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経理の仕事は、"should be" と "as is" を比較すること。

こんにちは、きくちきよみと申します。
税理士です。

経理さんや会計事務所などの数字を扱う仕事をする人は、あるべき金額と実際の帳簿金額を比較することが非常に多いと思いますが、いろいろ工夫が必要、ということについて書きます。


検証表に並ぶ3つの列、①"as is"、② "should be"、③"dif"。

職場によって呼称は異なると思いますが、私の場合は、実際の帳簿数値は "as is"、あるべき数値は"should be"、2つの差額は "dif"(=differenceの省略)、の3つの見出し表示を使っています。

例えば作成された試算表を検証するとき、必ずと言っていいほどこの3つの列を作成し、"dif"欄がすべてゼロになってから、その後の作業に進みます。"dif"欄がゼロになっていない場合には次の作業には進まず、まずはその差異の原因を探ります。

経理をやっていた時代から引き続きこの方法で検証していますが、時間削減のために一時はこの作業をやめ、他の方法で検証を試みていた時期もありました。しかし、その時期に起きていた深刻な不正に気づくのが遅れてしまったということがあり、結局はこの作業に戻りました。

多かれ少なかれ、トラブルの原因究明や検証作業をする場合には、このような比較作業をしている方はいらっしゃるかと思います。

単純なので、誰でもできる比較検証。

この方法の一番のメリットは、とても単純な作業なので、誰にでもできるということです。

会計記帳の実務を始めたばかりの経理さんに説明してもすぐにできるようになり、試算表の出来栄えがすぐに変わります。

一方で、そもそもshould beの数値を誤るとミスに気づかないので、その点は注意が必要です。

そのため、「何の数値をshould beとするのか」ということについては事前に検討が必要で、第三者によるレビューに備え、場合に応じて根拠資料を添付する、という工夫も必要になります。

・should be の間違い例

例えば、棚卸資産(商品、製品など)の場合です。

棚卸表があれば、その金額を無条件にshould beとしてしまっていることがありますが、本当のshould beを確認するには、事前検討が必要です。

・その棚卸表は、実地棚卸を反映した後の棚卸表かどうか?
・実地棚卸している場合であっても、その棚卸方法は適正か?

過去に頻発した不正の例は、商品に添付されたバーコードを読み込んで棚卸をしていたため、元々は棚卸表の金額の確実性が高いとされていたものです。ところが、そのバーコードと商品自体が切り離されてしまっていたため、実際には倉庫にはバーコードだけが残っており、商品自体はなくなっていた、ということがありました。

この場合、商品はなくなってしまっているので、バーコード読み込みで作成された棚卸表は、should beではありません

それぞれの会社にとってのshould beはそれぞれですので、不正防止の観点からも、「自社にとってのshould beが何なのか」について考えることは、非常に重要なことかと思います。

・should be と比較して発見する、as is の間違い例

例えば、売掛金の場合です。

会社にとっての非常に重要な資産であるものの、取引先と付け合わせをしてshould beの金額を確認すると、as isと差異が出ることがあります。

原因はいろいろかと思いますが、下記のようなものがあります。
①先方の振込み間違い。(例:振込手数料は先方負担のはずが、当方負担になってしまっている。)
②請求書の処理遅れ。(例:当方の請求書送付が遅れた。)
③会計記帳ミス。(例:A社からの入金を、B社からの入金として記帳してしまっている。)
④営業担当者と経理担当者の連携ミス。

会計帳簿上で、常に正確なas isが表現できれば良いのですが、なかなかそうもいきません。「自社ではこのようなミスが多い」という種類のものがあると思いますので、それらを重点的に改善する工夫が必要かと思います。

自社のshould beを考え、as isは常に正確に。

should beと比較することによってas is のミスが見つかるとは思いますが、検証時間は極力少なくするように、「as is が常にshould beである」ように会計記帳ができるような仕組みが、一番望ましいと思います。

是非、貴社にとってのshould beの在り方と、常に「should be=as is」になるような記帳方法を考えてみてはいかがでしょうか。