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音楽サブスクの再生単価はどう決まるのか?

音楽サブスク時代、アーティストへの還元率が低いと言われて久しい。
昨日も以下のはてな匿名ダイアリーが話題になっていた。

サブスク系音楽は1再生でいくら払われるのか?

Apple Music 1.2円
LINE MUSIC 1円
Google Play Music 0.7円
AWA 0.7円
Spotify 0.4円
Amazon PrimeMusic 0.2円

上記は記事の中の1例ではあるが、1再生あたり0.2~1.2円の売上ということで還元は非常に小さく感じる。ただ、海外では音楽サブスクが業界を著しく回復させており、そのビジネスが産業を活性化させていることもまた事実だ。

音楽業界が16.5%の二桁成長したアメリカは、いかに「音楽ストリーミングの国」として成功したか?

では、そもそもこの再生単価はどのように算定されるのか?
その方法を以下で紐解いていく。その結果なぜApple MusicとSpotifyでは再生単価が異なるのかについても理解が進むだろう。

■再生単価算出のロジック

音楽配信と著作権2 ─サブスクリプション・サービス─ ~サブスクリプション・サービスの印税計算方法は?

配信事業者が原盤の権利者に支払う原盤の使用料率は、会費収入の40 ~50%が相場である。これに、「各権利者のコンテンツの総再生回数/すべてのコンテンツの総再生回数」を乗じた金額が原盤使用料となる。リクエスト回数と再生回数は同義と考えてよい。この計算式でわかるように、サブスクリプション・サービスでは、ライセンスした音源の数ではなく、ユーザーがリクエストした回数をもとにして、原盤使用料が分配されるのである。したがって、ユーザーが頻繁に聴く音源をライセンスしている原盤権利者には、多くの原盤使用料が分配されることになる。

音楽サブスクから権利者に支払われるのは、厳密には著作権使用料と原盤使用料の2つだが、著作権使用料は一旦JASRACやNEXTONE等の著作権管理団体に行って、そこから分配がなされるので支払いにタイムラグが発生する。よって最初にリンクをあげた記事で記載されている再生単価は、原盤使用料に起因するものと推察される。ではその原盤使用料はどう算出されるか?

原盤使用料、つまり音源の使用に際して権利者に支払われるお金は2つの要素からなる。一つは、会費収入に使用料率を乗じた総分配原資であり、もう一つが権利者のコンテンツの総再生数を全コンテンツの総再生数で除した楽曲シェアである。シンプルにまとめると、音楽サブスクの会費収入のうち一定比率が権利者に分配されるプール(総分配原資)となり、そのプールを権利者同士が楽曲シェアでもって奪いあうゼロサムゲームが音楽サブスクの世界なのだ。

ではこの考え方を元に再生単価を求めてみよう。

上を参照すると、総分配原資が権利者に分配される総額なわけだから、この原資を全コンテンツの総再生数で割れば再生単価は求まるはずである。ところで、総分配原資は会員1人当たりの分配原資を会員数で乗じたものと言い換えられる、同様に総再生数も会員1人当たりの再生数を会員数で乗じたものと言い換えられる。ここで、分子にも分母にも会員数が出てくるのでこれを除くと、再生単価=会員1人当たりの分配原資/会員1人当たりの再生回数と導ける。

さて、ここで会員1人当たり分配原資は「①原盤使用料」の表から、会費に使用料率を乗じたものである。ここで一般的な音楽サブスクの月会費は980円であり、使用料率は40-50%なので仮に50%と置くと、480円が会員1人当たりの分配原資となる。これを1人当たりの再生回数で割ったものが再生単価となる。

ここに、再生単価=480/[1人当たり再生数]という反比例の式が完成した。

■なぜ、サービスによって再生単価が異なるのか?

上記の式からわかることは、1人当たりの再生回数が増えれば増えるほど、再生単価は下落する、ということである。具体的には1人当たりの再生回数が480回程度であれば1円。960回程度であれば0.5円に上がる、といった調子である。月に480曲聞くということは、大体1日あたり16曲で、アルバム1枚+αくらいだろうか。これが多いか少ないか、は人によって意見が分かれるところだろう。

サービスによって再生単価が異なる理由の1つは、この1人当たりの再生回数が異なるからということで説明ができる。Apple Musicの1.2円に対してAWAが0.7円なのは、AWAユーザーの方がApple Musicユーザーより多く楽曲を聞いているから、と考えることができる。Apple Musicはそのユーザー数がAWAの2倍以上いそうなので(参照:ICT総研レポート)会員が多い分、1人当たりの再生回数が薄まっているともとれる。

では、上記調査よりApple Musicより利用者数が多いことになっているAmazon Prime Musicと、利用者数の点で大幅には変わらないSpotifyの再生単価が低い理由は何故だろう?

これは分配原資自体の違いに拠る。まず、Amazon Prime MusicはAmazon Prime特典の1つとして提供されるサービスで、Prime自体の月額が480円である。月額が一般的なサブスクの2分の1であることに加え、Videoなど他の特典も提供されていることから、音楽サービスに供給される原資は更に小さくなることが予想される。原資が小さいため、再生単価が低くなるのだ。

Spotifyはもう少し複雑である。こちらは、月額980円の有料コースに加え、広告によって賄われる無料コースが存在しているのだ。この2つが分けて報告されていないため、広告費を原資とする無料コースの分配原資が低いことで有料も含めた全体の分配原資が一般的な有料サブスクのものよりも小さくなっていると予想される。(一般的に広告によって賄われるサブスクの再生単価は有償のものより低いとされている)

他のサービスについても、単純に1人当たりの再生回数のみが変動要素ではなく、実際はそれぞれのサービスが金額帯の異なる複数のプランを提供していることに伴い再生単価が異なっている、ともいえる。

斯様に、音楽サブスクの再生単価は、ユーザー1人当たりの再生回数と分配原資に大きさに依存していることがわかった。ゆえに今後再生単価がより高くなるためには、①そこまで音楽をたくさん聞かないライトなユーザーの流入 ②サービス自体の値上げ。が必要となるだろう。①と②は両立しづらいと思うので、であるなら、とにかく各音楽サブスクがもっと盛り上がって、ヘビーじゃない音楽ユーザーにもサービスが一般化することがより健康的な方法だろう。2019年に音楽サブスクが更に反映することを祈る。

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くしりん

4マス、インターネットで構成されるメディア産業、そして出版、音楽、映画、テレビなどのコンテンツ産業、それらのハイブリッドについての気になることを、中の人を渡り歩いた経験から分析、行く末を予測します。
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