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【経理】「簿記の資格がある≠簿記を自由自在に使いこなせる」ということ。

こんにちは、きくちきよみと申します。
税理士です。

今日は、経理でステップアップをしようというときには「簿記を自由自在にに使えることが一番強い」ということについて書きます。


簿記を自由自在に使えることが、一番強い。

今まで勤務した会計事務所や税理士法人で、公認会計士・税理士・経理の業界の方に多くお会いしてきましたが、同様に簿記の資格を持っていても、それぞれの方の特性は様々です。

簿記の資格を取得すると、企業経理で切る仕訳は普通に切ることができるようになると思いますし、少し込み入った仕訳であっても、少し調べたり考えたりすれば、誰でも仕訳できるはずです。

ただ、それでもいろいろな理由で仕訳ミスは起きてしまい、自分でも気づけないために正しくない試算表になってしまっていることは少なくありません。

一つひとつの細かい対処法を覚えて、それをすべて実践するようにすると記帳上のミスは減っていきます。ただ、それだけでは過去に経験していないことはできないことになり、思わぬようなトラブルや不正があったときに、そのことに気づけないことになります。

そのような中、実務経験がほとんどないのに、常に適切な会計処理ができ、今までに経験したことがないような事態に直面しても、トラブルの原因を探り、自分で解決することができる方がいます

そのような方のお話を伺うと、共通の特性があります。

それは「すべての事象の原因を仕訳に求めている」ということです。

つまり、「簿記を自由自在につかいこなせる=経理業務では非常に強い」ということになります。

簿記は、間違えても完成してしまうパズル。

簿記では、借方と貸方の金額が必ず一致します。(会計ソフトがなかった時代には、手計算で貸借を一致させるのにも一苦労だったと聞いていますが、今は誰でも一致させられます。)

私の場合、仕訳を切るのはパズルを埋めるイメージですが、会計帳簿は最初から完成形が決まっているパズルではなく、ピースの積み重ねで完成するパズルです。そのため、一つひとつの仕訳が違っていても完成してしまいます

例えば、自分が中小企業の経理をやっていたとして、自分が残高を管理していない手元現金残高が帳簿上で毎月30万円ずつ増えていったとき、そこに不安を覚えられるか、ということだったりします。経理の自分が現金残高をチェックしていないので、その現金が本当に存在するかどうかわかりません。

 (借方) 現金 30万円  / (貸方) 普通預金 30万円

この現金ですが、本当に金庫に入っているでしょうか。本当に金庫にあれば帳簿は正しいのですが、現金残高をチェックしていない以上、何が正しいかはわかりません。意図的でなかったとしても、「売掛金」「商品」「仮払金」「器具備品」「交際費」「家賃」「特別損失」、、とあらゆる可能性が考えられます。過去の不正の例では、会社役員の個人の定期預金として5千万円が預け入れられていた、というようなこともあります。

自分が経理担当者である場合に、早い段階で「経理なので、自分で手元現金残高を毎月確認したい」と提案することにより、意図的な不正や単なるミスを防ぐことができるかもしれません。

ミスや不正を防ぐには、実在性の確認が重要。

自分自身、簿記を自由自在に使えるかと言われると、そこまでではない、というのが正直なところです。

それでも、いろいろな案件に関わる中で対処法や観点を知る中で、特に「実在性の確認をすれば、大きなミスや不正は防ぎやすい」と感じています。(残念ながら、これも万能ではありませんが)

会計監査の観点からは当然の手続きですが、例えば棚卸資産の実際の残高を実地で確認したり、債権確認状を取引先に送って債権の金額に誤りがないかを確認する、というのは、コストの問題で中小企業ではなかなか実施できないかもしれません。

そのような中であっても、経理として会計記帳をしていると、「決算書への金額影響が大きい」「ここが違っていると、会社として問題だ」という部分がわかると思いますので、もし、必要な部分の実在性を確認できていない部分があれば、確認する手続きを提案してみてはいかがでしょうか。