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詩 〈25番目の春〉


夏に向かって

開く


その肌への

ぬるさ


曖昧な季節の

領域を


容認する時間



新助坂を

女の


足だけが

下ってゆく


地から沸いてくる

野太い読経の声に

唱和しながら


坂下の

南元町に


ゆっくりと

沈んでゆく


ゆるやかに

雁行する

風の手になぶられ


縷々

縷々と


ほどけていく

硬直した

身体の節目



もうすぐ

茜色に


やがて

紅(くれない)に

染まっていく


西方の空へと帰る

途上(とじ)だ


ほんのひととき

数百年を

遡れば


ここも

あそこも藪の中


儚くなって

いま


25番目の


この春を見送る














































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