坂本 作鏡

一塊の石の中に こころの宇宙を観る ~石が誘う迷宮散歩 ~ インスピレーションに導か…

坂本 作鏡

一塊の石の中に こころの宇宙を観る ~石が誘う迷宮散歩 ~ インスピレーションに導かれて石の模様に心を映す photographic Art  AMSC スペイン本部 芸術家会員 Sakyo SAKAMOTO / baikaamirzero@gmail.com

最近の記事

春風の咲く小径

風は… 時の川を渡った そしてこの空に戻って来た 君は覚えているかい あの日のことを... あの空に書いた文字を  君は覚えているかい あの花の囁きを  君は覚えているかい 風は色を纏った そしてこの空に遊んだ 君は覚えているかい 虫たちの声を聴いた日を... あの花に聞いた遠いお話を 君は覚えているかい あの川に託した願いを 君は覚えているかい さあ、 行こう… 時は来たんだよ 君のために 戻ってきたんだよ 風はそっと肩を叩いた 風

    • 巡礼の道標

      ひとつの石が開いた 眼のなかに 時は瞬き 道を告げた ・・・・・・・・・・・・ その節穴の目を持つ者よ その節穴に気息を満たし わたしの言葉を活けなさい ・・・・・・・・・・・・ 目を閉じた視線の彼方に  言葉は走り熱い涙の海を創った 空と大地の狭間に星は瞬き 水脈はさだめてその道を記した ・・・・・・・・・・・・ その節穴を持つ者よ 気息とともにその星を飲み干しなさい ・・・・・・・・・・・・ その者は器となってその海に星を映した そして言葉

      • 大地への誘い

        その時、何かを聞いたような気がして立ち止まった... それは… 不意に現われて私の足を引き留めるように響く、記憶の大地へと誘う足音を思わせる感触だった。 その響きは、大地の鼓動が記憶を賦活させるような時間の揺らぎを伴って、私の身体を貫いていった... 時間の燃焼が記憶を沸騰させるように、太古の記憶が泡立ち弾けては、濃密な記憶の息吹きが私を襲う... 吹き荒れる記憶の乱舞のなかで私はひとつの声を聴いた... それは記憶の磁気嵐のように私をつつみ、僅かにおとずれる時間の隙

        • コズミック・ダンス KAGURA

          幽かな揺らぎが烈しく燃え上がった... 時間の息吹きのように立ち昇る香りのなかで 記憶のエコーは意識体の大気のように存在している この星がいのちを宿した瞬間を語るような陽炎にも似て それは微かに明滅する意識体を思わせるものだった 時間の陽炎は記憶を燻らせ 立ち昇る芳香のなかで秘密は語られてゆく... それはどこにもない時間のなかに顕れた今であり どこにもない太古の記憶の顕現でもあった かつて星の欠片がいのちを宿したとき その者は… ひとつの歌を贈った... 見るこ

        春風の咲く小径

          囚われた夢

          立ちはだかる壁が幻影の帳のように揺れている... 硬い牢獄のように迫る壁は、現実という衣を纏い我々を取巻いている まるで、逃れられない世界なのだ… と言い含めるかのように、それは有無を言わさず存在の幻影を見せてくる その硬い感触と叩けば返ってくる痛みという反応が、現実という世界を描かせ私を存在させる、血の滲んだ指先が尚更それを信じさせている。 その傷跡が血の脈動を高鳴らせ、記憶の源流を呼び覚まし、やがてその脈動は記憶の波紋を生じさせ、現実という壁に浸み込んでゆく...

          囚われた夢

          海への帰還

          人知れず大地のなかを泳ぐ 記憶の奔流... 大地に刻まれた記憶は今 眠りを解かれて身を翻し 大地のなかを往く... 砂の中で産まれた海亀が 海へと帰るように それは記憶が言葉を求めて 海へと還る旅路でもあった その目は遠くに響く 海の呼び声を 幽かに捉えていた それはもうひとつの星の記憶への 誘いの歌... この星に生まれた秘密を繙くための 呼び声でもあった この大地に眠る星の種の守り人... そして時は満ち... 星の種の芽吹きのために

          海への帰還

          隠者の預言

          人知れず明滅する星の夢のなかで 海は風の囁きを聴き… 大地は時の瞬きを見た... 碧い瞳がひらくとき… 言葉が色を宿すように 樹々はざわめきのなかで… 時の河をわたった... 星のもと… 花は沈黙のうちに詩をしたため 木々は歓びのなかでその身を震わせた... 大地が語りだすとき 海はその言葉を贈るだろう... 大地が蒼を語るとき 海に沈んだ古代の叡知が目を覚ます 海の民の夢が息を吹き返すとき 空は碧に歌うだろう... 碧い歌がひとの心に影を結ぶとき

          隠者の預言

          博士のまなざし

          ほたる火の ひとみに映る 浮き世のこえに うつせ逃げ水 まぼろしの 影を透かして 虚の彼方 まなざし遥か 還らぬ詩へ... またたき結ぶ うつし世の くすしき声も うつろえば 綴る数霊 虚に実に 織りて紐解く ことわりの 姿こだます 妙の調べに 陰に日向に 魂むすび こころの彩も 濃く深く 爪弾く絃音 きのう今日 絶えて彷徨う 明日にも 透かして見ゆる ことわりの花

          博士のまなざし

          引き裂かれた神話

          クライシスの鐘とともにモニュメントは崩れ落ちた... 爪痕も露わに神話は鐘のなかに沈んでいた。まつろわぬ者たちの声を切り裂き、嘘の膠に少しの真実を混ぜて張り合わせた偽りの神話は、いま脆くも崩れ落ちた...その傷跡は鈍いひかりに満ちて、何かを語ろうとするかのように顕われていた。 幾千年にわたり信じられてきた神話は、少しの嘘を塗されて明暗のなかで語られてきた。人びとはそこに闇を視、そして光を観た… 何者かの意図とも知らずに... 崩れ落ちた姿に嘆きは空を覆い、嘘の欠片を握り

          引き裂かれた神話

          ひかる道の向こうに

          山を越えた旅人は、深く切り込んだ谷の気配に何かを感じて立ち止まった。 何かに呼び止められたような気がして谷に突き出た岩の上に出ると、そこは平らな磐座と呼べるような場所だった。蒼く霞んだ対岸に浮かび上がる岩塊が旅人を手招きするように誘っていたのだった。 旅人は暫くその岩塊の気配に対峙し、磐座に座って静かな瞑想に入っていった...風を追って荒野をわたり山を越え、己が足裏に刻まれた当てのない旅に誘われた日々を思い返しながら、旅人は深い霊気のなかに身を預け、己がこころを溶かしてい

          ひかる道の向こうに

          そして記憶は天へと還る

          石の内部を伝って一滴の意識体は下りて行った... 様々な振動が織り成す記憶の色彩に震えながら、一滴は眠れる記憶の息吹きを感じていた。微細な起伏に刻まれた記憶は、水に溶けるようにその姿を一滴に映しゆく...それは微かに彩られた揺らぎが見せる幻影にも似て仄かであり、産まれ行く時間が見せるかぎろいの姿のようでもあった。 やがてそれはとりどりの色彩を絡めとりながら発光し、白い焔となって姿を現わした...記憶の蘇りのためにこの一滴が必要だったのだ。 一滴の意識体は自身が燃えてゆくの

          そして記憶は天へと還る

          天空の門

          その石は雷に打たれたように、時空の帳が切り裂かれていた... 刻まれた記憶が空へと解き放たれたかのようにその表面に浮遊し、まだ温かな心臓のように脈打ちながら、それは眠っていた記憶が目を覚ました生命体のような気配を漂わせていた。 穿たれた時空の裂け目のように存在しているそれは、古代文字を思わせるその姿のなかに口を開け、新たな時空を呼吸するように脈動している。雷に打たれた振動を今も生きながら、この石はその呼吸とともに甦った記憶を歌っているようだった... その古代文字を聴く

          時の稲妻

          それは突然のことだった... 連なり合う時空を突き抜けて稲妻が走った... すべての感覚が凍結するような生の裂け目を切り裂いてそれは打ち下ろされた...この石に刻まれた封印を断ち切るようにプラズマとなった言霊が大地に放たれた瞬間だった。 それは眠りについていた記憶の心臓を目覚めさせるように、時空の細胞を振動させ記憶の血潮を賦活させた...それは永遠が産み落とした一滴でもあり、それはまた時間の一滴でもあった。 稲妻となって降りた一滴は、凍結した細胞に沁みわたり、記憶はひと

          その男の名は

          男の目は石のなかに刻まれた大地のヴァイブレーションに震えていた それは刻まれた記憶が、氷が融けるようにその手を緩め、ひと滴の言葉となることを待っているような時間の流動性を湛えていた...男の目は動き出す時間の震えのなかに生きていたのだった。 その目は外界を捉える器官ではなく、世界を映し出す器官として私を待っていたのかもしれない... 凍結した意志が刻の一滴に触れ、刻まれた記憶は自身の時間を生きはじめたかのように、私の視線に追随してくる... 私の視線の指先で、眠ってい

          その男の名は

          還らざる川

          石に刻まれた蒼き川の水底に 眠る記憶の熾火は揺れる 流れのままに時は躍り 青い呼吸は血潮に変わる 川の流れは千億の海を震わせ 記憶の熾火は躰を焦がす ひとは衣を纏う代わりに記憶を脱いだ 躰の海を生きるために 記憶の血潮は脈動のなかに歌を燻らす 水底に眠るいのちを目覚めさせるために 明滅する記憶の舞踏は炎となって躰を巡る 海のなかに潜む歌を生きるために 石の唄… 水の歌… 流れる水に記憶は躍る 空を往き… 地に下り 時のまにまに記憶は燃える 川は流れる… 滔滔と

          還らざる川

          紅い衣の女

          旅人は朦朧とした意識のなかで 傍らの岩陰に身を沈めた... どの位歩いたのかも定かではない程に 身体と心は疲れ意識が沈み込む感覚のなかで 旅人は目を閉じた... 夢ともつかぬあわいのなかに目覚めた旅人の傍らには 見知らぬ女が座っていた... 身体の感覚が伴わぬ旅人の心の中で 呻きともつかない声とともに 物憂げな眼だけは静かに そしてはっきりと旅人を捉えていた 旅人の夢のなかに目覚めた女は 不思議な目で遠い記憶を語ったのだった 旅人は女の記憶のなかに身を起こした 女

          紅い衣の女