仕事として音楽と関わってきたことで失ったもの


私は20代前半にダニー飯田とパラダイスキングのボーヤとして働いたのが音楽の仕事のスタートでした。
まぁその当時は文字通り右も左もわからないわけで、修行の時代でしたけど。
その後にメンバーとしてステージに立たせてもらった後に、芸能事務所のマネージャーやライブハウスの店員、レコード会社の社員として働いた後に独立して今に至ります。
基本的には音楽制作、アーティストを育て、レコーディングやライブを仕切るという仕事が中心でした。
そうやってずっと音楽に関わってきたわけです。

もちろん音楽が好きだからこそやってこれたのですが、常に音楽と共にいたことで、かえって音楽から遠のいた部分もあります。
それはどういうことかと言うと、中学や高校の頃にはただひたすら好きな音楽やアーティストを追いかけて、夢中になってレコードを聴いてたのですが、最近は音楽を聴くことがほとんどありません。
あれほど好きだったのにです。

当然仕事ですから、売れるか売れないかということが音楽に対して判断の基準になり、しかも毎日が音楽漬けでしたから、感覚が麻痺してしまったこともあるのかもしれません。

ここ数年は工藤江里菜のサポートとしてレコーディングやライブでギターを弾いたり、カホンやベースなど新しい楽器を始めることで少しずつ自分が楽しむという感覚を取り戻しつつあります。
言わばリハビリみたいなもんですね。

もともと歌うことよりはプロデュース業のほうが楽しいというのはあったのですが、歌や演奏でステージに立って、音楽を心から楽しむという感覚は忘れちゃいかんなとつくづく思います。

最近はさらにその気持ちが強くなってきていて、中学や高校の頃に好きで聴いていた曲を歌うことや演奏することも必要だなと感じてます。
それを仕事にするということではなくてね。
夢中になって楽しむという感覚を細胞レベルで思い出すためです。

もちろん今でも音楽は好きなのですが、仕事としてずっと関わってきたことで、客観的に聴いてしまうクセや、いろいろとジャッジしてる自分が嫌なのだというのもありますね。

ひとことで言うと、原点に返るということでしょうか。
今は音楽に対してもっと素直になろうとしている自分がいます。
本来の意味だって「音」を「楽しむ」ことですからね。
その純粋な気持ちを忘れてしまったら、音楽に対して失礼だなと思う今日この頃です。

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