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川上未映子 『すべて真夜中の恋人たち』

数年前に親会社の社長交代があった。新社長は初心表明のなかで川上未映子さんの作品から一節引用しており、こんな超ドメスティック大企業の社長が今どきの現代女性作家の小説とか読むんだ…と偏見に満ち満ちた印象を持ったのを覚えてる。(うちの親会社は半沢直樹みたいな会社だ。その子会社のうちもだけど)

それ以来ずっと気になる作家としてわたしの読書リストの中にあったが、私の読書は9割が沢木耕太郎といった具合だし、そもそも現代小説をほとんど読まないので、いつか読みたいな〜と、だらだら2年も経ってしまった。
たまたま7/10のTHE TRADというラジオ番組に川上さんがゲスト出演されていて、初めてご本人のお話し声を聞き、なぜだかすぐに作品を読みたくなった。

『すべて真夜中の恋人たち』は、美しくテンポのよい文章で綴られていた。SNSで感想を漁っていると、印象的な一文を紹介している人が多く、確かに格言的に引用したくなる気持ちは分かる。
だけど、私にはストーリーは全く刺さらなかった。内向的な人ほど痛いほど刺さると思う。主人公は同世代だが、今から十数年前に書かれた作品なので、作中のカルチャー面で僅かにギャップもあり、なんだかずっと違和感を抱いたまま読了してしまった。
川上作品のどの部分が欧米で高く評価されているのだろうと考える。
間違いなく文章の美しさと(翻訳めちゃむずだと思う)、この作品に限って言うと、所謂「奥ゆかしさ」なのかなと思った。校閲者という職業もロマンティック。当然ながらこの一作だけでは分からない。
ストーリーはピンと来なかったが、不思議とつまらないという印象ではなかった。思い立って読んでみて良かった。他の作品も読んでみたい。

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