしろはを見つけ、羽依里に伝えます。
これは羽依里に、しろはとの縁が残るよう精一杯の助けを行ったのだと思います。二人が結ばれる可能性が残るように。
なら、過去に戻ることなく、Pocketとも異なるこの先の未来に帰り着き、改めておとーさんと向き合う、なんて展開を夢見たくなるじゃないですか。おとーさんから逃げず、真っ直ぐぶつかれたなら、きっと前を向けるはずだから。

…なんて、さすがに夢見すぎですかね。ビジュアルファンブックとかでちゃっかり否定されてそう。でも、そういう可能性を見出せるくらい、うみルートは何度も噛みしめて深みを感じ取れた物語でした。
締めに読む物語として、これ以上のルートはないですね。とても良かったです。

まだ夏は終わらない

さて、長々と書き残しましたが、どうだったでしょうか。
ひととおりクリアし、CGは全回収できました。

▲最後に回収したのは「おにーちゃん」時の鴎ルート。
うみの精神年齢の低下によってムフフな話題に反応しなくなった、ある意味恐ろしい差分

島モンも島ポンも裏ボス撃破エンドも見ることができましたがやりこみはさっぱりですし、未見のイベントはまだまだあるでしょうし、なによりレコードはさっぱりである。

▲Pocketクリア時点ではこんな程度。記事執筆中でも70%程度である

そういったやり込み面では遊ぶ余地がタップリ残っています。大事な場面の選択肢は選びなおしてないのでその変化を見るのも良しですね。
また、最初の4択から派生するレコードももちろんですが、会話差分に至ってはどこに潜んでるか全くわからないレベル。うみ・静久ルートなんて最終盤に4択の影響出ますからね。差分回収なんて考えたくない!

いい物語もたくさんあるし、真相を知ってから改めて見るストーリーも多くの感情や気づきを受け取れると確信しています。まだまだ鳥白島の夏を訪れることになりそうです。

▲島ポンファイトはなぜかポンポン初見でクリアできてしまったので消化不良です

暦の上では一旦夏も終わりに近づいていますが、夏の暑さはまだまだ続きそう。私もゲームにおいて3つの夏の終わりを迎えましたが、まだまだそんな夏は見ていたい。心の残暑もまた、続くことでしょう。
それでは、今回は失礼します。

▲もっと集まった集合写真も見たかったなと思いつつ、やっぱいいシーンだなと。
この写真で今回はお別れです。

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