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【経理】経営者の思考&行動スピードは、"自分の3倍以上" と考える。

こんにちは、きくちきよみと申します。
税理士です。

今日は「経営者の思考力と行動力は桁違いなので、伝える情報の正確さと、レスポンスの早さには気を付けよう」ということについて書きます。


気づいたときには、すべて終わっている。

自分が中小企業の "ひとり経理" だったときですが、お昼休みにうっかり口を滑らせてしまったことがあります。

「A社の経理部長の〇〇さんと毎月打合せをするが、毎回、個人的な話を聞かれて困っている。うまく回避する方法を探している。」ということを、その当時の自社の社長に話してしまったのです。(注:20年前の話です)

嘘でもなく、盛った話でもなく、実際に困っていることをありのまま話しただけだったのですが、20代の小娘だった自分は、その後に何が起きるか全く理解していませんでした。

実際に起きたことは、次のようなことです。
①A社との取引は、その日の17時に打ち切りになる。
②社長がA社に赴き、A社に対する売掛金の残高全額(200万円弱)を現金で持ち帰る。
③翌朝10時、A社の発注元であるB会社から、直接発注を受けることが決まる。

一方、何も知らない自分は、その話をした夜に「言わない方が良かったかな」とぼんやり考えながら、それでもぐっすり熟睡→起床→出社、の後に受けた電話で初めて、「とんでもないことになってしまった」と気づいたのでした。

しかも、取引を打ち切るだけでなく、きちんとその分の収入を確保(どちらかというと、元請からの取引に変更になったので利益は増えた)してきたことは、純粋に「すごいな」と思い、改めて "経営者" のすごさを実感するきっかけになった事件でした。

(後になって『あれは自分のためというよりは、取引先を変えるきっかけを探していただけかもしれない』とも思ったのですが、そうだとしても、その行動スピードには驚くべきものがありました。)

中小企業では、直接、経営者と話をする。

中小企業の経理さんは、経営者から直接の指示を受けることも多く、とても近しい立場にあることが多いと思います。そのため、質問されたら答えるでしょうし、依頼されたらその依頼に応えるよう努力するでしょう。

難しいのが、「経営者に質問・依頼されたら、最速で対応しなければならない」と考えてしまうことです。

私自身、過去何度もミスをしてきており、「早く回答することを重視した結果、回答が誤っていた」ことも、「正確さを重視した結果、回答が遅くなった」こともあります。「どちらが正しかったのか?」と悩むこともありました。

ここで注意しなくてはならないのは「最終的に判断&決断をするのは、経営者であり、ヒラの自分ではない」ということです。

経営者の思考力と行動力は、圧倒的です。

会社の規模に関わらず、経営者は「ひとりの経理部員が『ミスだった』と思うようなことであっても、『そのミスはミスではなく、実は正解だった』と信じさせられるほどの力」を持っています

だからこそ、経営者には本当のことを伝えれば良いと思います。

急いで回答してしまう場面では「今の自分はこう考えるが、もう少し時間をかけて考えれば違うかもしれない」と本音を伝えれば良いし、迷う場面では「正確な回答をしようとすると、あと3日かかるかもしれない」事実を伝えれば良いと思います。

責任を持って決めるのは、経営者です

経営者に間違った情報を伝えても、あっという間に3周する。

前項とは矛盾しますが、「経営者が責任をとるので、自分には全く責任がない」と思い込んでしまうのも危険だと思います。

経営者は優秀な経理さんを信頼しますし、その意見を尊重します。そして、間違った情報であっても、経営者は即座にあらゆるシミュレーションをして3倍に膨らんだ不安を解消するため、驚くほどの速さとパワフルさをもって物事を進めてしまったりします。

だからこそ、中小企業の経理さんは、自分の意見が経営者の基礎になってしまうことを想定し、慎重に説明の方法を選ぶべきだと思います。

以前は、自分も「間違ったことを伝えてしまっても、気づいた時に伝えれば良い。充分間に合う。」と信じていた時期がありました。数々の失敗を経験し、自分が気づくようなタイミングは、経営者にとっては遅すぎる時期だということを今は実感しています。

経営者と同じスピードは、持てない。

経営者ではない以上、経営者と同じ速さの思考と行動力を持つことは、非常に難しいでしょう。

それでも、経営者に判断を委ねる以上、従業員である経理さんは「誠実・素直なことば」を伝えるのが良いのではないかと思います。

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ここまでお読み頂きまして、ありがとうございました。