【アジアカップの敗因】信頼の示し方、その難しさについて


アジアカップで残念ながら日本代表は敗退した。

最後の試合を観たうえで、森保監督の試合後の談話、守田選手や板倉選手の試合後の話の記事等をふまえて、少し思うところを書いてみた。(以下敬称略)

まず実際にこの試合でもプレーした守田の語った内容記事を読むと、チーム戦術と選手個々で考えることのバランスって非常に難しいな、、と感じた。
本当に叫びたいような気持ちだったのだろうと、胸がキュッとなった。

特に代表レベルとなると、当たり前のことだけど、当然準備にかかる時間や、毎回全ての選手が一定のコンディションで揃う訳でもないことから、チームとしての完成度を高めることは一般的に難しい。

それゆえ、「自分たちのサッカー」を構築していくことや、意識を統一して日本らしいサッカーを展開することに長年日本サッカー界全体としても臨んできたものと思う。

選手に多くが委ねられていたであろうジーコジャパンや、「自分たちのサッカー」の完成度を高めにいったザックジャパンの頃より、さらに選手個々の状況に応じて考える力はついてきていて、底上げもされている訳だけど、それでもチームのベースには戦術と指示と、一体となってのやり切りが必要であると、当たり前のことだけど改めてそう感じさせられるアジアカップだった。

今大会はまずGKにザイオンをチョイスしたこと、ここが森保監督としては、今までと異なる選択であり、チームにとっても大きな変化だった。

GKがかわるということは、DF陣との連携やCKの際の対応、チームとしてのボールの展開の仕方、幾らでも他にも要素はあるだろうが、隅々まで色々と「かわること」が多いと思う。

この大会中ザイオンに関しては様々な、ミスと呼ぶか呼ばないかを一概に判断しづらい出来事もあったが、21歳の新鋭に対しての勝手な評論は酷いものであった。

こういう大きな大会だと良くも悪くも「ハマる」ことがあるとチームにとってとてもデカい。

今後10年以上ゴールマウスを守り、背負っていってくれるかもしれない逸材への期待感は言うまでもなく大きかったし、ハマったらそれはとてつもない推進力になったと思う。

ただ、今回は残念ながらそこが良い意味でハマったとは言えなかった。
とても感覚的な話だけど、良い方向に進んでいたならば、1試合に何回も「あれ?」と思うようなプレーが起こることってあまりないと思うし、それが疑いの目で見られてしまう状況が続いたことは残念かつ、正直ハマってないなと感じた。

森保監督はカタールワールドカップでの手応えもあり、そこからの進化を目指す中で、より上田を中心とした前への比重も高めていたけど、今回は後ろも再構築してチーム力を底上げしていきたい意図がみえてはいた。
しかし、意図はあるけど、チーム全体への詳細にわたる戦術や指示、細かい修正などがおそらく今大会はそこまで行われなかった、良く言えば理解のためのバッファをもたせ、「選手を信頼した」ように感じた。

結果的に、GKとDF陣との新たな連携もゆるふわになり、SBも中盤の選手もうまくそこにからんでフォローをしたり修正することができなかった。

センターラインに遠藤や守田がいて、冨安や板倉がいて上手くいかないってことは、彼らほどの選手達がいても上手くいかないってことは、どこかベースの部分に綻びがあったのではないか?と考えざるをえないと思う。

このベースの部分の綻びについては、個人的なイメージと感想ではあるけど、森保監督が「選手を信頼できる」部分が裏目に出てしまったと思う。

その裏目に出てしまったことや、気になったことを以下書き出してみた。

★GK変更、ザイオンについて
いくらプレーが少し不安でも、流れ的におかしくても、GKを大会途中でかえることは非常にリスキーであり、滅多なことでは行われない、そこは悪手になりかねない。
ザイオンにも信頼を示し、チームとしてもサポートし団結したい。そもそもザイオンの力を信じている。そこの兼ね合いで続いた起用なのではないかと思うが、監督のファーストチョイスであることは間違い無いので、もう前提としてこのことについては捉えざるをえない。これからの進化に期待。

★板倉についてと、その監督の判断について
板倉はとてもコンディションが良いとは言えないような動きも多く、中盤まで上がりつつゲーム作りに参加するプレーなど流石と言えるようなところも示したが、
この試合は結果的に早めにイエローカードを貰ったことから、強くいけない部分を差し引いてもたびたび裏を取られ、その際の対応に苦慮した。

彼の試合後のインタビューを読んでも、ほぼ観た人たちが思っていたことと同様のことを話していたと思う。何も言い訳をせず、かっこよかった。

ただ一つ言いたいのは、ご存知の通りこの試合は板倉のプレーだけのせいで負けたわけでは決してない。

失点の最後のところにからんだことや、裏を狙われたこと、度々サイドに引き出されてしまっていたことの遠因は、戦術や修正の不足、交代カードの判断、信頼と結果が結び付かなかったことに拠っているし、こればっかりは後から検証、反省、修正を繰り返すしかない。

このような大会のノックアウトステージでこういったことが起こったのは非常に残念であったが、これからワールドカップを見据えた進化を急ピッチで進めている中の綻びと捉えるか、それとも解決不能な監督や選手の力量によるものかと言われたら、個人的には前者、解決ができることと思う。
板倉は良い選手だし、これからもっと強く、上手くなれる。

★冨安のプレー、試合後の表情を見て
冨安は相手のエースをマークしつつも、できる限り板倉の状況を踏まえカバーをしようと考え奮闘したが、勝利に繋げることは難しかった。
試合後の冨安の強張った表情は、やれることがもっとあったしできるはずという悔しさや、戦術を含めたチームに対するやりきれなさ、自分や自分達はこんなもんじゃないという思いが伝わってきた。
これからも代表や周りをさらに上のレベルに引き上げてほしい。

★中盤
遠藤や守田も可能な限り周りとのバランスを取り、前に顔を出して得点に絡むことまで幅広い仕事を広範囲で行いにいったけど、足りなかった。
彼らが必死にやっていたことはとても価値あるプレーだったし、個人としての進化をまた代表に還元してくれていると感じたが、守田が語ったように戦術的な側面から上手くいったとは言いづらい結果となった。

もしかしたら、もう少し指示が欲しい、こうした方がいい、と言う意見を出したり、監督に求めることを以前から、大会中にもしていたかもしれないが、結果的に伊東純也の件もあり監督・コーチ・選手のキャパシティや、修正をかけるための時間・モチベート管理が難しくなっていた可能性も感じる。

百戦錬磨のセレソンだって、98年ワールドカップ決勝前にロナウドが倒れたら決勝では思い通りのプレーができなかったんだから、全然状況が違うけど、今回のケースもチームがチームとして機能することが難しい状況かつ、修正をかけきれない状況にさらになっていってしまった、ということも考えられる。


★前線
上田のポストプレーから堂安や久保が間に入り積極的に相手を陥れようとしたものの、いまいち決定打には欠けてしまった。
ここに関連して、後ろと前線が分断されてしまっているように感じたが、やっぱりサイドバック、センターバック、中盤のバランスが良く無いと、攻めのリズムも良くならないんだなぁ、、と感じることが多かった。

★大然(大然)
自分は大然のファンなのだが、大然はいつも通り大然だった。個人的にはよかったと思う。
後半に大然が効いていたサイドに三笘を入れたけど、打開には繋がらなかった。その後のイランの攻撃を押し込めるまでにはプレスも機能していなかったように思える、ここも三笘が云々というよりは前線のチョイス幅が伊東不在により狭まったこと、サイドバックとの兼ね合い、戦術の修正や検討が難しかったこともあるのではないかと感じた。

そもそもサイドバックと4231のウイングポジションの選手の関係性も、右も左も完全に上手くいっているとは言い難く、バランスがあまり良くはなかったけど、ここは修正してほしかった。

以上、

色々とある。色々とあるけど、
結局は森保監督の判断・責任だと思う。
監督がチームのTOPな訳だし。

それが、伊東純也の件があったからこその、選手への信頼を示したい、「かえること、かえられないこと」の判断に影響が出たかどうか、修正の時間が取れたのか取れなかったのかは気になるけど、試合後の監督のインタビューを聞く限り、敗戦の理由の分析はもうできているんじゃないかと感じた。

言い訳はしなかったし、選手を勝たせてやりたかった思いも痛いほど伝わったが、選手からすると物足りないと思う部分があったのかもしれない。

信頼すること、それをどう示すか、何を選択するのか、監督が担っていることの難しさを感じる試合に、その綻びを露呈する試合になってしまった。

この時期のことだけで監督を首にする云々を話すのは早計だと思う。今回のチームの敗戦はあまりにも状況的にそれを話すのは無意味というか、判断できる材料にしづらい。

ワールドカップの時みたいな、想像を超える思い切りの良い采配ができるように。
改めて勝負師森保監督の驚くような采配を見たくって、個人的にはこの代表チームの続きを見たいと思う。3バック、5バック云々の話はまたこれからすればいいし、次からまた改善が見られなかったら進退を考えればいい。

押しつけると文句が出るし、任せても文句が出る。
このバランスをとらえ、責任と判断を負うのが監督な訳だし、前回のワールドカップでの采配を見ると、森保監督はそこができない人ではないと思うので、もうちょっと頑張って欲しい。
世間やファンが思っているより、岡ちゃんも
そうだったけど、真面目でまともそうな人の方が、とち狂ったここぞの場面で信じられないような判断ができるんじゃないか。ワールドカップの時にはできていたんだし。
あと、この敗戦でチームが解散となり1番悔しいのは監督だとも思うから、その思いをプラスに変えて欲しい。

アジアカップで負けたのはとてもイラつくし、このチームで勝って欲しかった。

けど勝てなかったなら、これからのことを考えるしかないし、ピッチ外のことに苛まれていてはいけない。

まだ難しいけど、もうそこは再び意を決してやって行って欲しい。


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